アテネオリンピックから
清く正しい、にわかファンとして
オリンピックを記事にしているほぼ日が、
東京2020組織委員会にときどきお邪魔して、
各部門の仕事内容をファン目線でレポートする連載。
第二回は〈エネルギー〉部門です。
どんな準備を進めているのか、
想像が難しいエネルギー部門。
その実態は「ぜったいに消えてはいけない」という
責任と緊張感のあるお仕事でした。
大会を支える基盤となる人々、
エネルギー担当の山口さん、三浦さんに
お話をうかがいました。

1信頼度の高い
電気をつくる。

乗組員A
本日はよろしくおねがいします。
山口・三浦
よろしくおねがいします。
乗組員A
大会組織委員会の方に取材をするのは
二度目になるのですが、
はじめて大会組織委員会の組織図をみたときに
「エネルギー担当」という項目をみつけまして、
「エネルギー担当ってなにをされるんだろう?」と
思っていました。
乗組員B
2年後の大会に向けてどんな準備をされているのか、
パッとは想像つかなかったです。
でも「エネルギー」ですから、
非常に大事なことを担っているのは、
間違いないだろうと想像していました。
山口
注目してくださって、ありがとうございます。
あの、私どもが担当しているのは、
具体的には電気とガスです。

過去大会も開催国によって
エネルギーのカテゴリーがバラバラでして、
リオでは電気のみ、
ロンドンでは水道も担当していたなど、
国によってインフラの発達状況が違いますので、
担当するエネルギーの分野も異なるんですね。
乗組員A
そうなんですか。
山口
東京2020大会の場合は
使用されるエネルギーのメインが電気とガスのため、
そのふたつを担当します。
中でも使用量が大きいのは電気なので、
仕事のほぼ9割以上が電気の仕事ですね。
乗組員B
電気の仕事‥‥
山口
って言ってもよくわからないですね(笑)。
乗組員B
なかなか想像がつかないですね(笑)。
山口
電気の仕事というのは、
大まかに言うと2つのカテゴリーにわかれます。
僕らが勝手に名づけている名称ですが、
ひとつ目が「会場までの電気」。
たとえばオリンピックスタジアムで
電気を使うためには、
電力会社から電気を送ってもらわなければいけません。
この、外から会場まで電気を引っ張ってくることが、
会場までの電気です。

ふたつ目が「会場の中の電気」です。
電力会社から送ってもらった電気を、
スタジアムなど会場の隅々まで配線することです。
乗組員A
会場までの電気と、
会場の中の電気。
山口
私たちの電気の仕事のほとんどは、
この2つにカテゴライズされます。

こう話すと、とても単純に聞こえるのですが、
オリンピック・パラリンピック大会というのは
どんな電気でもいいわけではなくて、
使用される電気のひとつひとつが
信頼できる電気かどうかを、
きちんと把握しなければいけないんですね。
乗組員A
電気を信頼できるかどうか、ですか。
乗組員B
そんなこと、
普段考えたこともなかったです。
山口
日常生活では気にしないと思います。
ただ、私たちの場合は、
信頼度が高い電気かどうかチェックするために
収容場所やルートなど、
ひとつひとつを確認するんです。

まず、送られてくる電気が
収容されている変電所を確認します。
たとえば、収容されている変電所が
10年前に建設された施設なのか、
50年前の施設なのかで
信頼度が大きく変わるんですね。
信頼度の高さから言いますと、
新しいほうがいいんです。
乗組員A
はい。
山口
また、ルートも信頼度に関わります。
どこの変電所から、
どういう経路を通って送られてくるのか。
実は電気のルートというのは
さまざまな方法で道路の地下に埋まっていまして、
パイプの場合もあれば
トンネルのようなものの場合もあります。
方法によって信頼度が左右されるんですね。

ですので、電力会社さんにご協力いただいて、
ひとつひとつの変電所の設備、ルート、
さらに接面、経年度合いなど細かいところまで
念入りに確認させていただいています。
そうして信頼度の高い電気を集めているんですね。
三浦
場合によっては、
なるべく新しいところから送ってもらえるように
協議することもあります。
乗組員A
なるほど。
それは大変そうですね。
山口
そして、さらにまだ、
確認しなければならないことがあるんです。
乗組員A
なんでしょう。
山口
普通の建物というのは、
送電ルートはひとつです。
ですがオリンピック・パラリンピックの場合は、
万が一、ひとつの電気が切れても大丈夫なように、
各会場にふたつのルートを用意するんですね。
三浦
停電など万が一のときに備えるために、
公共的な施設や放送局さんなどが
とられている方法です。
山口
一般的には同じ変電所からふたつのルートで
電気を送ってもらうのですが、
今回は変電所も別にします。
そうすると、今度は変電所が電気を仕入れている
大元はどうなっているのか調べて‥‥と。
IOCのエネルギー担当とも
何度も協議をかさねまして、
注意深くチェックをしております。

それくらい大会の電気というのは
非常に、非常に、
信頼度が高いものをつくっているんです。
乗組員A
はあー、知らなかったです。
それは、東京大会だけでなく
過去大会もですか?
山口
そうですね。
過去大会も非常に厳しい基準のもと、
電気やガス、水などのエネルギーを
用意していると聞きました。

ただ、私たちは幸運にも、
都市部の会場がほとんどですので
電力系統が成熟していて、
ある程度信頼度が高いものがすでにある状況です。
ですので、IOCの方からは
「過去大会に比べてスムーズだ」と言われました。
乗組員A
IOCのチェックは厳しいですか?
山口
厳しいですね。
電気、といえども非常に特殊な電気なので、
過去大会のアドバイスもされている
エネルギー関係に詳しい専門家が担当に入られて、
これまでの経験を基にアドバイスしてくださいます。
乗組員A
安全性ですとか建築的な側面で
できることできないことを判断して、
信頼度の高い電気をつくらなければいけないですね。
山口
そうなんです。
ここまでが「会場までの電気」についてです。
乗組員A
そうか、まだふたつ目があるのか(笑)。

(つづきます。)
2018-11-12-MON