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テレビ逆取材・
クリエイティブってなんだ?

第5回 遊びまくって死んだ奴に、興味がある


NHK教育テレビ、ETV2000で8月下旬放送の番組の
プロデューサーの長嶋甲兵さんとディレクターの根岸弓さん、
そこにdarlingも加えた3人による対談になっています。
何をどうやって番組にしていくの?
今回は、幻冬舎の見城徹さんについての話と、
その後は、クリエイティブの1つの例についてです。




 (井上陽水さんとの対談、セッティング中)


長嶋 「クリエイティブ」という
わかりにくい話だからこそ、
僕はショーアップしたいと思います。
見城さんが対談場所に清水南高校を指定してくれた、
そこは番組としては、何かの動機づけがなければ、
そこに行くことができないじゃない?
わざわざお二人をそこに連れていくんだから。

閉店後の本屋さんで
糸井さんと見城さんが対談をした後に静岡県の清水、
見城さんの母校に行って続きを話す。そこには、
お話としてのダイナミズムがなければいけないでしょ?
何でわざわざ行くの?自然さなんてないじゃない?
ということになってしまう。
だから、見城さんが清水南高校の図書室で
話をしたいとおっしゃったところから、
演出家は筋道をつけなきゃいけない。
僕はそういうところが面白いと思うんです。
根岸 「見城さんにとって、
 『そこに行くとひんしゅくというものに立ち返れる』
 と思えるような場所は、どこですか?」
と聞いてみたら、
「・・・う〜ん、それは清水だな」
と、おっしゃっていたんですよ。
それをふまえて清水南高校という
出身校を選んだと思うけど、どうなるか楽しみです。
糸井 そこまで彼が自分の何かを割いてくれたわけだから、
僕としてはそれを受けたいと思うわけです。
ありがたい提案ですよね。

たぶん彼はそこで作家として立ち上がったんでしょう。
見城さんって、根っこは作家をしたかった人だと思う。
だからこそ、サポートする立場にまわれたというのを、
抜かないでくれ、みたいな気持ちがあるんじゃないかな?
長嶋 今度、まず本屋で話すというのは現在なわけでしょう?
「その現在の寄って立つ場所に、
 もっと深層に降りていこうよ糸井さん」
と見城さんは言っているわけでしょう?
今やっていることにどうやって辿り着いたのかを、
俺も清水で話をするから、あなたも話ましょう、
そういう提案なんでしょう?
「来いよ糸井さん、俺もちょっと降りていきますから、
 あんたも、こっちに来ませんか?」というような。
だから、ぼくはそこに、すごい興味があります。

二人が降りていくかもしれない原形については、
すごく興味があります。
ほんとに僕、糸井さんって何なんだろうと思う。
例えばこうやって打ち合わせや取材に来ても、
ほんとに時間がないのに何時間も話をしてくれたり、
企画を練ったり・・・それは、単なるポジティブとは
ちょっと違っていると思う(笑)。
何か糸井さんの原型みたいなものが、
やっぱりあるんじゃないかと思うんですよ。
根岸 確かに、ポジティブというわけでは
ないですもんね、ぜんぜん(笑)。
糸井 デカダンかもね。
長嶋 狂気を感じるよね。
根岸 最近狂気という言葉が好きなんですけど。
心配しちゃうんですけど。
糸井 美しい話になんかならないだろうし、
しなくてもいいよ。その景色は、わかるよ。
幻冬舎社長という立場を持っている見城さんが
そこまで言ってくださるのはありがたいですよ。
根岸 最初に会いにいく時にはびくびくしていたんだけど、
すごくよくしてくださって・・・。
それはたぶん、クリエイティブという言葉の中に、
見城さんの何かを打つものがあったと思います。
糸井さんが「クリエイティブ」と言っていることに、
見城さんの心を何か動かしたんでしょう。
長嶋 あれだけメディアを選ぶ井上陽水さんという人も、
糸井さんがやるということで出てくれるわけだからね。
・・・見城さん、陽水さん、糸井さんに思うんだけど、
やっぱり、ビートルズって大きいですよね?
糸井 ありますよ、大きいです。
長嶋 ビートルズは世界文化大革命だったわけですけど、
あれ、ビートルズを上回るものって、
出てきていないわけですか?
糸井 作家性のままで、あれだけ
世界に拡がったものって、ないでしょう?
ビートルズって大きいですよ。
強大なる愉快犯でもあったわけだし。
ただの兄ちゃんたちが世界中に広まるというのは、
すごいことでしたよ。
うちの娘も、いま一生懸命に
ビートルズを聴いていますからね。
小さい頃からなじませていたから。
一人で何かをする時にかけるのは
今でもビートルズだというのは、
すごいことですよね。
長嶋 ビートルズは、クリエイティブですか。
糸井 あれこそそうですよ。
それこそイギリスの貿易収支を変えたわけですから。
長嶋 そうですね、階級社会も乗り越えて。
糸井 階級社会も乗り越えた夢でもあったし、
アートスクールのバンドだったというのも面白い。
つまり、美大系ですよね。
音楽を譜面から解放したし、
新しい物好きという価値もあったし。
ほんとは音楽じゃなくてもよかったんじゃないの?
というのが面白いんですよ。
僕はジョンレノンが
音楽をつくっているようには思えない。
いい音をさせてしまったら
「もうできた」って思ったんじゃない?

山師と冒険家って紙一重だと思う。
ランボーが詩を書いた後に
晩年には貿易商をやっていたというのと、
ビートルズの持っている山っ気って、
僕にはすごくおんなじものに見えるんです。

さっき、やりたいことがないと言ったけど、
はじめから何かを目指して、
やりたいことのために生きてきた人の
魅力のなさではなくって、
遊びまくって死んでいった奴に、
僕はすごく興味がありますね。
長嶋 死んでいるから神に近づきますよね。
糸井 特にジョン。
長嶋 ほんとに、死んだから絶対だというのも、
ありますよね。
糸井 死んじゃうのはずるいよなって、
若い頃には、よく言うんだけど。


★「はじめから何かを目指して、
  やりたいことのために
  生きてきた人の魅力のなさ」というのは、
 固定した目標のことなのだろうか?と、前回の
 「やりたいことは、ない」にひきつけて感じました。
 遊びと創造性に関してはdarling個人に
 後に訊ねているので、それをお待ちくださいね。

 
(つづく)

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2000-08-01-TUE

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