「つるとはな」の5号が出ます!
7月21日(金)〜23日(日)にオープンする
「つるとはな」のTOBICHIは、
ユニクロといっしょに開きます。
できたての「つるとはな」5号のとなりに、
ユニクロのステテコ&リラコが並ぶという
なんだかめずらしい催しになりそうです。
(涼やかな生地や柄を、見てさわってみてください)
なぜ、ユニクロといっしょにやることになったのか? 
「つるとはな」編集の松家仁之さんに、
ユニクロの「本気の活動」についてうかがいました。

「つるとはなとユニクロ」開催情報はこちらへ


▲「つるとはな」編集を担当する松家仁之さん。

後編
責任をどうやったら
果たせるのか?

──
6500万人という難民の人数は、
すごく多い、ということはわかるのですが。
松家
そうなんです、そこなんです。
「服のチカラ」の編集を
お手伝いすることになったとき、
「CSR的な活動」をちゃんと伝えるのは
じつは、なかなかむずかしいことだと
感じたんですね。

世界の避難民がいま6500万人という数、
驚く人はもちろん驚くわけですけれど、
日本では身近に難民がいる、というわけではないし、
数字をあげるだけでは、ほんとうに切実なものが
伝わるとは限らないのではないか。
数字をあげても、個人の顔が見えない。
全体的な状況を伝えるだけでは、
読者にほんとうのところは響かないのではないか。
下手をすると、学校の授業のように
眠くなってしまうかもしれない。
──
そうですね、実感はわかないかもしれません。
松家
だからぼくが「服のチカラ」を編集するとしたら、
顔が見え、声が聞こえる人物に
焦点をあてたいと思いました。
6500万人全体ではなく、1人を取り上げたい。
もちろん客観的なデータはしっかり入れるとしても、
まずは「当事者」にお会いして、じっくり話を聞き、
その人のたどってきた道筋、折々にどんなことを
感じていたのか──その物語を通じて伝えたほうが
深く伝わるのではないかと。
当時のユニクロのCSR部(現サステナビリティ部)の方と
そのことから相談を始めたんですね。
「服のチカラ18号」では、
「ベルリンの店舗でシリア難民の採用が行われている」
と聞いたので、その人を取材することにしました。
事前に男性だということは分かっていたのですが、
あとは「若い人」だという情報しか
ありませんでした。
──
取材前にどんなキャラクターの人かが
分からないんですね。
松家
難民だった彼は、シリアからドイツまで
3000キロを超える道のりをやってきた。
想像を超えるような厳しい経験をしてきたはずです。
しかも、ドイツ社会に
どうなじんでいるのかもわからない。
どんな表情をした人なのかな、と会うまでは不安です。
そして、取材当日、彼とベルリンの店の前で
待ち合わせしました。
──
そしたら、この表紙の、
さわやかな方が来られたんですね。
松家
そうなんです。
向こうからやってきた彼の笑顔を見たとたん、
「あ、大丈夫だ」と思ったんですね。
彼ならいい取材ができるだろうって。
瞬間的にわかった。

彼、アブドゥルはほんとうにすばらしい人でした。
ベルリンのユニクロのお店で
スタッフみんなからすごく愛されていて、
すれ違うだけで、笑顔で
「アブドゥル!」と声をかけられる。
インタビューでは、いったいどこまで話を聞いていいのか
こちらが気を遣っていることまで察してくれて、
「何を聞いてくれてもかまわないですよ」と
最初に笑顔で言ってくれたんです。
取材最終日にはベルリン郊外の自宅までうかがって、
お兄さんとふたりでつくってくれた料理をごちそうに
なりながら、長時間お話をうかがうことになりました。
──
(記事を読んで)これは、かなり刺激を受けますね。
松家
いやほんとうに。「服のチカラ」の取材では
なかなか出会えない人にお目にかかって
話をじっくりうかがうことになりますから、
勉強になりますし、刺激も受けます。
アブドゥルの母国シリアはあらゆる意味で
ぼくらのいる日本からすごく遠い。
16号で取り上げたロヒンギャの女性もそうです。

