みんなでやってみよう。  土屋耕一ゼミ  「ことばの遊び」夏期集中投稿講座
 
  第3回  

こんにちは、みなさん。

2回目の募集は、
「滑らかにしゃべりづらいことば」でした。
しかも、それを、
「ドラマのセリフみたいに」という条件つき。

早口言葉みたいに、
「意味は通らなくてもいいから
 とにかく言いづらいことば」
ではないというところがポイントです。
「生麦生米生卵」とか
「かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ」とか
そういうんじゃなくて、
ドラマのなかに出てきてもおかしくない、
自然なフレーズにして送ってください、
とお願いしました。

なかなか高いハードルだった思いますが、
今回も、たくさんのメールをいただきました。
ありがとうございます!

なかには、
「それ、完全に早口言葉だから」みたいなものから
「なんか、ラップ調?」みたいなもの、
果ては「ふつうに言えます」のようなものもあって、
選びながらゲラゲラ笑ってしまいました。

そんななか、
優秀だったものをご紹介いたしましょう。
ぜんぶ掲載できなくてすみません。
第3回の課題についても
ページの下のほうに掲載していますので
どうぞあわせてお読みください。
それでは、どうぞーー。

「この硫黄、異様な匂いがする」
(由美)
温泉地でのロケで、探偵役の男優がそうつぶやく。
「硫黄」と「異様」を乗り切ってホッとしていると
「匂い」が「ニヨイ」になりがち。
「急遽空港に来い!」
(理恵)
この、感情を込めて強く言わなきゃいけない、
というあたりも言いづらさの要因。
オレがこの役じゃなくて本当によかった。
「事件当日、主賓だったご主人は
 終始主寝室にいたそうです」
(ポルコポッコ)
「しゅ」系の連続よりも、
たったひとつの「ひ」が舌をからませる。
殺されたみたいですね、ご主人。
「梅の実もぎに、まめに見回りに行ってたわね」
(8月後半の蝉)
主人公の母親の回想シーンより。
母親役はベテラン女優だったので事なきを得た。
「この学び舎で、茉奈もママも学んだのね」
(みく)

