糸井 |
ところで、「ほぼ日」では
就職論の本を
出したりしたんですれども。 |
吉本 |
ほう、ほう。 |
糸井 |
僕らなりにいろいろ研究して
『はたらきたい。』という本を
つくりました。
そこでわかったことのひとつは、
まともに仕事をしようとする人というのは
いっしょに仕事をしていく仲間が欲しいんだ、
ということだったんです。
そのことの手がかりとなる、
究極の面接試験の質問というのが、
「あなたはこれまで
なにを大切にしてきましたか?」
でした。 |
吉本 |
うん。 |
糸井 |
その質問にうまく答えようが答えられまいが、
その答えの中に
一緒に仕事をしたい人を探す
鍵があるんだそうです。
もし吉本さんが
「あなたはなにを大切にしてきましたか」
と訊かれたら、
どんなふうに答えますか。
|
吉本 |
そうですね。
具体的な、というか、
機能的なことで答えるとすれば、ですよ。 |
糸井 |
はい。 |
吉本 |
それは、自分が生きている現在を考えるときに
なにに目を使っていますか、
ということだと思います。 |
糸井 |
‥‥なるほど。 |
吉本 |
例えば、少し前ですが、
バブル経済のとき、日本は
今の中国と同じで、
アメリカに次ぐ経済大国だと言われていました。
アンケートを取ると
日本の人口の8割から9割の人は
「自分は中流階級だ」という答えをしていました。
そういう状態のとき、どういう目の使い方を
すればいいかというと、それは、
「中流の中以下の人が、
どういうふうになってるかな、
どう考えてるかな」
ということだと思います。
それが、その「とき」を
本格的に観察し、解明する場合に、
機能的にいちばんいいと考えています。
人事問題から、経済問題まで、すべてがそうです。 |
糸井 |
真ん中の下のことを。 |
吉本 |
真ん中を「含んだ下」です。
職業で言えば、中小企業から、
個人企業の商売をしている人です。
「“中”以下の人がこれからどうなっていくか」を
ひとつ、主眼にして、
生きてる今を考え、それを広げて
自分のやってることに関連づけるんです。
そこになんだか、
ほんとうのことが
隠れているような気がするんです。
それ以外のことは、要するに
個人の、遊んだりとか稼いだりとか、
そういうことに属するから、
それはまぁ、誰でも同じように考えてると
思えばいいじゃないかと思います。 |
糸井 |
そこの雑さもおもしろいですね。
「誰でも同じように考えてる」 |
吉本 |
大金持ちになるんだ、でもいいし、
社会に奉仕したい、でもいいでしょう。
どうぞ、どうぞ、
個人的には否定する要素はないよ、と思います。 |
糸井 |
‥‥僕は
「吉本さんが大切にしてきたもの」
を訊いたのに、吉本さんは、
個人が意志で大切にしてきたことというのは
言おうが、言うまいが、
同じようなことなんだとおっしゃるんですね。 |
吉本 |
そうです。 |
糸井 |
例えば、
「自分に嘘をつかないこと」だとか
「友達を大事にする」だとかいうのは、
みんなが普通に思ってる普通のことで、
思ったり、思わなかったりするだろうし、
また、言おうが、言うまいが、
お前が大事にしてこようが、くるまいが、
あんまり変わんない、と。 |
吉本 |
変わんないです。 |
糸井 |
あとは、
そのふたつの目玉で、なにを見ているか。
そのことのほうが、
「自分」なんだと。 |
吉本 |
ええ。
|
糸井 |
‥‥はははは。 |
吉本 |
ぼくはそう思ってるわけです。
そして、それを機能的に言うとするなら、
全体社会をつかむ場合に
いちばんやさしい方法は、それですよ、
ということです。
それ以外の考え方や感じ方をしたり、
倫理感を入れると、
必ずその部分だけまちがえます。
僕は、よくそうやって
できるだけ面倒なことは介入しないように、
あっさり問題がわかるように考えています。
(来週に、続きます))
|