53、「父と母」
このあいだの夜、
締め切り明けでよれよれの私が
電気も消して真っ暗な部屋の中、
親子三人川の字で寝ていましたら、
突然チビが目を覚まして、
「ここに!ない!」と言うのです。
「なにがないんだよ~」と寝ぼけながら言ったら、
「父と母がない!父と、母と、一緒に寝るの!」
と言って泣いています。
パパはそんなさわぎの中、
ぐうぐうぐうぐう寝ていました。
私がいくら
「そうは言うけど、チビちゃん、
ここにいるのがパパとママじゃん」
などと言ってみても泣くばかりです。
私ははっと思い当たりました。
そうだ、昨日はこいつ、
帰ってきたウルトラマンと寝ていた
(セクシーな感じだ・・・)。
そしておとといはウルトラセブンと寝ていた。
つまりこれは!
「わかったよ、ママが持ってきてあげるから待ってて」
そう言って、寒いっちゅうのに
誰もいない真っ暗な居間に行って、
床に落ちているガラモン、ウー、ウルトラ兄弟たち、
ミクラス、メトロン星人、ゴドラ星人などをかきわけて、
ウルトラの父と母のフィギュアを探し出しました。
これといっしょに寝ると、
角があたって痛いんだよな、と思いながら。
私の推測は正しかったらしく、
チビは「あった!父と母と寝るの。ママありがと」
と言って、ウルトラの夫婦を抱いて
すぐにすうすう寝ました。
すっかり目が覚めて足も冷えた私は心の中で
「おめ~がさっきいっしょに寝てたのがな、
すでに父と母っていうもんなんだよ!」
と摩邪のように、プロレスラーのように、
心の中で床にマイクを投げつけたのでした。
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