長嶋 |
「クリエイティブ」という
わかりにくい話だからこそ、
僕はショーアップしたいと思います。
見城さんが対談場所に清水南高校を指定してくれた、
そこは番組としては、何かの動機づけがなければ、
そこに行くことができないじゃない?
わざわざお二人をそこに連れていくんだから。
閉店後の本屋さんで
糸井さんと見城さんが対談をした後に静岡県の清水、
見城さんの母校に行って続きを話す。そこには、
お話としてのダイナミズムがなければいけないでしょ?
何でわざわざ行くの?自然さなんてないじゃない?
ということになってしまう。
だから、見城さんが清水南高校の図書室で
話をしたいとおっしゃったところから、
演出家は筋道をつけなきゃいけない。
僕はそういうところが面白いと思うんです。 |
根岸 |
「見城さんにとって、
『そこに行くとひんしゅくというものに立ち返れる』
と思えるような場所は、どこですか?」
と聞いてみたら、
「・・・う〜ん、それは清水だな」
と、おっしゃっていたんですよ。
それをふまえて清水南高校という
出身校を選んだと思うけど、どうなるか楽しみです。 |
糸井 |
そこまで彼が自分の何かを割いてくれたわけだから、
僕としてはそれを受けたいと思うわけです。
ありがたい提案ですよね。
たぶん彼はそこで作家として立ち上がったんでしょう。
見城さんって、根っこは作家をしたかった人だと思う。
だからこそ、サポートする立場にまわれたというのを、
抜かないでくれ、みたいな気持ちがあるんじゃないかな? |
長嶋 |
今度、まず本屋で話すというのは現在なわけでしょう?
「その現在の寄って立つ場所に、
もっと深層に降りていこうよ糸井さん」
と見城さんは言っているわけでしょう?
今やっていることにどうやって辿り着いたのかを、
俺も清水で話をするから、あなたも話ましょう、
そういう提案なんでしょう?
「来いよ糸井さん、俺もちょっと降りていきますから、
あんたも、こっちに来ませんか?」というような。
だから、ぼくはそこに、すごい興味があります。
二人が降りていくかもしれない原形については、
すごく興味があります。
ほんとに僕、糸井さんって何なんだろうと思う。
例えばこうやって打ち合わせや取材に来ても、
ほんとに時間がないのに何時間も話をしてくれたり、
企画を練ったり・・・それは、単なるポジティブとは
ちょっと違っていると思う(笑)。
何か糸井さんの原型みたいなものが、
やっぱりあるんじゃないかと思うんですよ。 |
根岸 |
確かに、ポジティブというわけでは
ないですもんね、ぜんぜん(笑)。 |
糸井 |
デカダンかもね。 |
長嶋 |
狂気を感じるよね。 |
根岸 |
最近狂気という言葉が好きなんですけど。
心配しちゃうんですけど。 |
糸井 |
美しい話になんかならないだろうし、
しなくてもいいよ。その景色は、わかるよ。
幻冬舎社長という立場を持っている見城さんが
そこまで言ってくださるのはありがたいですよ。 |
根岸 |
最初に会いにいく時にはびくびくしていたんだけど、
すごくよくしてくださって・・・。
それはたぶん、クリエイティブという言葉の中に、
見城さんの何かを打つものがあったと思います。
糸井さんが「クリエイティブ」と言っていることに、
見城さんの心を何か動かしたんでしょう。 |
長嶋 |
あれだけメディアを選ぶ井上陽水さんという人も、
糸井さんがやるということで出てくれるわけだからね。
・・・見城さん、陽水さん、糸井さんに思うんだけど、
やっぱり、ビートルズって大きいですよね? |
糸井 |
ありますよ、大きいです。 |
長嶋 |
ビートルズは世界文化大革命だったわけですけど、
あれ、ビートルズを上回るものって、
出てきていないわけですか? |
糸井 |
作家性のままで、あれだけ
世界に拡がったものって、ないでしょう?
ビートルズって大きいですよ。
強大なる愉快犯でもあったわけだし。
ただの兄ちゃんたちが世界中に広まるというのは、
すごいことでしたよ。
うちの娘も、いま一生懸命に
ビートルズを聴いていますからね。
小さい頃からなじませていたから。
一人で何かをする時にかけるのは
今でもビートルズだというのは、
すごいことですよね。 |
長嶋 |
ビートルズは、クリエイティブですか。 |
糸井 |
あれこそそうですよ。
それこそイギリスの貿易収支を変えたわけですから。 |
長嶋 |
そうですね、階級社会も乗り越えて。 |
糸井 |
階級社会も乗り越えた夢でもあったし、
アートスクールのバンドだったというのも面白い。
つまり、美大系ですよね。
音楽を譜面から解放したし、
新しい物好きという価値もあったし。
ほんとは音楽じゃなくてもよかったんじゃないの?
というのが面白いんですよ。
僕はジョンレノンが
音楽をつくっているようには思えない。
いい音をさせてしまったら
「もうできた」って思ったんじゃない?
山師と冒険家って紙一重だと思う。
ランボーが詩を書いた後に
晩年には貿易商をやっていたというのと、
ビートルズの持っている山っ気って、
僕にはすごくおんなじものに見えるんです。
さっき、やりたいことがないと言ったけど、
はじめから何かを目指して、
やりたいことのために生きてきた人の
魅力のなさではなくって、
遊びまくって死んでいった奴に、
僕はすごく興味がありますね。 |
長嶋 |
死んでいるから神に近づきますよね。 |
糸井 |
特にジョン。 |
長嶋 |
ほんとに、死んだから絶対だというのも、
ありますよね。 |
糸井 |
死んじゃうのはずるいよなって、
若い頃には、よく言うんだけど。 |