斉吉さんと、八木澤さんと アンカーコーヒーさんと、糸井重里で 六花亭を訪問しました。
 
第7回 気仙沼へおいでよ。
小田 斉吉さんのお話を聞いていると
「家の料理」が
いかに大切かって、わかりますね。
和枝 そうですか。
小田 だって、お祖母さまがつくった料理が
和枝さんに引き継がれて
そのなかでも洗練された部分が
「金のさんま」でしょう。
糸井 ある日、突然
「金のさんま」ができたわけじゃなく。
小田 人のやらないことをやるんじゃなくて、
みんなできるんだけど
「あそこのは、ちょっとちがうよね」
と言われるクオリティなんだね。
純夫 うちも「金のさんま」については
継ぎ足し継ぎ足しでやってきた「返しだれ」に
こだわってるんですが、
これが「さんまの缶詰」になると
どこも、ある程度のレベルがあるんです。
小田 つまり、ライバルが多いんだ。
和枝 うちは、まだ缶詰はつくってはいませんが
常温で流通できるような商品を
開発していきたいと思っていますので‥‥。
純夫 だから今日、いちばんはじめに
小田社長が
「家業でなく事業をやらなければ」と
言ってくださったこと、すごく納得しました。
和枝 本当に。
純夫 気仙沼というところは
北海道と同じで「産地」なんですよね。

だから、いい魚が水揚げされたら
氷詰めにして、ぜんぶ築地に出荷してしまう。

ようするに、鮮度のいいうちに出すのが
「いちばんいいこと」で
どうしても「加工は二の次」という感覚で
これまでやってきたんです。
小田 やはり「生」に対する絶対的な価値観って
ありますからね。

「生」こそが「いいものだ」という。
和枝 そうなんです。
小田 でも、うまく「鮮度勝負」から「熟成勝負」に
転換していければ
徐々に「値段」が付けられるようになる。
和枝 「私たち、こういう商品をつくっています」
と外に向かって言うことが、
丸っきり、できてなかったと思うんです。

この震災が起きるまでは。
小田 そうですか。
和枝 新鮮な原料を出荷することだけに、注目して。

水産加工品でも
自分たちで値段を付けられない「業務用」が、
商品の大半を占めていました。

震災後、物理的にも場所が狭くなったので、
これを機に、
個人向けの商品に転換していきたいんです。
小田 たぶん、そういう時代になってきてますよね。
和枝 はい、そう思います。

水産加工の世界で、「本物」を
お客さまに直接、お渡しできるような魚屋、
つまり、私たち、
「六花亭さんみたいな魚屋」に
なりたいんです。
小田 いやいやいや、そう言ってくださるのは
うれしいですけれども‥‥。

「直接、お客さんへ」
「自分で値段を付けられる」

このふたつは
ものすごく大事なキーワードですものね。
純夫 そうなんでしょうね。
小田 あとは「売り上げをつくること」よりも
「喜んでもらえること」。

「いやあ、斉吉さんありがとう!」って、
そう言ってもらえることが、
本当に
大切にしなきゃならないことでしょう?
和枝 はい、本当にそう思います。

私たち、震災後に
みなさんのお力添えのおかげで
心から、そう思えるような経験を山ほど
させていただいたんです。
小田 そうでしたか。
和枝 全国のかたに、
いろいろよくしていただくばかりでしたけど
まずは
「生きてるだけで、いいんだ!」
ということを
全国のみなさんと共有したいんです。

だから、気仙沼においでいただきたいし、
現状を見てもらいたいんです。

お返しになるかわからないけど、
そうすることが
私たちの役割なんじゃないかと思うほどです。
小田 気仙沼の復興の糸口になるようなことって、
お金だとか、大きな工事だとか、
そういうことじゃあないと思うんです。

糸井さんみたいな「導火線」によって
「気仙沼へ行こうよ」だったり
「行けなくても
 おいしいさんまを食べようよ」というね、
そういう「気持ち」を
起こすことなんじゃないかなと思いますね。
小野寺 そういえば「気仙沼においでよ」って歌が
あるんですけど、ごぞんじですか?
小田 いえ、知らないです。
河野 糸井さんがつくったんです。
小田 え、そうなんですか。
糸井 いや、曲をつくったのは矢野顕子さんで
作詞を、僕とふたりでやりました。
小田 矢野顕子さんには
去年、六花亭のコマーシャルソングを
つくってもらったんですよ。
糸井 へぇ、そうなんですか。
小田 「雪やこんこ」というお菓子が
あるんですけど
ニューヨークでレコーディングしてくださって
「雪やこんこ! 六花亭」
というやつなんですが‥‥そちらはタダで?
糸井 ええ、はい(笑)。
小野寺 すごくいい曲で、耳から離れないんですよ。
小田 聴きたいなぁ。
糸井 ぼくの iPhoneのなかに‥‥これです。

(「気仙沼においでよ」が流れる)
小田 ‥‥へぇ、いいですね。
糸井 行きたくなるでしょ、気仙沼。
小田 これは、いいです。
みんなに聴いてもらいたい曲だと思う。
糸井 ほぼ日に来れば、
いつでも、自由に聞くことができます。
小田 でも「気仙沼においでよ」って‥‥。

ちょうどいいフィーリングですね。
変に力んでないし、妙な深刻さがないし。
糸井 ありがとうございます。
小田 いや‥‥いい曲だ。
もういちど、聴かせてもらえせんか?
糸井 どうぞどうぞ(笑)。
小田 ありがとうございます。
でも、本当にメロディーがすばらしいね。
糸井 小田社長、実はですね‥‥
この歌には「歌詞」があるんですよ!(笑)
小田 ああ、じゃあ今度はメロディーよりも
歌詞中心に聴いてみます(笑)。
糸井 そういう聴き方もありますね。

(「気仙沼においでよ」が、ふたたび流れ出す)
小田 ‥‥ああ、いいなぁ。いいね。
糸井 気仙沼に、ぜひ。
小田 はい。必ず、寄らせてもらいますから。

後日、気仙沼を訪れた小田豊社長。
純夫さん・和枝さんと一緒に「気仙沼のほぼ日」にて。

「気仙沼においでよ」
 
<おわります>
2012-10-11-THU
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