彼女も彼も、共通していることがひとつあります。
厳しいシチュエーションをくぐり抜けてきた人は、
笑顔がすばらしく、いいんですね。
ぼくらが忘れてしまっていたような、
こころの底からわいてくる笑顔になる。
笑顔を持てなかった
厳しい数年間をくぐりぬけて、
日本やベルリンにようやくたどり着き、
仕事をするようになって得たものへの気持ちが
こぼれるくらいにあふれだすというか。
彼らの笑顔は特別な気がします。
──
1号前の「服のチカラ」17号は、
子どもさんたちの貧困がテーマなんですね。
ユニクロのニューヨーク店に招待して、
お絵かきをしたり。
松家
ニューヨークで注目されているアーティストで
「キース・ヘリングの後継者」と言われることもある
ジェイソン・ポーランさんをゲストに呼んで
自由に絵を描くワークショップを開いたんですね。
アメリカのユニクロではこれまでも、
子どもの貧困対策について
服の会社にできることはなにかと考え、
さまざまな取り組みをしています。

たとえばクリスマスの時期に
お客さまから寄付を募って、
ユニクロからもお金を出して資金を作り、
貧困家庭の子どもたちにクーポンを
用意するんですね。
例えば1万円相当のクーポンを子どもに渡して、
お店で「お買い物体験」をしてもらうのです。

貧困家庭に生まれ育つと、
お店に行って買い物をするという経験が
なかなかできない場合があります。
「新品の服を買うなんてはじめて」という子どもたちに、
店のスタッフが店内を案内しながら、
自分の好きな服を選んでもらう。
コーディネイトをスタッフに相談したりして、
レジでクーポンを使って会計をすれば自分の服になる。
自分で選ぶ喜びを味わってもらうのはもちろん、
お店で働くのはどういうことかも知ってもらえる。

大人になったら自分もこうして働けば
お金が稼げるかもしれない──、
そういう気持ちをノックするようなイベントです。
お父さんやお母さんに長らく仕事がなかったりして、
なかなか外出の機会のない家庭もありますから、
支援施設で暮らす家族の、閉ざされがちなドアを開けて
出かけてきてもらうだけでも大きなことなんです。
──
社会との関わりを少しでも持ってもらう、と。
松家
そうなんです。
難民にも、貧困な境遇におかれた人たちにも、
ただ支援の手を差し伸べるだけでなく、
やがて自立してもらえるような方向に支援する、
というのがユニクロの基本的なスタンスです。

オランピア・ル・タンさんという
フランスのデザイナーが、
ユニクロの社会貢献活動に賛同して、
トートバッグでコラボレーションし、
難民の女性の方々に、バッグにつけるワッペンの
刺繍を担ってもらうプロジェクトもありました。
収益はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通して
難民の自立を支援する活動にあてられたんですね。

縫製刺繍の技術を身につけてもらうことはもちろん、
実際に商品ができあがって、それが実際に店で
売られると、彼女たちはほんとうに、
すばらしい笑顔になっていくんです。
それは社会とつながりを持つという
よろこびなんですね。

CSRというと、企業が予算を組んで、
なんらかの援助をしたら、一方通行のまま
それで終わってしまうという場合もあるのではないか。
ユニクロの支援は、たんなる第一歩にすぎないんですね。
支援を受けた人たちが機会を得て、笑顔になって、
やがて社会に参加して、世の中を動かす力になる──
これがユニクロの社会貢献活動の
最終目標なのではないかと感じています。

世界で起こった不幸な出来事によって
難民が生まれてしまったけれども、
もういちど世界に入ってきてもらう機会を用意して
今度はいっしょに世界を動かす力になってもらう。
これは結局、支援を受ける人のためばかりでなく、
支援の側にいるわたしたちのためにも
なっていくことなんですよね。
──
だからこの言葉‥‥。
「世界を良い方向に変えていく」
松家
そうなんです。
すごくストレートなんだけど、
ユニクロは本気でこうしたいと思ってるんですよ。
──
ユニクロさんのCSR部は、CSRという
名前を最近になって
サステナビリティ部に変えたんですね。
「持続可能性」という意味ですよね。
松家
そうです。
ユニクロの代表をつとめている柳井正さんの
考えで名称を変えたようです。
企業に社会的責任があるのは当たり前のことで、
企業の社会的責任はなんのためにあるのかを
もっと積極的に考える必要がある、
それはつまり、
世界のサステナビリティ、持続可能性をめざして、
それを企業として実現させる必要がある。
この目的をはっきりさせて、
部署名に掲げようじゃないかという
考えがあったのではないかと、
これは私の勝手な想像にすぎないのですが(笑)。
──
責任イコール、サステナビリティ。
松家
この世界が、少しでもいい状態に向かって
持続できるように、そして
次の世代にバトンタッチできるようにしよう、
世界が破滅的な方向に向かわないために
何ができるかを考えようと。
企業の社会的責任(CSR)と言っても、
「責任」と言ってるだけで‥‥。
──
たしかに「責任を果たす」以外に
具体的なことは言ってないですね。
松家
ユニクロは服を作って売る会社です。
服を作るということは、たとえば、
具体的にジーンズを例にとれば
労働力をつかって、
綿花を栽培し、綿を収穫し、
糸を染め、電力をつかって機械を動かし、
縫製し……と労働力と資源がどうしても必要です。
それは環境に負荷をかける行為でもあるわけです。

