ーー 本日は、お越しいただきありがとうございます。
今回の特集を組むにあたって
回文が得意な方を探していたら、
「ほぼ日」のほかの乗組員が
「回文といえば、アッキィさん!」と
推薦してくれまして‥‥。
秋山 得意ってほどでもないんだけどなぁ(笑)。
でも、回文は好きです。
ーー たのもしいです。
そして、山内さん、
はじめまして!
今日はよろしくおねがいします。
山内 はじめまして。
回文のお話ができるということで、
楽しみにしてきました。
ーー うれしいです。
まずはお二人が
回文を好きになったきっかけを
うかがいたいな、と思っています。
山内さんはいつごろから回文がお好きなんですか?
山内 私は、大学のころからですね。
回文を好きになった瞬間を
はっきり覚えているんですよ。
秋山 へえー。
ーー はっきりと‥‥。そのお話、聞きたいです。
山内 はい、二十歳の冬のことなんですけど‥‥
神奈川県にある南武線の武蔵小杉駅で
電車を待っていたんですが、
待ち時間がけっこう長かったんですね。
それで、駅の看板の
「むさしこすぎ」というふりがなを
何気なーくみていたんです。
ーー なるほど、
こういう看板をみていたわけですね。



山内 そうです。
で、これを何気なく
ひっくりかえして逆から読んでみたら
「すこしさむ」という言葉が浮かんできて‥‥
これは、「少し寒い」だ! と。
秋山 気づいちゃったんですね。
山内 はい。それで、
これは回文になりそうだ、と思って
つくったのが、この文なんです。



山内 もともと、ことば遊びは好きでしたが、
こういうふうに
長いものをつくったのは
はじめてでした。
ーー それで回文に目覚められた‥‥?
山内 そうですね。
このことをきっかけに
移動中のひまつぶしや授業の合間に
つくりはじめるようになって。
秋山 つくった回文は
ノートに書いていたんですか?
山内 はい。電車では携帯のメモ機能を使って、
授業中はノートにメモしていました。
その後、アナウンサーになってから
職場で「趣味は回文」と言っていたら、
TBSの『うたばん』という番組で、
ゲストの名前を用いた回文を
つくらせていただくようになったんです。
秋山 たとえば、どういうものを
つくりました?
山内 いろいろありますけど、
思い出に残っているのは
SMAPの連作ですね。
5人分つくったんですけど‥‥



ーー わあ! すごい。濃厚な5作品。
秋山 ‥‥中居くんは
回文にしやすそうですよね。
「なかいかな?」って、
これでも成り立つから。
山内 そうなんですよ!
だから、中居くんも
「結婚して子どもができたら、
 『かな』にしようかな」って
おっしゃっていました。
あ、そのときに、
これもつくりましたよ。
ーー 「なか」ではじまる人は
最後が「かな」で終わるから
つくりやすい、ということなんですね。
山内 そうですね。
私は、人の名前から
回文をつくることが多いんです。
できあがったものと
その人のキャラクターの
ギャップも楽しいですし。
でも、回文をつくるときは、
その名前自体がもっている
ポテンシャルの高さが重要です。
ーー 名前のポテンシャル‥‥?
山内 たとえば、私の苗字の
「やまのうち」っていうのは
あまり回文向きではないんです。
さっと回文ができる名前と、
そうでない名前があるので、
はじめてお会いした方は、
ポテンシャルの高い名前かどうかを
まずはチェックします。
たとえば、糸井さんなんて‥‥
100点です。
ーー えっ?
秋山 「いとい」だからねぇ。
 
ーー ‥‥「いとい」。
‥‥ああ、たしかに。
お二人とも音を聞いて、
一瞬でわかるんですね‥‥。
山内 えっ。いま
ぱっとわからなかったですか?
秋山 あなた、回文の担当なのに(笑)。
ーー すみません、じつは、さきほどから、
会話にでてきた回文を
ペンで書きながら
ようやく理解している感じです。
秋山さんも、山内さんも、
特にメモをとっているわけでもないのに、
頭のなかで、すぐに文字を
ひっくりかえせるんですね。
秋山 でもさ、社長の名前だよ(笑)。
あの、名前の話でいうと
ぼく、今日はこんなTシャツを
着てきたんですよ。
回文の話ってことで。


ーー これは‥‥ガガ‥‥!!
山内 すごーい!!
さっすがですね。
秋山 ふふふ。
ーー おそれいりました。ガガも回文だ。
秋山さんは、いったいいつごろから
回文をお好きになられたんですか?
秋山 ぼくもわりとはっきり覚えているんですけどね。
小学生のころに
いつも食べていたガムがあって、
その包み紙に回文が書いてあったんです。
山内 へえー!
ーー 包み紙に。
秋山 はい。
ある日、そこに載っていた文章に、
けっこう衝撃を受けたんですよ。
これなんですけど‥‥



秋山 うちが母子家庭だったということも
あるんですけど、
これをみた瞬間、すごいなーと思って。
いまも、桜の季節になると
必ず思い出すんですよ。
「パパ」でなくて
「ママ」でも成り立つんだけどね。
山内 とくに書きとめていたわけでなくて、
頭のなかに
ずっと残っていたんですか?
秋山 そうです。
山内 それは、よっぽど印象に
残ったんでしょうね。
ーー この回文、
すごく情緒がありますね。
山内 お父さんに肩車してもらって
いるのかなーとか。
絵が浮かんできます。
秋山 このころから回文が好きになって、
いまも、他の方のつくった
いい回文を集めるのが好きです。
あとは‥‥だいたい毎日
Twitterをしてるんですけど、
ぼくのつぶやきの定番は
「さぁ朝!」
「寝るね」
たまに「寝る寝る寝るね」。
ーー (笑)ぜんぶ回文。
あれっ、じゃあ、
昔からあるお菓子の
「ねるねるねるね」も
回文だったんですね!
秋山 そうです。いま気づいた?
山内 あと、お菓子といえば、
「ごまたまご」もありますよ。
(※東京土産のお菓子)
秋山 ありますねー。
ーー あぁ!
私、最近、スカイツリーの土産物売り場で
「ごまたまご」をみたんですけど、
気がつかなかったです。
山内 えっ。
秋山 また、そんな‥‥。
回文の担当なのに?
山内 「ごまたまご」の前を通っておいて
気づかない‥‥。
秋山 ダメだよ、回文の担当の人は
そこのキャッチ能力を
磨いておかないと(笑)
ーー ‥‥精進します!
秋山 「ふじたじふ」
ーー えっ?
秋山 藤田さんは‥‥「ふじたじふ」だね。
(※このページは乗組員の藤田が担当しています)
ーー ‥‥?
あっ‥‥ふじた.gif!!
秋山 そうです。
ーー わぁー‥‥。
自分の名前が回文になるって
けっこううれしいですね。
山内 いまみたいに、
ほんとうに身近なところから
みつけていけばいいんですよ。
回文って、力技でつくろうとするよりは
気軽に日常のなかで
探していくようにするといいと思います。
ーー なるほど。
がんばってみます。
(つづきます)

2013-05-14-TUE