バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


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「屋根裏を空っぽにする
 蚤の市?!」

 
     
バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
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「屋根裏を空っぽにする  蚤の市?!」

バブー

だれかが使った古い道具や家具、
小物やアクセサリーが並ぶ世界、
フランスの蚤の市。

「蚤の市」といえば「アンティーク」という
言葉が思い浮かぶけれど、
「アンティーク」という言葉は
正確には100年以上たったもののこと。

100年以上経過したものとなれば、
年代ものなだけに、貴重で高価なものが
多いけれど、
それより年代の若いものたちは
『古きよき道具たち』という
親しみを込めて「ブロカント」と呼ばれるよ。


▲地方の「ヴィドグルニエ」。
 日曜日で閉まっているスーパーの駐車場などで開催される。

とのまりこ

かつては古いものは全てまとめて
「アンティーク」と表記されることが
多かったのですが、
ここ数年、日本でも「アンティーク」ほど
気合をいれなくても、
肩肘はらず日常使いで楽しめる「ブロカント」
という言葉がずいぶん浸透してきました。

さて、そんな「ブロカント」と同じように
フランスで日常的に使われる蚤の市言葉に
「Vide Grenier」(ヴィドグルニエ)
というものがあります。

「ヴィドグルニエ」とは、
「屋根裏を空っぽにする」という意味。

つまり家にある不要なものを集めた
フリーマーケットのようなものなのです。

「アンティーク蚤の市」や「ブロカント」には
プロの業者が参加していますが、
「ヴィドグルニエ」は基本、
素人参加型のマーケット。
(中にはプロのスタンドもちらほら
参加していることもありますが‥‥)

「屋根裏を空っぽにする」
という言葉通り、みんな家中のいらないものを
持って参加します。


▲地面に直接置いてある(捨ててある?!)「あらさ」は当たり前。
 こんな中にもお宝がけっこうあったり‥‥。

バブー
ここで、
「ああなるほど。日本でいう
フリーマーケットね。」
と、日本のフリマを想像するなかれ!

フランスの「屋根裏空っぽ市」に
並べられるものたちはかなりの割合で
ガラクタ、いや言葉がちょっと悪くなるけれど
半分くらいがゴミじゃない?!
ということも多いんだ。

ヒビだらけ、欠けだらけのお皿。
着古してボロボロになった洋服。
落書きだらけの古本。
絵がはげおちている花瓶。
‥‥etc

いやいやこんなのまだまだマシ。

片方しかない靴。
釘、ネジ、板など何かに使われていたパーツ。
首から下しかない人形。
‥‥etc

とにかく信じられないものまでたくさん
山のように積んであるんだ。

とのまりこ
そしてそんな中を、
当たり前のように何も気にすることなく
お宝探しを楽しんで、
汚れていたって傷ついていたって
気にせずに気に入ったものは買う。


▲ご近所で開催されるヴィドグルニエでは
 出店する友達や買い物する友達などご近所さんにも会いまくり。

お金がないから、貧しいからお古を買う
ではなくて、
(だってブランドもののバッグを持った
お金持ちそうなマダムだって
ブロカント巡りは大好きだもの)
自分にとって使えるもの
自分にとってステキに思えるものがあるから
古いボロボロのものでも買う。

そんな感じです。
「中古品」といっても
「新品同様」とか「多少の傷あり」
なんていう文言が多い日本の感覚からすると
かなり衝撃的な世界です。

私自身も「ブロカント」と呼ばれる
古道具は大好きだし、
そういうものを扱うお店を持っているくらいですし、
毎週のように情報を集めては
「ブロカント」「ヴィドグルニエ」に通っているのですが、
日本で生まれ育ち、そこで植えつけられた
常識や文化から見ると、いまだに
毎回衝撃を受ける違いがあるんです。

つい先日も、区が主催する
毎年恒例・大盛況の子供服&おもちゃ限定の
「ヴィドグルニエ」があったのですが
前に進めないほどのすごい人!
そして近所のお友達からは
「朝一で行かないといいものはなくなるよ!」
と情報が回ってくるほど人気のイベント。

言葉の伝わり方次第では、
とてもナイーブなことのような気がするので
あまりうまく言えないのですが、

ガビッガビでごわごわになって
何年使い回されてきたかわからないほどの
子供服を売ったり買ったり。
自分の子供のサイズを探そうと
みんな一生懸命ダンボールの中を探していたり。


▲「女の子用 8歳」「女の子用 6歳」などダンボールやケースに張り紙がしてある

ボロッボロでページがあちこち
取れかかっている絵本や
何代も使い回されて半分壊れているおもちゃを
「どうしてもこれが欲しい!」と
子供がせがんで泣いていたり、
「今日は特別にひとつずつ買ってあげよう!」
とパパが意気揚々と子供に宣言していたり。

日本だったらちょっと恥ずかしいとか、
ちょっと失礼なんて捉えられるかもしれない
「お古」がステキなものであり、
タダでも人にあげたりもらったりしないようなものが
堂々と売られ、新たな家族のもとに
旅立ってゆく姿。

「衝撃的」な文化の違いを
肌で感じる瞬間のひとつなんです。
フランスに存在する
「究極のエコ」
を感じる世界。
それが「ヴィドグルニエ」。

機会があったらぜひぜひ
のぞいてみてほしい場所です。


▲地面に散乱するそのほとんどがゴミ?!
 でもそれがとある人にとってはとてつもない宝物に!

バブー
さて、ボクは今月24日で13歳になったよ!
イヌの13歳。
かなりのおじいちゃんだよね。

最近、階段をするする降りれなかったり。
薄暗いところでは前がよく見えなかったり。
困ったこともたくさんあるんだけどさ。

13歳も楽しく元気に過ごしていこうと思ってるよ♪


▲ボクも毎回「ヴィドグルニエ」のお買い物に付き合わされるんだ‥‥。

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
東京都杉並区西荻北4丁目5−24
【地図】 【駅からの道順はこちら】

 

2017-09-26-TUE


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illustration:Jérôme Cointre