糸井 |
運命は自分で変えられるものだと言いながら、
よその国の人の運命を
滅茶苦茶に変えたり‥‥
自分の運命を変えないためにね。
自分が生き延びるために、ということを
押し付けているんだ、ということを、
内田樹さんが
『街場のアメリカ論』で書いていて。 |
大瀧 |
ええ。この前、対談したかたです。 |
糸井 |
そうですか!
鶏郎さんの話はまさしくそうで、
どうにもならないことがあるということを
知っているというのは、
宗教がある、ということでもありますよね。
で、それが無くて生きていいんだ、
という幻想の中にみんなが生きているから、
キツイわけじゃないですか。
で、鶏郎さんたちの世代は、
「‥‥はずじゃなかった」
ということについて
ずっと語っているわけですよね。 |
大瀧 |
それは共通したなにかが、
みんな、ありますよね。
だから、日劇に出たいと
思っているわけでもないし、
CMをやりたいと思っているわけでもなし、
ラジオをやりたいと
思っているわけでもないし、
テレビに出たいと思ったわけでもないのに、
時代が来るので、それに対応するうちに、
こうなったんですよね。 |
竹松 |
ええ。 |
大瀧 |
だから、さっきも言った‥‥
僕と共通しているのが、
三ツ矢サイダーのCMをやるために
“はっぴいえんど”を3年やっていた
わけじゃないってことなんです(笑)。 |
大森 |
フフフ‥‥そうね。すみません。 |
糸井 |
でも、“はっぴいえんど”に
コマーシャルを頼もうと思いつく人も、
思いつく人ですよね。 |
大瀧 |
いや、流行っていたんですよ、吉田拓郎が。
吉田拓郎は前年ですよね。 |
大森 |
前年。‥‥でもね、拓郎さんは、僕、
全然、意識してなくてね。
“はっぴいえんど”のLPを
聴いてたんですよ。
それで、どこか匂いを‥‥
鶏郎さんに繋がるような
本質を感じたんですね。 |
糸井 |
頼まれたときは、大瀧さんも
もっと突っ張っていたわけでしょ、きっと。 |
大瀧 |
結構ね(笑)。 |
糸井 |
ね。それが、コマーシャル‥‥
「シャリコマなんか、来ちゃってよ」
と思わなかった? |
大瀧 |
いや、コマーシャル自体には
なかったんだけど‥‥。
もうバンドを解散してたし、子供もできてね。
生まれたばっかりで
1ヶ月も経っていないときで、
お金ももちろん要るし。
それで、「どういう話なのかな」と行った。
で、「ビートルズか小坂忠ふうに」
と書いてあったんだよ。
これに、アタマきたね。 |
糸井 |
ほぉー! |
大森 |
それは、僕が書いたんじゃない‥‥の。 |
糸井 |
大森さんも、これは是非、
言っとかなければ‥‥(笑) |
大瀧 |
それにまず文句を言った。 |
糸井 |
まず文句を言ったんだ! |
大瀧 |
それが、まず、
やる動機だったんじゃないかな。 |
糸井 |
「この野郎!」と。 |
大瀧 |
そう、そう。 |
糸井 |
作る方法論はそんなに違わないでしょう? |
大瀧 |
だから、電話をもらったときには、
もう出来た。 |
大森 |
そう。僕が電話をしたら、もう出来ていた。 |
大瀧 |
出来ていたから、行ったの。
ある意味では。‥‥あるでしょ? |
糸井 |
うん。ある、ある。 |
大瀧 |
よく、嫌がって断られている、
というふうに誤解されることがあるでしょ。
本当に出来ないというときが‥‥
ゼロのときがあるでしょう。 |
糸井 |
ある、ある。 |
大瀧 |
0.1さえあれば、
なんとかできる可能性があるけど、
ほんとに0.00で、どこまでやっても、
いくらやっても0.00だという予感は、
必ずあるでしょ。
これは、絶対出来ないでしょう。 |
糸井 |
うん。 |
大瀧 |
そうなんだけど、あの電話がきたときに、
最後の「サイダ〜」の半音、
出来ちゃったんです。 |
糸井 |
へぇー! それは、もう、最高の形ですよね。
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