21日あたり
45,000食という重圧。
- 乗組員A
- 料理を提供するシェフの方は、
直接雇うわけではなく、
業者の方が入るということですよね。
- 山根
- そうです。
厨房一式を事業者さんに委託しておりますので、
スタッフも彼らが集める形になります。
- 乗組員A
- メニューひとつを決めるのにも、
さまざまな承認を得た上で決まるのでしょうか。
- 山根
- メニューはIOCの承認をいただく形になります。
こちらで案を出して承認をいただく段階で、
いろいろなご意見をいただくわけです。
そういったなかで各国の要望も反映されていきます。
- 乗組員A
- どんな要望がありましたか?
- 山根
- メインダイニングって、朝昼晩合わせて
一日最大45,000食を提供するんですよ。
たくさんの人数が一時に集中するので、
行列をさせないで提供できるかどうかが、
一番のポイントになりそうなんです。
すぐに提供できるメニューを考えて作りなさい、
というアドバイスはいただいていますね。

- 乗組員A
- 行列ができるとは思っていませんでした。
ということは、競技のライバル同士が
同じ列に並ぶこともあるわけですよね。
- 山根
- 場合によっては、あるかもしれません。
- 乗組員B
- 同じ競技なら当然、
日程が同じですもんね。
- 高梨
- ありえますね。
- 乗組員B
- 現場で選手からのリクエストには
応じてもらえるのでしょうか。
たとえば「私は半熟の玉子がいいわ」みたいな。
- 山根
- 行列のことを考えると、なかなか難しい(笑)。
そのぐらいなら、余裕があれば
受けるかもしれませんけど。
- 乗組員B
- ダイニングで提供される料理は
カフェテリアみたいな感じなんですか?
- 高梨
- ホットミールはサーブをします。
冷たいサラダはアイランドに出るので、
それは選手が自分で取ることになります。
- 乗組員A
- あ、わりと普通の飲食店と変わらない。
- 山根
- カフェテリアとか、社員食堂とか、
そういうイメージを持っていただくと
実際に近いと思います。
- 乗組員B
- ただし、そこにいるのがアスリートだらけ。
- 山根
- そうです、そうです。
いかに行列をつくらないで、
かつ、衛生面を担保しつつ
効率的に提供するかは課題です。
- 乗組員B
- 時期的にも衛生面も気になりますよね。
栄養や安全といった面でのお話は伺いましたが、
「おいしい」という観点では
どんなことを考えているのでしょうか。
- 山根
- 味については、課題としているところです。
いろんな国や地域からいらっしゃるので、
好みの問題って難しいんですよね。
ですから、完璧に味付けをしたものよりも、
ひとつ手前のところまで作っておいて、
あとは自分で味を調整できる
調味料をたくさん用意する予定です。
- 高梨
- 現在の計画では、
調味料は50種類以上になります。
- 山根
- 醤油、ソースはもちろん、
ナンプラーだとかまで用意しておいて、
ご自身の好みで味をつけてもらいます。
過去の大会でも評判のよかった形式ですね。
- 乗組員A
- 50種類以上の調味料ですか。
ぼくらが全然知らないような
調味料もあるのでしょうか。
- 高梨
- 私たちが知らなくても
海外の方から見たら
ポピュラーな調味料を用意しています。
50、60種類ぐらいになると、
海外からのリクエストは
ほぼカバーできているはずです。
ほんの少しだけのニーズにまで、
どう応えていこうかというレベルですね。
45,000食を提供するなかで考えていくことなので、
どこまで対応できるかは、今の課題だと思います。

- 山根
- 選手のみなさんは
競技を目的にいらっしゃいますので、
食べ慣れたものを食べたいんです。
珍しいもの、おいしいものよりも、
普段食べているものを試合前に食べて
コンディションを整えることが基本になりますから、
どうしてもそっちが主眼になってきます。
- 高梨
- 今、メニュー承認を進めているところですが、
「この調味料は用意されていますか?」と、
ピンポイントでお問い合わせが来ることもあります。
日本国内で用意できるか、できないかを判断しながら
どれだけそろえられるかが肝ですね。
用意できるようであれば情報を提供しますし、
用意できない場合でも「用意されてない」という
情報を提供しないといけません。
日本での準備ができない調味料については、
各国で準備をしていただく流れになりますから。
でも、できるだけ用意するということで、
事業者と情報を収集しながら準備を進めています。
- 山根
- 日本には普及していないような調味料でも、
その国や地域で食べ慣れているようなものであれば、
リクエストは来るので、できるだけ応えられるように。
- 乗組員B
- ちなみに過去大会の選手村でいうと、
リオデジャネイロとか平昌に行かれて
参考にされたポイントはありますか?
- 高梨
- 私はちょっと前になってしまうのですが、
ロンドン大会をチームのスタッフ側で経験しています。
- 乗組員B
- ロンドンオリンピック、2012年ですね。
- 高梨
- ただ、チームスタッフとして利用する側と、
準備をする運営側では視点が全然違いますので、
あまり参考にはなっていないかもしれません。
- 乗組員A
- ちなみにどのチームで?
- 高梨
- 全日本女子のバレーボールチームで
栄養のスタッフをしていました。
- 乗組員A
- わっ、銅メダルを獲得した
女子バレーボール!
- 高梨
- かなり過去の話ですが。
- 乗組員A
- 「さがしていた、見失っていた光は、
ロンドンの風の中にありました!」
の実況で覚えています。
ああ、そうでしたか。
- 高梨
- ありがとうございます(笑)。
経験していないとイメージしづらい
規模感については役に立ってると思います。
雰囲気の経験はしていますが、
組み立てていくのに役に立ってるのかどうか‥‥。

- 乗組員B
- スタッフのみなさんは、
日本食を食べるのでしょうか。
それとも自由に、
ロンドンならではのものを食べるんですか。
- 高梨
- ロンドン大会でもコーナー分けがされていて、
「アジア・インディア」のコーナーで、
自分の好きなものを選んでくるという感じでした。
余裕があるときにはいろんなコーナーに寄って
選ぶこともありましたけれども、
試合前は、時間との勝負になるので
目的のものだけを取るぐらいでしたね。
競技が終わったあとは、ゆっくり食べられます。
- 乗組員B
- 女子バレーは団体競技なので、
おいしいものを見つけたりしたら
情報交換をしながら食べるんですか。
それとも、みんなが集中するために
黙々と食べているのでしょうか。
- 高梨
- おいしい食べものの情報は
チームの中に伝達してるみたいですね。
「あれがおいしいよ」
というのは広まっていましたね。
- 乗組員B
- ああ、その光景は微笑ましいですね。
(つづきます)
2019-11-23-SAT