糸井
ぼくがここにいちばん通ってたころ、
湯村さんは30ちょっとぐらいですよね。
湯村
だから、糸井が25とかでしょ?
糸井
そう、24、25歳。
湯村
そんでさぁ、まぁ、オレ、最近、
いろんなことを忘れちゃってるんだけど、
昔のことは妙にくっきり憶えてるんだよ。
糸井
ああー、わかります。
湯村
やけに鮮明に憶えてるものがあるんだよね。
糸井に最初に会ったときのこととかさ。
いや、あのときは、驚いた。
糸井
え、なんで(笑)。
湯村
すごいかっこうしてたんだ。
ヨレヨレのジージャンでね、
この袖だけねぇ、布が違うの。
サテンだったか、シルクだったか、
袖だけ、うすいピンクの花柄なの。
そんで下はさぁ、パンタロンなの。
もう、裾が、こーんなに広い。
一同
(笑)
湯村
で、それに、かかとが15センチぐらいある
ポックリ型の、ブーツ。流行ってたのネ。
それを履いて、こう現れたわけ。
糸井
そんなだったっけ(笑)。
湯村
いや、オレもね、
そのときはヒッピーだったから
かなりふつうじゃないかっこうしてたよ。
でも、あれには負けた。
糸井
はははははは。
湯村
なんていうんだろう、
新しい自由人だ、みたいな感じでさぁ、
これは負けたなあと思ったら、
ちょっと着てみたくなって、
一回、その服借りて、
街を2、3日、歩き回ったんだ。
一同
(笑)
湯村
憶えてる? 憶えてないでしょ?
糸井
いや、湯村さん、その話は、たぶん、
いろんな話がモザイクになってるよ。
湯村
あ、そう(笑)。
まー、とにかく、すごかったんだよ、この人。
で、そこからどんどんどんどん、
ふたりの密度が濃くなってきてね
一時期は、ほとんど毎日会ってた。
糸井
うん。
湯村
まァ、それだけ暇だったっていうことだけど。
糸井
そうそうそう(笑)。
湯村
で、オレは5つくらい年上なんだけどね、
だいたい、呼び出されるんだ、オレが。
糸井
ははははは。
あの、酒屋の上のところでね。
湯村
「ねぇ、湯村さん」って呼び出されちゃって。
たいしたもんだったよ。
糸井
「K酒店」だね。
あ、電話番号がね、××××ー△△‥‥。
湯村
そうそうそう(笑)。
糸井
で、ここは○○○ー****ですよね。
湯村
そうそうそう、すごいね(笑)。
糸井
だって、ケイタイなんてないからさ、
番号、頭に入れるしかないから。
ここは区内だから、
その前の番号があるんだよな‥‥。
あ、「□□□□」か。
湯村
そう!
糸井
いま、湯村さんの顔見てたら
思い出した(笑)。
それまでは忘れてた。
湯村さんの顔に書いてあったよ。
□□□□の○○○の****だ。
湯村
おもしろいねぇ。
おもしろかったんだよ、糸井は。
糸井
ふふふふ。
ぼくのほうからも話すけど、
湯村さんはね、スターだったんだ。
なんていうか、怖がられてたというか、
「センスのかたまり」だった
湯村
そう?
糸井
湯村さんが「これはいいネ」って言ったら、
それは、いいっていうことだったんだよ。
そういうふうに、ジャッジする人。
センスの基準が、湯村さんだった。
湯村
そうかねぇ‥‥。
糸井
「これはどうですかね」って人が言うと、
「うん、いいネ」って言うんだ。
骨董屋の親父じゃないけどさ。
一同
(笑)
湯村
ははははは。
糸井
あとねぇ、いちばんの特長はねぇ、
女の人に好かれるんだよ。
一般の人から、アーティストから、
いろんな女の人に好かれちゃう。
湯村
あー(笑)。
糸井
ほんとに、ただ、好かれちゃう。
「テリーはステキなのよ」みたいな。
一同
(笑)
糸井
みーんなが
「テリーはステキだ」って言うの。
で、湯村さんも、悪い気はしないから。
湯村
でも、オレ、痔だからさ。
糸井
ふははははは!
一同
(笑)
湯村
好かれても、痔だから。
糸井
みんな当然知らないと思うけど、
湯村さんには「痔」っていう
個性もあってね(笑)。
湯村
うん(笑)。
糸井
その「痔」は、その後、
なにか仕事になったりしました?
湯村
うん。このあいだ、久々に、
プレーボーイが取材に来たよ。
糸井
痔のことで?
湯村
そうそう。
ひさびさの痔の取材だったから、
盛り上がっちゃってさ、たっぷり話したよ。
えらい時間費やして話したよ。
痔を語るのがこんなにたのしいのかと思った。
糸井
いま?
湯村
いまは治った。
糸井
けっきょく、治ったんだ(笑)。
湯村
治ったのネ。
2011-03-31-THU
(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN