27、「縁の下の力持ち?」
私の知人のクリエーターが全員
「あの人に会うと安心する」
とか
「あの人がいるとなんだかうまくいく」
という人がいます。仮にSくんとしておきましょう。
あまりにもみんながそういうので、
Sくんにはじめて会ったときには
ものすごい有名人に会ったような感動を覚えました。
そして、後日、
身をもって彼のすごさを体験することになったのです。
それは、私がめったにない大勢の人の前で、
しかも国賓を迎えての会で
スピーチをすることになった朝のことでした。
たまたま関係者だったSくんは近所に泊まっていたので、
うちに寄ってもらっていっしょに行くことにしました。
夫の分のパスをもらい忘れたり、
子供がぐずったりして、
なんだかばたばたして着替えもしていないうちに
Sくんがやってきました。
普通、こういう緊張するときに、
そんな状況でしょっちゅう会うわけではない
異性が家に来たらいやじゃないですか?
しかし、Sくんにお茶を出して、
ふたことみこと会話をして
「まだ着替えてないし化粧もしてない、
ちょっと子供見てて~」
なんて言っているうちに、
私はどんどん落ち着いていったのです。
そして別の部屋でゆっくり着替えて、
顔もぬって、私の側のお迎えの人も来て、
さて、出かけましょうというときに、
私は玄関で誰に言うでもなく、
「う~ん、靴は赤かな、茶かな」とつぶやいたのです。
するとSくんが間髪入れずにきっぱりと
「絶対赤がええよ、うん、赤や」
と言ったのです。
それで私はなんだかすごく
赤でいいような気がしてきて、
赤い靴をはいて、出かけたのでした。
それは全体的に魔法にとてもよく似ていたのです。
これまでのいくつの場面で、Sくんは、
ある意味繊細な状況にある人たちを
そんなふうに支えてきたのだろう、
たくさんの名前の出ている人たちの大きな業績は、
実はこういう人が創りだしているんだなあ、
と私は思うのです。

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