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糸井 |
うちの会社で、こんど
年を取った人を募集しようかな、と
思ってるんですよ。
一般的には、お年寄りは、
仕事はあまりないんです。
60歳定年の会社だとすると、
ぼくにも仕事はありません。
自分がお払い箱になってるような
社会なんだなぁ、と気づいたんです。
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徳光 |
そりゃ、もったいないですよね。
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糸井 |
若い人と年を取った人が
もっとごっちゃになったほうがいいかな、
と思っています。
過去の、ヒエラルキーの上下関係のなかで
仕事してたときには、
年上が上に立っちゃったんで
感じが悪かったですけど、
いまはそうじゃない、平面ですから。
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徳光 |
60過ぎた人たちも、
「自分たちは平面の中にいる」という覚悟は
できてると思うんですよ。
抵抗もないと思うんですよね。
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糸井 |
ですよねぇ。
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徳光 |
年取った人たちの話や発想に、
「温故知新」というのはありますけども、
何かを起こすという意味で、それが
「温故起新」になる可能性は
十分にありうると思います。
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糸井 |
あぁ、勇気が出ます。
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徳光 |
ぼくね、実は
東京の海城高校という学校を出まして、
なぜか海城高校のOB会の会長を
やってるんですよ。
そのせいで、昔の友達に
いろいろ会うんですけれども、
仕事の経験話はですね、
あんまり参考にならないです。
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糸井 |
はぁ、なるほど。
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徳光 |
しかし、連中は
サラリーマンとして
仕事仕事で追われてやってきた一方で、
なんとか時間を見つけて
趣味を持っているわけですよ。
その、わずかな時間に見出した趣味に打ち込んだ、
この集中した時間の中に、
彼らはものすごく活きています。
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糸井 |
うん、うん。
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徳光 |
趣味の分野で話を聞きますと、
本当におもしろいし、いきいきとしていて、
まさに現役だという感じがします。
だから、もしも面接などをなさるときは
仕事の経験値を伺いましても、
そんなに役には立たないと思います。
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糸井 |
なるほど。
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徳光 |
一方、彼らが見出してきた趣味の中には、
原石があるという感じがします。
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糸井 |
‥‥そうか、趣味って
武勇伝にはならないですからね。
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徳光 |
はい、ならないですね。
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糸井 |
だから、いいんですね。
仕事だと、どんなに失敗した話でも、どこか
「俺って、これをやってきた男だよ」
みたいになっちゃいますから。
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徳光 |
自慢話になりますもんね。
その、趣味の部分を掘り起こしたり、
引き出したりすることが
まだまだできるんじゃないかなということを、
僭越ながら、69歳の同級生に感ずるんですよ。
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糸井 |
やっぱりお元気な人、多いでしょう?
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徳光 |
いるんですよ、やっぱり。
ある人はよく、尾瀬の写真を
撮りに行ったりしています。
「そんなこと、いつ頃からはじめたの?」
と聞けば、サラリーマンになってすぐだそうで、
40歳のときに行き着いたのが
尾瀬だったらしいです。
そこからずっと
尾瀬を撮りつづけてると言うんですよ。
彼の仕事とは全然関係ありません。
だけどそれが、すばらしい写真なんです。
ぼくなんか、写真に対しましての関心は
さほどないんでありますけども、
そいつが撮った写真の絵葉書を見てますと、
「是非一度、尾瀬というところに行ってみたいな」
と思わせるほどです。
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糸井 |
いいですね。
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徳光 |
そいつは仕事ができたかどうか
わかりませんけども、
少なくとも趣味の中では、
彼は未だに
「追求してるな」
「取り組んでるな」
という感じがします。
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糸井 |
つまり、「打席」にね‥‥。
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徳光 |
そういうことです。
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糸井 |
ぼくがお年寄りを採用しようとしているのは、
いままでのやり方を変える、ということですから、
「俺がうまくいった話」なんていうのは、
そのまま語られても困ります。
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徳光 |
そのとおりだと思います。
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糸井 |
ぼくが、原宿をテーマにしたテレビに
呼ばれてた若い頃に
「ぼくは新しいものを
追っかけてるつもりはないんです」
と言いたかった、という話は、
種明かししたら簡単なことです。
だけど、こんなことをわかってもらうのに、
やっぱり何十年もかかりました。
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徳光 |
そうですね。
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糸井 |
それが、いまだとみんなわかるんですよ。
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徳光 |
そうか。いまは、すぐわかるわけですね?
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糸井 |
はい。つまり、
ぼくのことも
「あいつはおもしろいなと思ったものを
ただ掘っただけだな」
ってわかるんです。
だから、可能性は誰にでもあるわけです。
さきほど徳光さんがおっしゃった、
経験から掘れるものというものがあるんですよ。
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徳光 |
年取った人が掘るものは
おもしろいですね。
自分の手作業で掘るものはね。
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糸井 |
そうですね。
「夢中になってる人の話はおもしろい」
というのと同じです。
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徳光 |
おっしゃるとおりでね、
やっぱり熱い話は、おもしろいですよね。
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糸井 |
おもしろいですよね。
ついついしゃべっちゃうね。
やぁ、こんな時間だ。
長々とお引止めしてしまいまして
申しわけありません。
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徳光 |
こちらこそどうも。
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糸井 |
約束の時間を大きく回ってしまいましたね。
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徳光 |
私のほうこそ、
みなさんをお引止めしちゃって。
電車の遠距離通勤、帰りが大変でしょ?
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一同 |
(笑)
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糸井 |
これで、だって、
巨人の話もしてないんですから。
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徳光 |
そうですよね。
巨人の話をすると、
今日は伺ったんで
ありますけれども。
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糸井 |
いや、そんなことは(笑)。
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徳光 |
ありませんね。
どうもありがとうございました。
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糸井 |
ありがとうございました。
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一同 |
(拍手)
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徳光 |
最後に、
皆さんの健康とお幸せを祈って、
ズームイン!!
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一同 |
(笑・拍手)
(おしまい) |