鶴瓶 |
嫌なことより、やっぱりね、
いいことのほうが強いですよ。
ぼくかて、嫌なことはありますよ。
40年近くこの世界おるけど、
「あいつはもう失敗した」とか。
まあ、アホなことするからね、ぼくは。
「あいつはもう人気なくなった」とかって。
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糸井 |
それはもしかしたら、
シモ半身系で?(笑)
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鶴瓶 |
ぅふっふっ。
シモ半身系(笑)。
まあ、そういうのもそうや。
「あいつは失敗した」
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糸井 |
ちょいと出た(笑)。
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※ちょいと出た
鶴瓶さんには、
裸にまつわるエピソードが多くある。
ここで事例は挙げないが、
テレビの生放送中に
露出してしまうような事故が何度か。
多くの場合は、泥酔状態でのこと。 |
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鶴瓶 |
「もう、あいつはおしまいや」とか。
「東京進出失敗」とか、
そんなん言われることがね‥‥すごくたのしい。
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糸井 |
たのしい(笑)。
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鶴瓶 |
だから、それも「面」ですよ。
「面ーっ!」
「はいはい、面ね」(笑)。
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一同 |
(笑)
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鶴瓶 |
この前なんか、ぼくね、
あるひとに、えっらい怒られたんです。
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糸井 |
ほう。
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鶴瓶 |
来年60でっせ、ぼく。
えっらい怒られたんです。
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糸井 |
え? なぜ‥‥
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鶴瓶 |
怒られた。
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糸井 |
な、なんでですか?(笑)
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鶴瓶 |
‥‥いやいや、
ものすごい怒られたんです。
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一同 |
(笑)
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鶴瓶 |
あんまりくわしく話せないんですけど、
えっらい怒られたんです。
ぼくが精神的に
イライラさせてしまったんですね、たぶん。
もっのすご、ごっつ怒られて。
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糸井 |
(笑)
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鶴瓶 |
まあ、そのかたもとっさに怒ってしもたから
あとになって「すまんかった」言うて、
握手しにきてくれたんですけどね。
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糸井 |
そうですかぁ、
いやぁ、まだ怒られる?(笑)
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鶴瓶 |
まだ怒られる。
えっらい怒られた。
来年60やのに。
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糸井 |
(笑)
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鶴瓶 |
でも、そのかたが腹立てて言うてたことは、
当たってないわけじゃないんですよ。
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糸井 |
なるほどね(笑)。
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鶴瓶 |
言いにくいことを、
はっきりとおれに言うてくれてるんですよ。
だから、そのまま受け止めて、
「すいません」って謝ったんやけども。
完全に「面」なんですけどね。
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一同 |
(笑)
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鶴瓶 |
「ああ、こう思たはったんや」と。
「やっぱりそう思てる人もいてんねんな」と。
「ああ、おれは悪気なくやってたんやけど、
なんか悪かったんやな」
とかね、そういうことを思いました。
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糸井 |
そうですかぁ‥‥。
いや、くわしくはききませんけど(笑)、
まぁだ、怒られる(笑)。
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鶴瓶 |
うん(笑)。
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糸井 |
あれですよね。
誰にも迷惑かけず、ただ踊っているだけでも、
自分が腹が痛いときは
その踊りに腹が立つじゃないですか。
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鶴瓶 |
そうですね、
腹立ちます、こっちが具合悪いときは。
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糸井 |
だから、
鶴瓶さんは踊ってる人なんですよ(笑)。
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鶴瓶 |
踊ってる人なんやね。
もう‥‥えっらい怒られて。
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糸井 |
笑いながら踊ってる人なんですよ。
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鶴瓶 |
うん。
笑って踊ってるから、「なめとんのか!」と。
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一同 |
(笑)
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鶴瓶 |
「人がこんな必死やのに何しとんねん!」
ということなんでしょうね。
こっちはヘラヘラ笑ってるから、
そりゃあ、怒られますよ。
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糸井 |
それは、おれも同じなんですよ。
「あなたはいいですね」
ってしょっちゅう言われるんです。
でも、それは‥‥言われても困るんですよね。
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鶴瓶 |
うん。
やっぱり、ヘラヘラが腹立つんでしょう。
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糸井 |
そうですね、根本はそれですね。
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鶴瓶 |
「何ヘラヘラしとんねん」と。
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糸井 |
つまり、
全員がよろこんでる社会って、ないんですよ。
笑ってる人がいて、悲しんでる人がいて、
なんですよね。
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鶴瓶 |
悲しんでる人にとっては、
笑ってる人のよろこびなんて
「おれには関係ないんじゃ!」でしょ?
となると、「すんません」てなってしまう。
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糸井 |
ぼくは、そういうときにどうするか、
一生懸命、考えました。
で、結論が出たんです。
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鶴瓶 |
どんなんですか。
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糸井 |
「おれ、これからもヘラヘラしてよう」
って思うことです(笑)。
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鶴瓶 |
ぅふっふっふっふっ。
もう、しゃあないもんね(笑)。
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糸井 |
いやぁ、おれは、そこを鍛えた。
「これからもヘラヘラしてよう!」
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鶴瓶 |
「あの糸井が、
なんも仕事もせんと、
いっつもヘラヘラしやがって、
好き勝手しやがって、なんやぁ!」
いうね(笑)。
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糸井 |
そう(笑)。
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鶴瓶 |
いや、それはまあ、
糸井さんとおれとはちゃうねんやろけど‥‥。
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糸井 |
同じですよ、それ(笑)。
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鶴瓶 |
「何をヘラヘラしとんねん」と。
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糸井 |
そうですよ、うん。
そんなとき、
「たいへんな人もいるんだから」って、
合わせて暗い顔をしてる鶴瓶さんなんて、
だれもほんとは見たくないんですよね。
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鶴瓶 |
うん。
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糸井 |
よろこんでた人が90人いたとして、
そこで10人が
「あいつはおもしろくない」
と言ってると、
よろこんでる90人をつい忘れちゃうんですよ。
ちょっと利口になると、
10人の「ふざけるな」で、
「そうだ、ちゃんとしなきゃな」
と思っちゃったりするんです。
これは、えらいことになるんですよ。
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鶴瓶 |
ふふふふふ。
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糸井 |
おれはね、それをね、
何回練習したかわからない。
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鶴瓶 |
ふあっはっはっ(笑)。
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糸井 |
「今日も明日も、ヘラヘラしてよう!」(笑)
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鶴瓶 |
いや、だから、
「ネアカ元気でへこたれず」。
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糸井 |
そうだ。本当そう。
(つづきます) |