糸井 |
前にやった業績について
人は留まりがちですが、
「それは終わったことだ」と
片づけられたほうがいいんでしょうね。 |
吉本 |
執着することが多けりゃ、
そこに止まるか、止まった形になると思います。
それじゃあ、執着しなきゃいいのか、というと、
そうでもないと思います。
それは坊さんが
「悟った、悟った」というのと同じで、
そんなのあてになるか、ということです。
ですから、何かしら
適当な執着と、適当な自分離れが
あるのがいいんじゃないでしょうか。
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糸井 |
吉本さんは、組織のリーダーを
やってなかったおかげで、
「みんなの期待する吉本隆明」を
演じなくてよかったということも
あるんじゃないでしょうか。 |
吉本 |
ああ、それはもう、そうです。
つまり、自分でなくなったら、
もう何もないというのと同じですから、
それは最後のよりどころです。 |
糸井 |
ほんとうの教養とは、
注意深さのようなものから
芽生えていくんですね。 |
吉本 |
今、二山目の戦後不況に
当面しているわけですけど、
糸井さんは、それを潜り抜けるということが
できているんじゃないのかなと思います。 |
糸井 |
それは、どうでしょうか。 |
吉本 |
ですから、糸井さんという人は
教養ある人だっていうことに
なりそうな気がしますね。 |
糸井 |
事実としてそうなら、うれしいですし、
そうなりたいです。
でも、これはみんなが、
ほんとうはできることですよね。 |
吉本 |
できる、やさしいことです。 |
糸井 |
吉本さんに、以前
「何が欲しいですか」と訊いたことがあって、
そのときに
「モーターボート」と即答されたのを
僕は、ものすごく憶えてるんです。 |
吉本 |
そうそう。そうです。
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糸井 |
いまもそうですか? |
吉本 |
そうです。
モーターボートか釣り船、
つまり、エンジンのついた釣り船です。
それがあったら、いいです。
必要なときに欲しいです。
遊びにいくとき、欲しいなと思います。 |
糸井 |
じゃあ今度、乗りましょうか。 |
吉本 |
糸井さんが、おおいに儲けてくれて
モーターボートいっちょうとか、
よこしてくれるとか(笑)。
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糸井 |
がんばりましょうか。 |
吉本 |
エンジンのついた、和船、釣り船、一艘。
これほど愉快な遊びはありません。
僕は、そう、
遊ぶんなら、船に乗って、と
思いますね。 |
糸井 |
そうですか。 |
吉本 |
遊びとしては、格段の違いです。
あの、変なとこから
陸を見てる感じというのは、
ちょっとほかにないですからね。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。 |
吉本 |
いいですよ。
泳ぐところもあるし、
釣りするところもあるし
漕いだりするところもある‥‥
それは、もう、ちょっと
こたえられないと言いましょうかね。 |
糸井 |
具体的にそんなに船が欲しいんだったら
本気で考えたほうがいいですね。
祈れば通じるかもしれない。
励みにして
がんばりましょう。 |
吉本 |
ははは。
いや、がんばります。
(明後日に続きます)
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