9  えっらい怒られた。
鶴瓶 嫌なことより、やっぱりね、
いいことのほうが強いですよ。
ぼくかて、嫌なことはありますよ。
40年近くこの世界おるけど、
「あいつはもう失敗した」とか。
まあ、アホなことするからね、ぼくは。
「あいつはもう人気なくなった」とかって。
糸井 それはもしかしたら、
シモ半身系で?(笑)
鶴瓶 ぅふっふっ。
シモ半身系(笑)。
まあ、そういうのもそうや。
「あいつは失敗した」
糸井 ちょいと出た(笑)。

※ちょいと出た

 鶴瓶さんには、
 裸にまつわるエピソードが多くある。
 ここで事例は挙げないが、
 テレビの生放送中に
 露出してしまうような事故が何度か。
 多くの場合は、泥酔状態でのこと。

鶴瓶 「もう、あいつはおしまいや」とか。
「東京進出失敗」とか、
そんなん言われることがね‥‥すごくたのしい。
糸井 たのしい(笑)。
鶴瓶 だから、それも「面」ですよ。
「面ーっ!」
「はいはい、面ね」(笑)。
一同 (笑)
鶴瓶 この前なんか、ぼくね、
あるひとに、えっらい怒られたんです。
糸井 ほう。
鶴瓶 来年60でっせ、ぼく。
えっらい怒られたんです。
糸井 え? なぜ‥‥
鶴瓶 怒られた。
糸井 な、なんでですか?(笑)
鶴瓶 ‥‥いやいや、
ものすごい怒られたんです。
一同 (笑)
鶴瓶 あんまりくわしく話せないんですけど、
えっらい怒られたんです。
ぼくが精神的に
イライラさせてしまったんですね、たぶん。
もっのすご、ごっつ怒られて。
糸井 (笑)
鶴瓶 まあ、そのかたもとっさに怒ってしもたから
あとになって「すまんかった」言うて、
握手しにきてくれたんですけどね。
糸井 そうですかぁ、
いやぁ、まだ怒られる?(笑)
鶴瓶 まだ怒られる。
えっらい怒られた。
来年60やのに。
糸井 (笑)
鶴瓶 でも、そのかたが腹立てて言うてたことは、
当たってないわけじゃないんですよ。
糸井 なるほどね(笑)。
鶴瓶 言いにくいことを、
はっきりとおれに言うてくれてるんですよ。
だから、そのまま受け止めて、
「すいません」って謝ったんやけども。
完全に「面」なんですけどね。
一同 (笑)
鶴瓶 「ああ、こう思たはったんや」と。
「やっぱりそう思てる人もいてんねんな」と。
「ああ、おれは悪気なくやってたんやけど、
 なんか悪かったんやな」
とかね、そういうことを思いました。
糸井 そうですかぁ‥‥。
いや、くわしくはききませんけど(笑)、
まぁだ、怒られる(笑)。
鶴瓶 うん(笑)。
糸井 あれですよね。
誰にも迷惑かけず、ただ踊っているだけでも、
自分が腹が痛いときは
その踊りに腹が立つじゃないですか。
鶴瓶 そうですね、
腹立ちます、こっちが具合悪いときは。
糸井 だから、
鶴瓶さんは踊ってる人なんですよ(笑)。
鶴瓶 踊ってる人なんやね。
もう‥‥えっらい怒られて。
糸井 笑いながら踊ってる人なんですよ。
鶴瓶 うん。
笑って踊ってるから、「なめとんのか!」と。
一同 (笑)
鶴瓶 「人がこんな必死やのに何しとんねん!」
ということなんでしょうね。
こっちはヘラヘラ笑ってるから、
そりゃあ、怒られますよ。
糸井 それは、おれも同じなんですよ。
「あなたはいいですね」
ってしょっちゅう言われるんです。
でも、それは‥‥言われても困るんですよね。
鶴瓶 うん。
やっぱり、ヘラヘラが腹立つんでしょう。
糸井 そうですね、根本はそれですね。
鶴瓶 「何ヘラヘラしとんねん」と。
糸井 つまり、
全員がよろこんでる社会って、ないんですよ。
笑ってる人がいて、悲しんでる人がいて、
なんですよね。
鶴瓶 悲しんでる人にとっては、
笑ってる人のよろこびなんて
「おれには関係ないんじゃ!」でしょ?
となると、「すんません」てなってしまう。
糸井 ぼくは、そういうときにどうするか、
一生懸命、考えました。
で、結論が出たんです。
鶴瓶 どんなんですか。
糸井 「おれ、これからもヘラヘラしてよう」
って思うことです(笑)。
鶴瓶 ぅふっふっふっふっ。
もう、しゃあないもんね(笑)。
糸井 いやぁ、おれは、そこを鍛えた。
「これからもヘラヘラしてよう!」
鶴瓶 「あの糸井が、
 なんも仕事もせんと、
 いっつもヘラヘラしやがって、
 好き勝手しやがって、なんやぁ!」
いうね(笑)。
糸井 そう(笑)。
鶴瓶 いや、それはまあ、
糸井さんとおれとはちゃうねんやろけど‥‥。
糸井 同じですよ、それ(笑)。
鶴瓶 「何をヘラヘラしとんねん」と。
糸井 そうですよ、うん。
そんなとき、
「たいへんな人もいるんだから」って、
合わせて暗い顔をしてる鶴瓶さんなんて、
だれもほんとは見たくないんですよね。
鶴瓶 うん。
糸井 よろこんでた人が90人いたとして、
そこで10人が
「あいつはおもしろくない」
と言ってると、
よろこんでる90人をつい忘れちゃうんですよ。
ちょっと利口になると、
10人の「ふざけるな」で、
「そうだ、ちゃんとしなきゃな」
と思っちゃったりするんです。
これは、えらいことになるんですよ。
鶴瓶 ふふふふふ。
糸井 おれはね、それをね、
何回練習したかわからない。
鶴瓶 ふあっはっはっ(笑)。
糸井 「今日も明日も、ヘラヘラしてよう!」(笑)
鶴瓶 いや、だから、
「ネアカ元気でへこたれず」。
糸井 そうだ。本当そう。

(つづきます)
 
2011-01-11-TUE
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