インターフェースデザイナー、
ウェブデザイナー、映像ディレクター。
1970年生まれ。
96年東京大学工学部大学院修了。
橋梁設計会社、ウェブ開発会社を経て、
2004年に tha Itd. を設立。
ウェブサイトやCF映像の
アートディレクション、プログラミングなどを手がける。
主な作品に、世界三大広告賞の最優秀賞を受賞した
NECの環境サイト「ecotonoha」やユニクロ「UT」、
KDDI「iida」の広告など。
グラフィックデザイナー。
1955年生まれ。
81年東京藝術大学大学院修了。
電通を経て、84年に佐藤卓デザイン事務所を設立。
グラフィックデザインを中心に、
商品開発やプロダクトデザインなど幅広く活躍。
主な作品に、「ロッテ・ミントガムシリーズ」
「明治おいしい牛乳」など。
2013年2月から6月まで開催された
「デザインあ展」のディレクションなども行う。
糸井 | 今回、「ほぼ日手帳」のプロモーションビデオを つくることになって、 ぜひ中村勇吾さんに頼みたいと思って お声がけさせていただきました。 |
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中村 | ありがとうございます。 でも、僕は スケジュールは100%デジタルで管理していて、 手帳というものはまったくつかっていないんです。 |
佐藤 | 中村さんはデジタル人間だもんね。 |
中村 | そうなんです。 だから、はじめにお会いしたとき、 まずそれを言っておかないと‥‥と思って ドキドキしながら、言いました。 |
糸井 | 「手帳をつかわない僕ですが、いいですか」ってね。 僕はもう中村さんにやってもらおうと 決めてましたから、 ご本人が手帳をつかっているかどうかなんて まったく問題ではなかったんですよ。 |
中村 | そうそう、「へぇー」と言われて、 手帳をつかわないことについてはスルーでした。 |
糸井 | 中村さんは動きそのものを とらえられる人だと思ってましたからね。 犬が嫌いだからって、 犬の動きを撮影できないわけではない。 それに、僕が手帳というものはとてもいいものだ、 ということを中村さんに熱弁したところで、 きっと意味がありませんよね。 第一、僕自身、手帳がいいことばかりだとは 思っていません。 ものというのは、やっぱり いいところも悪いところも すべて含まれていますから。 |
佐藤 | あぁー、おもしろいですね。 |
糸井 | 実際、僕はお酒が飲めないけど、 お酒のコマーシャルのコピーを考えましたし。 で、嫌いなものって、 逆にやってみるとよかったりするんですよね。 苦手だと思って意識しているものって、 常によく見ているものだから。 |
佐藤 | うんうん、 それだけ引っ掛かっているものですもんね。 |
糸井 | もし、中村さんが 手帳にうるさいんですよって言う人だったら、 その手帳論の世界の色のプロモーションビデオに なっちゃってたかもしれない。 なので、最初に手帳をつかわないと聞いたとき、 スルーどころか、ある意味、 「やった!」という感じでしたね。 |
中村 | 手帳に対する思いは まっさらですから(笑)。 |
糸井 | それが、すごくありがたかった(笑)。 |
佐藤 | 糸井さんは、 なぜそこまで中村さんにお願いしたい、と? |
糸井 | ひと言でいえば、 中村さんがつくった映像を見てピンときたんです。 あ、この人にやってもらいたいって。 僕は文章を書く人間なので、 人が書いているものを読むと 苦しんで書いているなとか、 一回手がとまっちゃって もう行きがかり上こう表現しているだけだなとか、 なんとなくわかっちゃうわけですよ。 |
佐藤 | うんうん。 |
糸井 | 同じように、音楽とか絵とか映像でも、 ときどき、わかるものがあるんですね。 そういう意味で、僕は、ひとりの鑑賞者として 中村さんがつくりだすものが 「わかった」ように思えたんです。 |
佐藤 | 同じものを誰かがつくっても、 きっと、そう思えないんですよね。 |
糸井 | そうそうそうそう。 とくにデジタルの世界は、 それまでの軌跡が全部プログラムで 見えるわけですよね。 真似しようと思ったら、すぐにできちゃう。 |
中村 | そうですね。 |
糸井 | でも、同時に人には癖があるでしょう? どうしても、この人がつくると こうなっちゃうっていうものが。 |
中村 | 手癖みたいなものは、 プログラムにもありますね。 |
糸井 | やっぱり、本人じゃないと‥‥。 |
中村 | ええ、バランスが悪くなると思います。 |
糸井 | あと、中村さんのお仕事を追った ドキュメンタリーを見たことも大きいですね。 その番組のなかで、中村さんは できることとできないことの分け方が ものすごくうまかったんですよ。 「これは僕にはできないから、いかない」とか 「これはやればできることだから、 もうちょっと粘る」とか。 ‥‥卓さんも、そうだけどね。 |
佐藤 | え、そうですか(笑)。 |
糸井 | うん(笑)。 それが上手に分けられるということは、 安請け合いしないということだし、 いったん引き受けてくれたからには きちんと結果を出してくれるということでもある。 やっぱり、仕事仲間として一緒に組むときには、 自分ができることの寸法がわかっている人と やりたいと思いますね。 |
佐藤 | ああ、それは、わかるなぁー。 |
中村 | なんか、ハードルが、 どんどんあがっているような‥‥。 (※この鼎談は動画が完成する直前に行われました) |
一同 | (笑) (つづきます) |
※このコンテンツは、
『日経ビジネスアソシエ 2013年11月号』に掲載されたものと同じ鼎談を
「ほぼ日刊イトイ新聞」用に編集し直したものです。