32、「忘れられない」
大学のときの同級生にTさんという
ものすごい新潟美人がいた。
目はぱっちり、色白で胸は大きく、
ウェストはくびれていた。
そしてかっこいい古着に身を包んでいて、
いつでもバービー人形のような
斬新な色と形の服を着ていたのです。
一度、思い切って聞いてみたことがある。
「そんなに目立つ服を着ていると、
みんなに見られない?」
すると彼女は言ったのです。
「電車の中なんて、もう、顔をあげられないのよ」
なんだかいいなあ、と思ったのです。
もうひとつ忘れられないことがあります。
私はTさんを含む
ある華やかなグループの人たちと
なんとなくいっしょにいることが多かったのですが、
その中には当然すごい遊び人もいました。
ある女の子が
ナンパされてすぐに体を許すので有名よ、
という話で、
ある日の車の中は盛り上がっていました。
「なんかもうなんでも許すらしいよ!
後ろの穴とか!」
「会ったその日に店のトイレでやっちゃったって
××くんは言ってたよ」
「すごいなあ!」
なんてみんながきゃあきゃあ言っていたそのとき、
Tさんはおっとりと言ったのです。
「まあ・・・それじゃあ彼女は、
私たちといっしょに過ごしている時、
さぞかしかたくるしかったでしょうねえ・・・」
みんなはバカうけでしたが、
Tさんはきょとんとしていて、
私はますます「いいなあ」と思ったのでした。
こういうリアクションって、
決して計算してはできない。
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