ほぼ日で東京を特集するにあたって、
やはりどうしても
この方に話を訊かずには
いられませんでした。
京都出身のみうらじゅんさんは、
1977年に19歳で東京へやってきて、
今年で上京40周年。
みうらさんにとって、
東京はどんな場所ですか?
第6回
「サインプリーズ!」
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- ──
-
いま、東京の観光が盛りあがっていて、
外国からたくさんの方がおみえになっています。
みうらさんがもし観光案内するとしたら、
どんな場所にお連れになりますか?
- みうら
-
考えてみると、
京都でにおい袋が爆買いされたことなんて、
ないですよね?
地方でこけしが爆買いされたってのも
聞かないですよね?
でも、東京はあらゆるところで
爆買いが発生しています。
- ──
- わははは、そうですね。
- みうら
-
ブルース・リー的に言えば
「考えるな、買うんだ!」
ということが、
東京の特徴としてあるんだと思いますので、
ぼくが案内するとしたら、やっぱり
「買う場所」だと思います。
つまり、東京全体が、ものすごく大きい
イオンなんですね。
- ──
- イオン!
- みうら
-
ぼくは京都で生まれ育ったので、
「新京極」が世界一大きな商店街だと
思い込んでいました。
しかし、上京してわかったのは、
武蔵野市である吉祥寺でも、
新京極レベルの商店街を持っている、
という事実でした。
上京してまもなく、
京都の友だちが東京に遊びにやってきたんですが、
やはり最大の目的は
買い物であって、ぼくじゃないんです。
おしゃれな店や洋品店が載ってる
シティーマップを手に、しかたなく
買い物につきあわされたんですが、
「みうら、まふってとこがすごいらしいんだ」
「まふ?」
「じゃ、とりあえず、まふ行こう」
ってことになって、
道行く人に「まふってどこでしょ?」と
たずねて歩きました。
結局それは
「あざぶ(麻布)と読むんだよ」
と教えられましたけどね。
- ──
- わはははは。
- みうら
-
あのころ、東京の地名が書かれた標識には
ふりがながふられていませんでした。
いまでこそ国際都市ですから、
ふりがなも外国語表記もあるでしょう。
そこも当時、
東京が冷たいと言われる一因だったと
思います。
- ──
- 外国語表記も備えるようになった東京では、
あと3年でオリンピックが開催されます。
- みうら
- ええ。
- ──
-
東京に住む私たちにとって、
どういうことをすれば、来る人たちへの
おもてなしになるでしょう。
- みうら
- そうですね、ここは
大阪万博が開催されたときのことを
思い出してみましょう。
1970年、ぼくは小学6年生でした。
ぼくたちが大阪万博で何をやったか?
それは、会場にいる外国人に
サインを求めることでした。
それまで京都にいたので
外国の人を見たことはありました。
けれども、あんなにたくさんの国の人を
いっぺんに見たのははじめてでした。
だからとてもうれしくて、
万博会場で友だちといっしょになって
「サインプリーズ!!」と言って、
外国の人にサインをもらいました。
ぼくらが持ってったサイン帳に
「ロバート」とか、
あと、読み方もわからないサインを
してくれるわけです。
すると、なんだかわからないけどぼくらは
「やった~」とかいって、
とても高揚するのです。
サインを求められたほうだって、
まんざらでもないようすでしたね。
ええ、みなさん当然、
一般の人だと思いますよ。
だけど、断られたことは一度もなかったです。
- ──
- わははは。
- みうら
-
2020年の東京オリンピックでも、
外国からたくさんの方々が来られるでしょう。
そんなとき我々は、
サインを求めるべきだと思うんです。
サインを求めさえすれば
「日本人は、みんな私たちのファンなんだ」と
先方も思うでしょ。
そのためにも、ほぼ日手帳には
サインの書けるページをあけておいてください。
満杯になるくらい集めるんですよ。
これは国をあげてのサインシステムです。
お年寄りから子どもまで、手帳を持って
外国の人を見つけたらサインを求めに行きましょう。
「うわ! なんて
ファンの多い国なんだ」
と、外国のみなさんは思ってくれることでしょう。
- ──
- なるほど、もう全員が。
- みうら
-
ぼくら、そういうとこを、
ちょっと忘れてるんじゃないのかな?
ちょっと奢ってるんじゃないのかな?
見たことない人にはとりあえずサインを求める、
それは、ぼくたち日本人の
戦後のやりくちだったではありませんか。
万博でもらったサインは、
ぼくの一生の宝物だと思ってましたが、
いまはどこにいっちゃったのか、ありませんけど。
~それでは、本日の動画をごらんください。~
本日の動画ポイント
- 観光はショッピングであるということを
忘れないようにしましょう。 - 麻布はたしかに読みづらい。
- 「サインプリーズ!」をいまから練習しましょう。
- 私はあなたが好き、が最高のもてなしです。
(第7回につづきます)2017-06-02-FRI