これは、「舌の体操」としてもいいけど、
なによりとってもドラマのセリフっぽい。

「今、頑なになるなよ」
(あまっさん)
シンプルですが、意外に言いづらい。
なんでもないシーンなのに、
役者さんが難度もNGを出しそう
「平山がヒマラヤに行くだって?」
(ジョンカーペンター)
このあたりで止めておくほうが
ドラマのセリフっぽいですね。
「ヒマラヤン」とか「平屋」とかを無理に組み込まない。
「彼、大のヨハン・シュトラウス好きなの」
(低空01便)
「ヨハン・シュトラウス」のあとの
「好き(ずき)」がより舌を体操させる。
「うちの曽祖父は小食なもので」
(tsutomu)
刑事「夕食がたったそれだけですか?」
後妻「うちの曽祖父は小食なもので‥‥」
「譲二さんなら、ジャージ上下で掃除してましたよ」
(4300)
セリフとしての自然さは、かなりぎりぎりである。
「昭和シェル石油で給油中」
(さや)
このあたりは早口言葉との境界にある。
「今日、急遽交響曲に変更します」
(からくりこ)
特訓の甲斐あって、二次審査を突破した原田。
しかし、最終審査当日の朝、
審査委員長から予想外のひと言が‥‥。
「今日、急遽交響曲に変更します」
「至急、出荷価格確認! 結果ここに書け!」
(87#)
柳葉敏郎風の切れモノ上司、
会議室の扉をバーンと開けながら入ってきてひと言。
「至急、しゅかかきゃくきゃくにん!」
「カーーット!」
「接客業は極力縮小するべきだ」
(ここ夏)
北大路欣也風の高圧的上司、
会議室の机をバーンと叩きながらひと言。
「せっきゃくぎょうはきゃくきょくしゅく‥‥」
「カーーット!」
「カッコつけたコッカスパニエルなんてどこにいるのよ」
(博多撫子)
こちらはちょっと『ふぞろいの林檎たち』風?
中井貴一さんがあきれたようにそう言う。
噛みそうだが、中井貴一さんなら噛まない。
「この化学変化は可逆変化か不可逆変化か」
(きゅーい)
これも早口言葉系と紙一重。
意地悪な理科の先生が、
桜子のことを考えてボーッとしていた耕一を
たしなめるために言ったひとこと、
という解釈でいかがか。
「両触手を直接接触中だ」 
(まな)
これも理科系のドラマですかね。
ダイオウイカの研究家とかが
誰かに探されてるんですかね。
「高橋先生か? 
 いま、両触手を直接接触中だ」
「執務室室長はしょっちゅう出張中」
(凡慕盆)
それでは、次回は、
第十二話「執務室室長はしょっちゅう出張中」。
おたのしみに!
だんだんセリフっぽくなくなってきた。
「ジョーの所蔵する
 『草上の騒々しい少女の肖像』は想像以上だったわ」
(watarinimo)
固有名詞にしちゃうというのは、
遊び方からいうと、軽くマイナスですよね。
「三味線ショーの再放送」
(雉犬猿)
このへんはほんとに言いづらい。
あと、「シャンソンショー」がらみのセリフは
山ほど来たけれど、「三味線ショー」はなかった。
ところで「三味線ショー」って何?
「右耳にミニ耳毛2本出てるよ」
(さば子)
こちらは、投稿者の方が
実際に夫に言ったセリフだそうです。
どうりで、リアリティがあります。
ちなみに、最初はうまく言ったのに
聞き返されてもう一度言ったら、
まったく言えなくなってしまったのだとか。
「被疑者の保護者がお釈迦様の車両を
 処分してしまったんだ!」
(ぺこっぱら)
こらこら。免許持ってんのかよ、お釈迦様。
「そこにあるひしゃくで被子植物に水をあげて」
(立風)
無理矢理に「被子植物」を会話に組み込む努力。
「酒乱の主夫出陣!」
(もりまさ)
おもしろいんだけど、
どういうドラマのどういう場面だ。
「供述の記述と記事の記述は期日を忠実に守れ!
 見出しは『奇術と柔術の技術で芸術家殺害!』」
(minorimama)
ハイハイ、わかったわかった。
「てめー!
 テケテケテケテケテケテケテケテケさせやがって
 うるっせーーーーんだよっ
 出てけ出てけ出てけ出てけ!!!」
(ダンゴウオ)
わははははは。
エレキギターがうるさかったんですかね。
「エレキギター」て。
「やすひささん!」
(ひゃはすひしゃしゃん)
ドラマの登場人物に「やすひささん」は
いないほうがいい、ということで。

このあたりにしておきましょうかね。
たくさんの投稿、どうもありがとうございました。
さぁ、それでは、つぎの課題の発表です。
つぎは、こういうの、どう?

  募集  

それではみなさん、テキスト、
『土屋耕一のことばの遊び場。』の
『ことばの遊びと考え』のほうを出してください。
こちらは糸井重里が編集したほうですね。

その119ページを開きますと、
「即席俳句」なる見出しが目に入ります。

簡単に説明しましょう。
句会などで即興の俳句をつくるとき、
「万能の七と五」をつくっておくと、
たいへん便利である、ということです。

俳句というのは、五七五で成り立ってますよね。
この、後半の七と五を、
「どんな上の句が来ても成立するように」
あらかじめつくっておくんですよ。

例を挙げましょう。
土屋耕一さんは、古来からある文句として
「根岸の里のわびずまい」を紹介されています。
この「七五」の上に、季語をちょこんと乗せると、
どのようなことばでもそれっぽい俳句になる、と。

秋深し根岸の里のわびずまい
赤とんぼ根岸の里のわびずまい

いかがです?
続けて土屋さんは、自作として、
「時計ばかりがコチコチと」
「座敷を猫が通りぬけ」
というふたつの文句を載せています。
これの上に季語を乗せますと‥‥。

小春日や時計ばかりがコチコチと
雪つもる時計ばかりがコチコチと

雪どけや座敷を猫が通りぬけ
玉子酒座敷を猫が通りぬけ

うーーん、お見事です。
土屋耕一さん曰く、
「なんとなく意味ありげなところがいい」と。

さあ、みなさん、おわかりですね。
次回の課題は「俳句即製用万能七五フレーズ」です。
上にどんな季語を乗せても成立しそうな、
なんとなく意味ありげな、「七五」をお寄せください。

ただし、この課題、
成り立つ領域がけっこう広いため、
品質や個性が一層問われることになりそうです。
それでは、どうぞ、おたのしみください。

また何日かしたら、締め切って発表します。
このへん、締切とか、
きちんと区切ってない曖昧さがいいでしょう?

2013-08-29-THU
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
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