43、「もしかして」
いわゆるオカマの友だちと、下北沢を散策しました。
おしゃれでいつもアルマーニとか着ている
アメリカ文化嫌いの彼にとって、
古着界は決して許せない世界。
「なんでも合わせりゃいいってもんじゃない!」
とぷりぷり怒っていましたが、
七十年代のGパンをカットして
ぱつぱつのショートパンツにして
濃い紫に染めた物を見て、
「これ、ちょっといいじゃない?海で着ようかな」
とごきげんを直しました。
そんな変わったものに触手が動くのも、
どうかと思うのだが。
そして彼は次々に試着してみたのだが、
悲しきことに細身すぎる彼には
ぴったりのサイズがなかったのです。
結局買わなかった彼はまたもぷりぷりと怒りながら、
「ねえ、まほこ(私の本名)、だめよ、
こんな街に染まっちゃ。
中年からの女はちゃんとゴージャスにならないと、
みじめよ。
体にちゃんと合う服を、
ちゃんとコーディネートすることをだらけちゃ
絶対だめだよ。
こんな、なんでもかんでも着ちゃうような服は
絶対だめ!」
と説教されました。
「あの、安く見えるかもしれないけど、
私の今着ているワンピースは、ギャルソン・・・」
という私の声などかき消されてしまいました。
もしかして、サイズの合うパンツを買えていたら、
あそこまで説教されなかったんじゃないか?
と私はうっすら思っています。
ついでに、その日そのあと行ったお店で別のオカマに
「まほちゃん、次の店行くから、
今すぐトイレ行って少しお化粧してきなさいよ」
と言われたので、
「持ってないもん、ファンデーションもなにも」
と堂々と言ったら、
「・・・持ってないの・・・?」と沈黙されました。
ありえないものを見るようなあの目も
忘れられませんね。
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