毎夜一話ずつ、ツイッターで更新された漫画、
『夜廻り猫』をご存知でしょうか。
糸井重里がこの漫画のファンになったことから、
ほぼ日とのご縁がうまれました。
漫画の作者は、深谷かほるさん。
この方の展覧会を、TOBICHI②で開催します。
漫画の単行本化を記念しての展覧会ですが、
メインに展示するのは深谷さんのもうひとつの魅力、
なんともいえずカラフルでかわいい「絵画」です。
『夜廻り猫』とは異なるタッチの
ネコ、ウサギ、リスたちがTOBICHIにあふれます。
漫画ではない『絵画』と、漫画『夜廻り猫』。
深谷かほるさんが描く、ふたつの世界を、
どうぞその目で感じにいらしてください。
主にモノクロで描かれる『夜廻り猫』で
はじめて深谷かほるさんを知った方は、
きっと驚かれることでしょう。
深谷さんの作品には、こうしたカラフルな絵画もあります。
ほとんどは漫画のお仕事のあいまに、
自分のために描かれたものだとか。
上のリスのようなキャンバスに描かれた作品だけでなく、
立体物に描かれたものもあります。
こちら、木製のトレーに猫が。
同じく木製のティッシュペーパーボックスには、リスが。
こうした、深谷さんが自分のために描いた
生活の中にある作品たちを、
このたびTOBICHIに初展示いたします。
今回これら原画の販売は行いませんが、
ぜひ、その目でご覧になってください。
数十点の作品を展示する予定です。
深谷さんのツイッターに毎夜一夜ずつ連載されていた
漫画『夜廻り猫』が、めでたく単行本化されました。
発売日は、2016年6月30日。
そう、この催しは、
『夜廻り猫』の発売日に合わせてスタートします。
まだ『夜廻り猫』を読んだことがない方のために、
ここに一話だけ、掲載しましょう。
今宵も、涙の匂いのするところにあらわれる。
猫の名前は、遠藤平蔵‥‥。
この『夜廻り猫』に関わる、様々な作品を展示。
圧巻の絵画もご覧いただけます。
また、
今回の催しのために、
深谷さんにひとつ無理なお願いをしました。
その無理な願いを深谷さんは、
こころよく引き受けてくださって‥‥
『夜廻り猫』の描きおろしを一話、
原画でTOBICHIに展示。
という企画が実現いたします!
新刊本にも収録されていない一話を、
TOBICHIで読むことができるのです。
平蔵さんに励まされてきたあなた、
ぜひ、会場まで読みにいらしてください。
最初に、この頭の上にかんづめを乗せた
猫さんに会ったのは、寒い季節だったような気がする。
それが現実には夏の真っ盛りだったとしても、
ぼくの記憶のなかでは冬だということになっていると思う。
たしか、山本さほさんのツイートで
紹介されていたのだった。
深谷かほるさんの『夜廻り猫』を最初に見たときの
切ないようなうれしさは、
ぼくはあんまりマンガで感じた覚えがなかった。
むしろ、短調のメロディを奏でる古いヴァイオリンや、
練達の演歌歌手が腹の底から絞り出す歌声のように
耳に届いてくる感覚だった。
その切なさは慰めだった。
その無闇なやさしさは励ましだった。
どこにもないような街に、あり得ないような夜が来て、
あったらいいのになぁという出来事が起こる。
そうなんだ。『夜廻り猫』は、
夜中に聞こえてくる歌だったんだ。
主人公の猫が、仔猫が、老人が、若い男女が、
そして艱難辛苦を乗り越え生きてきた
どうぶつたちのすべてが、
控えめにじぶんのパートを歌ううちに、
やがて大合唱になっていく。
涙の匂いを呼吸して生きているいきものたちが、
こんなにも強いということを、
その歌を聴きながら、ぼくたちは感じている。
可憐な少女に流れるものは。
糸井重里より
深谷かほるさんのマンガ以外の作品には、
見ているじぶんが異国で迷子になったような
酩酊感がある。
互いに挑み合っているような色彩の鮮やかさや、
描かれた世界の不思議にエロティックな印象と、
生真面目にさえ見えてくる線の力強さが、
混じり合って問いかけてくるのだ。
静謐な世界でも、倒れるほど強い酒が売られている。
酔いましょう、愉しみましょう。