糸井 |
せっかくですから、最後にもう一度、
『さよならペンギン』の話に戻しますけど。 |
湯村 |
ウン。 |
糸井 |
はっきりしたことはわからないんですけど、
どうやらこの絵本は、
当時、そんなに売れなかったはずなのに、
影響された人がかなり、いる。 |
湯村 |
ね(笑)。 |
糸井 |
謎ですよね。 |
湯村 |
謎だねぇ。 |
|
 |
糸井 |
今回の復刻のきっかけでもあるんだけど、
荒井良二さんが
「読んでぶっ飛んだ。
ものすごく影響を受けた」
って言ってくれてたり。 |
湯村 |
そうらしいねぇ。 |
糸井 |
そう。
さくらももこさんなんかも、
湯村さんとやった『ペンギンごはん』の
熱心な読者だったりね。 |
|
 |
湯村 |
あ、ほんとに。 |
糸井 |
なんか、そんなふうになるとは、
まったく思ってませんでしたけど、
あのころの湯村さんとの仕事は
いまごろになって感謝されるんですよ。 |
湯村 |
ねぇ(笑)。 |
糸井 |
『さよならペンギン』が復刻されるって
聞いたとき、ちょっとは、
うれしい気持ち、ありました? |
湯村 |
もちろん。 |
糸井 |
そう(笑)。
ああ、それを聞いて、
なんだか、こっちもうれしいなぁ。 |
|
 |
湯村 |
『ペンギンごはん』のほうは
けっこう目立った仕事だったというか、
何回かかたちを変えて出たけど、
『さよならペンギン』のほうは、
なにもなかったからね。 |
糸井 |
30年振りだって。 |
湯村 |
ねぇ。
(当時のプロフィール写真を見ながら)
なかなか、いい写真だね、これは(笑)。 |
糸井 |
恥ずかしい(笑)。 |
|
 |
湯村 |
なんていうか、自然な写真だ。 |
糸井 |
そう(笑)? |
湯村 |
せっかくだから、
最中(もなか)、食べてよ。 |
糸井 |
あ、いただきます。 |
湯村 |
ここのね、わりとね。 |
糸井 |
おいしいですよね。 |
湯村 |
虎屋のネ。 |
糸井 |
弥栄ですね。 |
湯村 |
今日は、ほんと、どうしようかと思っててさ。
いちおう、なんか、
息苦しくなっちゃうといけないから、
ビールとかワインなんかも用意してたんだけど、
お茶だけでこれだけしゃべれたから。 |
糸井 |
ていうか、湯村さんって、
じつはしゃべり好きですよね。 |
湯村 |
いやいやいや、寡黙、寡黙。 |
糸井 |
いやいや。 |
湯村 |
今日は思い切ってしゃべったからサ。
オレはもう、くたびれたよ。
1年分ぐらいしゃべっちゃった感じ。 |
糸井 |
またまた(笑)。 |
湯村 |
明日からどうしようかな? |
糸井 |
(まわりのスタッフに)
こういうことばっかり言ってるんだよ。 |
|
 |
一同 |
(笑) |
湯村 |
まぁ、ずいぶん心配したけど、
ビールとワインの勢いを借りずに
こんなにしゃべれてよかった。 |
糸井 |
湯村さんは飲んでもよかったのに。 |
湯村 |
糸井は昔から飲まなかったけどネ。 |
糸井 |
うん。 |
湯村 |
だから、オレと糸井の大きな違いは、
酒を飲まないってことと、
あと、黒人音楽。 |
糸井 |
(笑) |
湯村 |
もし、糸井が飲んだくれで、
黒人音楽が好きだったら、
たぶん、いまの糸井はいなくて、
もうちょっとオレのそばにいてさ。 |
|
 |
糸井 |
ここで、なんかやってたかも。 |
湯村 |
そうなったらそうなったで、
なんかあって、離れたかもしれない。
だから、やっぱり、
嫌いなものとか、違いって、あっていいよね。 |
糸井 |
そうですね。なんなんでしょうね。
なにかにペタッとくっつくってことは、
けっきょく、ぼくは、
どこへ行ってもなかったですね。
それは湯村さんとの付き合いのなかで、
自分で発見したことかもしれない。 |
湯村 |
なるほどね。 |
糸井 |
あの、ほんとに、あのころ、
ぼくは湯村さんに憧れて、尊敬してて、
いっしょに仕事をしていても、
なんだろう‥‥なんだろうなぁ‥‥。
若いときに、あんなふうにずっと会ってて、
30年会わなくなるっていうのも不思議ですね。
‥‥水くさいと思ってますかね? |
|
 |
湯村 |
‥‥オレ? |
糸井 |
「糸井は水くさいなぁ」って。 |
湯村 |
オレはそんなこと、まったくない。 |
糸井 |
(笑) |
湯村 |
もともとオレは人にあんまり会わないからさ。
人に会うと、ドキドキするんだよ、オレ。 |
糸井 |
それ、ほんとですよね(笑)。 |
湯村 |
ほんとだよ。疲れちゃうんだよ。
糸井はよくいろんな人に会って、
すごいなぁと思うけど、
オレは、やっぱりそうじゃないからね。
もういまはオレ、
猫と話してるのが一番しあわせで。 |
糸井 |
ははははは。 |
湯村 |
もう死ぬまでそれでいいやと思って。
今日は特別の日だから
こんなにしゃべったけどさ。 |
|
 |
糸井 |
今日はしゃべりまくりましたね。 |
湯村 |
もう3年分くらいしゃべったよ。 |
糸井 |
増えてる(笑)。 |
湯村 |
明日から、もうほとんどしゃべんないよ。 |
糸井 |
寡黙な老人として余生を。 |
湯村 |
そう(笑)。
和室に座って頭の影だけを障子に。 |
糸井 |
ははははは。
いやー、でも、やっと慣れてきたかな。 |
湯村 |
ウン。最後にネ。 |
糸井 |
湯村さんのエロの仕事、考えますよ。
宿題にさせてください。 |
湯村 |
うん。ありがとう。
いやー、しかし、ぐったりしちゃったよ。
これで、今日は、よく眠れる。 |
糸井 |
(笑) |
|
 |
|
2011-04-11-MON |