徳光 | 百貨店にとって、お中元・お歳暮って、 すごい大事なんですけれど、 いっぽうで「ギフト」という考え方が、 70年代半ばになって、出てきました。 お中元やお歳暮というのはギフトではなく虚礼だから、 虚礼廃止をすべきだというような意見もあったりして。 そんな中、伊勢丹は、 「やっぱり、百貨店で売ってるものは、 すべてギフトであるべきだ。 そうでなければ、新しい提案ができない」 っていうことから、この広告ができたんです。 |
ギフトの言葉と言えば、 (文:土屋耕一 |
徳光 | それまで、百貨店のギフトって、 「パッケージ」だったんですよ。 ほとんどの人がまず価格で選ぶ。 相手のことも考えるけど、最初に価格です。 だから「5千円コース」というように、 そういうパッケージがあるわけですね。 けれども、ギフトというのは、 自分がいいと思うものを、 どうやって相手に渡すかっていう提案だ、 と、土屋さんは考えられたんですね。 この時ね、土屋さんがおっしゃってましたよ、 いちばんいいのは、 明治のチェルシーっていうキャンディの広告だって。 |
マツヤマ | 「あなたにも、チェルシー、あげたい」 |
徳光 | そうです。安井かずみさん作詞の、 「あなたにも、分けてあげたい、チェルシー」 っていうCMソングもありますね。 |
ほぼ日 | あの時って、土屋さん、明治製菓のコピーを? |
マツヤマ | 土屋さん、明治は、ずっとなさってました。 |
伊勢丹 宣伝部 |
「チョコレートは明治」がそうですよね。 |
徳光 | あれもそうだよね、ゴリラ。 |
マツヤマ | 「おれ、ゴリラ。おれ、景品。」 |
徳光 | そうそうそう。 そんな土屋さんが、チェルシーの広告を 誉めていたんです。 「あれですね」って。 |
ほぼ日 | 自分がいいと思うものを、 どうやって相手に渡すかっていう提案が チェルシーの広告には含まれている、 っていうことなんですね。 それで、伊勢丹は「ギフト」へと向かった。 |
徳光 | そう、「デパートにあるものは、 すべてギフトだよ」と。 それから、自分の好きなものを、 好きな人にあげる。 相手がどんな顔するかなっていう驚き。 サプライズですね、今に言うね。 |
マツヤマ | これ、子どもの顔がビジュアルのポスターも ありましたよね。 |
徳光 | 子どもの顔とね、おじいさん。 |
マツヤマ | あ、おじいさんも! いいお顔のかたでしたよね。 |
徳光 | そして、77年には、この広告が出ます。 |
1970年代も後半に入って、 (文:土屋耕一 |
徳光 | この頃です。「21世紀」が、 SFではなく、 やがて来る現実として 話に出てきたんです。 |
マツヤマ | そうですね。 |
徳光 | まだまだ、伊勢丹も、 新宿のローカルデパートが、 ちょっと元気になったくらいの頃です。 これからは目先の商売だけじゃなくて、 「どこまで伊勢丹が進化して、大きくなっていくか」 みたいなことを、よく社内でも話していました。 そんななかにも21世紀という言葉が出始めた。 |
ほぼ日 | 土屋さんとは、そういう雑談をする機会は、 たくさんあったんですか? |
徳光 | そうですね。研究所を含めて、僕らがまず話をして、 それを少しまとめたのを、土屋さんに来てもらって、 土屋さんに話をするんです。 土屋さんは、「ふんふん」なんて聞きながらね、 絶対、その場で反応しないんだけどね(笑)。 |
ほぼ日 | (笑)それで、この「21世紀」という言葉が 入ったコピーが生まれた。 |
徳光 | 土屋さんも書かれていますけど、 「『あと、23年」じゃ、 おもしろくもなんともない」と。 やっぱり、こういうのが、 土屋さんのすごいところだなぁ。 これで、本当に、「えっ?」って思いましたもん。 そうか、この子が20歳を過ぎて‥‥って。 みんな、自分のこと、考えちゃうのね、 「あ、そうか、俺は、そうすると、50だな」とかね。 ただ、あとになってわかったんだけれど、 1977年の23年後は、まだ2000年で、 21世紀じゃないんだよね(笑)。 2001年からだから。 そんなことにまったく気づかないくらい、 21世紀って、遠い未来のことだったんです。 |
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