コピーライターの土屋耕一さんがしていたような
「ことばの遊び」をみんなでやってみよう、
というコンテンツをはじめてみたいと思います。
といってもね、まったくおんなじことをすると、
これはもう、かないません。
なにしろ、遊びを仕切る土屋さんが
いらっしゃいませんから、
あの軽妙な運びや、鮮やかな解説や、
魅力的な余談といったあたりを
どう再現しようたってムリです。
そこで、まず認めてしまいますが、
これは土屋さんの遊びみたいなことを
やってみる、という遊びです。
だって、『土屋耕一のことばの遊び場。』を読んでたら
そういうことをやってみたくなるんだもの。
いや、ほんと。
そんなわけで、
ムリをせず、身の丈で、いまの姿でのびのびと、
土屋さんが遊んでいたようなことを
やってみようじゃありませんか。
具体的には、課題を決めて、
課題にそった内容をみんなで考えてそれを投稿して、
投稿されたもののなかから
よいなと思えるものを並べて眺めてたのしみましょう。
専門の講座というよりは、
文化センターの特別講習のようなのりで
のんびりたのしめたらと思います。
そんなわけで、第1回となる今回は、
最初の課題の紹介です。
土屋耕一さんといえば、やはり「回文」が有名ですが、
「回文」や「アナグラム(替え句)」といったあたりは
もうすでにある種の市民権を獲得して
よそにたのしむ場がいくつもありますから、
この場所では、もっとほかの遊びを、
どちらかというと土屋耕一さん以外に
そういう遊びをしている人がいないという、
若干「マニアックな」ことばの遊びを
してみたいと思います。
最初の課題は、『ニセ夏休みの日記』です。
え? そんなのあったっけ? って?
はいはい、それでは、テキスト
『土屋耕一のことばの遊び場。』の、
『ことばの遊びと考え』のほうを出してください。
そうです、そうです、糸井重里が編集したほうです。
いいですかー、56ページを開いてください。
そこに『ニセ旅人』というエッセイがありますね。
こちら、どういう内容かといいますと、
土屋耕一さんが、
「絵ハガキの代筆をする」という話です。
あるとき、土屋さんのお知り合いの
お花の先生がパリに行くことになった。
昔は「旅先から絵ハガキを出す」ということが
いまと比べてずっとポピュラーでしたから、
その先生は、パリにいる間に絵ハガキを出すつもりでいた。
ところが、関係者やお弟子さんなど、
出すべき人がとっても多いものですから、
その先生、日本で絵ハガキを先に書いておいて、
それをパリで投函することにしたんです。
もう、これだけで、おもしろい話ですよね?
さて、その絵ハガキの代筆を頼まれた土屋さん、
おもしろがって「ニセ旅人」になりきり、
絵ハガキの文面をいくつか作成します。
本のなかにはそのうち3案が紹介されています。
ちょっと引用してみますね。
第一案
「パリは思っていたほどの気候でもなく、
元気に街を歩いています。
マロニエがこんなに大木だなんて、はじめて知りました。
午後はシテ島に渡って」
第二案
「いつも見慣れた街とはまったくちがう冬景色で、
心が浮き浮きしてきます。
きっと年齢も四、五歳若返っているのではないかしら」
第三案
「ホテルの窓からは遠くにエッフェル塔が見えます。
私が夢ではなくて、
本当にこの町へ来ているのだということを、
窓を見るたび証明してくれるように」
これらの「ニセ旅人からの絵ハガキ」のポイントは
いかに「アイマイな表現」で乗り切るかだと
土屋さんは書いています。
違う言い方をすると、
そこが「遊びのポイント」なわけですね。
パリは暑いのか寒いのか、わからない。
そこで「思っていたほどの気候でもなく」と書く。
「見慣れた街とはまったくちがう冬景色」というのも、
生き生きとした表現でありながら、
なんともアイマイでおもしろい。
ちなみに、お花の先生は、
もっぱら第二案を活用されたそうです。
さて、それでは、みなさん、最初の課題です。
この「ニセ旅人からの絵ハガキ」のように、
どうとでもとれるアイマイな文面を募集します。
テーマはこちら、「ニセ夏休みの日記」。
ほら、ぼちぼち、小中学生のみなさんが
「夏休みの日記、ぜんぜん書いてない!」って
あせりはじめるころでしょう?
そこで、どんな日の日記としても、
絶妙に当てはまるようなアイマイな文面を
つくって、おくってください。
長さは、土屋さんの例にならって、数行で。
極端に子どもの口調にならなくてもいいけど、
多少は意識してもらえるとうれしいです。
ひとり何案でも送っていいですけど、
こういうのって、
何案も送ると「荒れる」ことが多いので、
たぶん、絞ったほうがいいと思いますよ。
あ、申し遅れました。
この企画の進行は永田が担当いたします。
土屋耕一さんは「柚子湯」という
俳号を持ってらっしゃいました。
投稿にあたっては、みなさんもぜひ、
ペンネーム・ハンドルネーム・俳号という感じで
「別名」を名乗ってみてはいかがでしょうか。
それでは、一週間ばかり、投稿をお待ちします。
これから、いろいろとたのしんでいきましょう。 |