ユニクロは自社工場を持つのではなくて、
世界各地の工場と契約を結んで製造しています。
工場の労働環境問題は、とても大きいです。
働いている人が適正な労働環境と対価を得ているか、
工場のある地域の環境を損なうことをしていないか、
しっかりコミュニケーションをとりながら
定期的にチェックしているそうです。

ぼくは「服のチカラ」の取材で、
ユニクロが取り引きする中国の工場のひとつに
行ったことがあります。
工場のなかはびっくりするくらいきれいで、
しかもオートメーション化がかなり進んでいて、
工程によっては人が数えるほどしか
いなかったりもするんですね。

昼どきの社員食堂にもいきましたけど、
おいしそうな料理が出て、すみずみまで清潔でした。
その工場は、CO2や煤煙の排出を削減する
最新の火力発電所や、汚水処理場まで備えていて、
それを地域全体が利用するインフラとしても
機能させているんです。

そのうえ地域の専門学校を経営し、
動物園や運動場、公園をつくり、幹線道路の
並木まで整備して、暮らしやすい街づくりに
深くかかわっている。

工場で働いている女性も取材しましたけど、
誇りをもって働いていて、工場がつくって
分譲したマンションに暮らして、
悩みは姑とのやりとりくらい(笑)、
労働環境はもちろん、生活の質にも
満足しているのが伝わってきました。

高度経済成長期の日本の雰囲気に
どこか似た明るさがあるんですね。
つよい印象が残りました。
──
そんな工場といっしょにモデルケースをつくることで、
「世界を良い方向に変えていく」んですね。
CSRは企業のイメージを良くするための
社会貢献ではない、と‥‥。
松家
サステナビリティ部にいる人たちとは、
ずいぶん長いおつきあいになるんですが、
「やらされ感」でやってる人に会ったことがない。
仕事を本気でおもしろがるというか。
おだやかな人が多いんですけれど、
やっていることはすごく熱い、という。
もうほとんど同僚のような気持ちで
「服のチカラ」をつくっています。

今回の「つるとはなとユニクロ」のTOBICHIでは
「つるとはな」の5号はもちろん、
ユニクロの夏の商品といっしょに、
「服のチカラ」が並びます。
「服のチカラ」はテイクフリーなので
ぜひみなさんにお持ち帰りいただきたく思っています。

きっとTOBICHIには、ユニクロの方も
顔を出す機会があると思いますので、
みなさん、いらしたら声をかけてくださいね。
──
松家さんや「つるとはな」のスタッフの方が
いらっしゃるときも、
いろんな取材のエピソードなどを
聞かせてくださると思います。
松家
TOBICHIでお待ちしています!
前編はこちら
TOBICHIで開催
「つるとはなとユニクロ」
2017年7月21日(金)〜23日(日)
午前11時〜午後7時

できたての「つるとはな」5号と、
ユニクロの話題の商品がいっしょに
お買いものできるスペシャルショップを
3日間のみ限定で開きます。

ユニクロの夏のヒット商品、
「ステテコ&リラコ」やTシャツなど、
人気のアイテムが並びます。


▲ステテコ&リラコ 各990円(+税)

「つるとはな」の松家仁之さんに訊いた
ユニクロのCSR活動についてのインタビューは
こちらをごらんください。

今回の「つるとはな」5号は、
90歳以上の人びとがたくさん登場する
力強い号となっています。
人生のこれからについて、
霧をすっきり晴らしてくれるような
ヒントに満ちたインタビューがたくさん出てきます。
ぜひお手にとってみてください。

期間中「つるとはな」をお買い上げの方には、
1冊につきひとつずつ、
特製クリアファイルと特製しおりをさしあげます。

しおりには、これまで「つるとはな」に登場した
名言がひとつ刷られています。
8種類ありますが、どの名言がお手もとに行くかは、
おみくじのようにたのしみにしていてください。

そして、遠方のみなさん、
今回も「つるとはな」の新号を
ほぼ日ストアで販売します
販売スタートは、TOBICHI開催と同日の
7月21日(金)11時から。
ほぼ日ストアでのネット購入特典は、
「つるとはな」特製しおりと、
ユニクロの「服のチカラ18号」です。

みなさまのご来店をお待ちしています!

2017-07-19-WED