糸井
あいかわらず、
歳はとっても、モテてますか。
湯村
いやー、どうだろう。
接触がなくなっちゃったから、女性とさ。
糸井
テリーが言うと、妙な謙遜に聞こえる(笑)。
湯村
いや、ほんと、女性のいるところには
あんまり行かなくなっちゃった。
糸井
お好きではあるんですか。
湯村
どうかな‥‥。
もう、それもなるべく、そういうの、
消し去りたいっていうかさ。
糸井
絵にぶつけちゃう?
エロとして。
湯村
そうだねぇ(笑)。
糸井
だって、絵を描くことって、
やっぱり、気持ちがまったく離れたら
ダメになりますよね。
ずーっと、スケベなものを描きたい
っていう気持ちを維持してるだけでも
湯村さん以外に誰ができるんだ、
って言いたいですね。
湯村
うん。
糸井
本気だもんなぁ、それ。
なんていうか、湯村さん、
それ、どこかの段階で、わかったんですか。
自分のやるべきこと、みたいなものが。
湯村
そうだねぇ‥‥。
オレもあと2年で70だからね。
70になったときには、
まぁ、いちおう、自分の理想としてる老人に
取りあえずは到達していたいかなっていう。
糸井
その理想とする老人は、どういう?
湯村
だから、この感じだよ。
この感じで、もう少し、こう、きっちりと。
糸井
はーーー。かっこいいですね。
湯村
そう?
糸井
女のことも、いったん、消し去ってね。
というか、その頭を見てると、
湯村さん自身が男根になっちゃったような。
湯村
それもあるかもしれない。
糸井
ふふふふ。
「男根のことはオレは考えないよ。
なぜなら、オレが男根だから」
一同
(笑)
湯村
ウン。
70歳のオレが、和室にじっと座ってると、
障子やなんかに、男根の影が映るわけ。
糸井
男根影絵が(笑)。
ああー、そういう老人?
湯村
そうなりたいっていう感じネ。
だからいつも、頭を磨いて、
なるべくこう、いいシルエットで。
一同
(笑)
糸井
ちょっと、うねらせたりして(笑)。
「またおじいちゃん影絵やってるよ」みたいな。
「やだ、おじいちゃん、恥ずかしいよ」とか、
言われたりしてね。
湯村
そうそうそう。
そういう70歳。
糸井
いいなぁ(笑)。
うーん、70歳かぁ。
湯村
糸井はまだ60ちょっと過ぎ?
糸井
2です。62。
湯村
まだ62だもんね。
オレなんか、もう、
自分は70歳だと思ってるからさ。
糸井
「まだ62」っていう言い方は、
一般的にはすごくおかしいですよ(笑)。
湯村
そうだねぇ。
でも、オレはもう、70だからねぇ。
‥‥どう思う、70。
糸井
(笑)
湯村
ヤでしょ。
街、歩いててさ、「あ」って思ったんだけど、
70歳って、いないんだよ。
レコード屋なんか行ったって、
いないんだ。70歳は。
糸井
あああ、そうか。
湯村
ふつう、70歳はもう、街を歩いてないんだよ。
朝の早い時間とかに歩いてるかもしれないけど、
東京の人混みのなかに、あんまり70はいないよ。
俺もそうなっちゃってるんだなぁと思って。
糸井
あの、京都の田舎で、
夕方に犬の散歩してるときにさ、
オヤジと犬の組み合わせが
圧倒的に多いなって気づいたんですよ。
もう、散歩してる組み合わせが、
オヤジと犬、オヤジと犬、ってそればっかりなの。
で、気づいたんだよ。
「オレらもそうじゃん?」って。
湯村
あー(笑)。
糸井
向こうから見たら、こっちも
おんなじ景色だったんだなぁって気づいて。
湯村
でもね、オレぐらいの年齢になってくると、
だんだん、外に出なくなってくるんだよ。
歩けなくなっちゃってる人もいるし。
糸井
そうですか。
70歳の親父は、出かけない。
湯村
ウン。
座ってこう、シルエットを障子に写すだけ。
一同
(笑)
糸井
70歳ともなれば、
日がな一日、障子でシルエットクイズを。
湯村
そうそうそう(笑)。
2011-04-08-FRI
(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN