15、「心霊ワニ写真」
フロリダに行って、
野生保護地区でワニを探しました。
動物園なら簡単に見ることができる
彼らですが、
野生保護地区っていうのは
要するに向こうの世界を
こわさないようにして作られていて、
たまたまそこに住んでいる野生の生き物たちと
ばったり出会えたら運がいいね!
というようなところだから、
なんの保証もないのです。
で、目を皿みたいにして
いっしょうけんめいにワニを探しました。
川沿いの、マングローブが根をはっているような、
いかにもワニが出てきて
獲物をがばーっと獲りそうな場所を
ぎらぎらと探してみても、
いっこうにワニは見つからない。
しかし、ついに見つけました。
遊歩道からぐっと奥に入った
柵の向こうの、
木がつたみたいに
ぐちゃぐちゃにからまっているのを
ハンモックみたいにして、
小さいワニがお昼寝していたのです。
「ワニだ」「うお~、ほんとうにワニだ」と
ひとしきり言い合って、
まわりの静かな西洋人たちにうとまれながらも、
私たち典型的な
日本人観光客のしたことはただひとつ
「ワニと写真を撮る」です。
みなかわるがわる、
なぜかワニに背中を向けることに
ちょっとびくびくしながら
遠くのワニをなんとか入れ込んで
何枚も写真を撮りました。
帰ってからわくわくして見ると、
ただでさえグレーなワニが
グレーな枯れ枝に乗っているので、
全くわからない。
ここにワニがいるんだって!
といくら説明しても人には見えず、
あまりのわかりにくさに
説明しているほうも、
どこにワニがいたんだか
わからなくなるくらいの
写真しかありませんでした。
「だからここだって、
この枝のところにしっぽがあるでしょ」
「ああ、これ?」
「違う、それは枝」
「わかった、これがワニだ!」
「それは水面だってば。
ワニはこういう形で、ここにいるの」
とその場所に丸を描く私・・・。
この感じはまさに心霊写真だ!と思いました。
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