白い犬。梅佳代さんちの「あのこ」のこと。白い犬。梅佳代さんちの「あのこ」のこと。

このコンテンツについて

曇りガラスの向こうから、こっちを見てる。
雪にまみれて、雪と一体化してる。
みちばたでプリッとウ◯チをしている‥‥。
梅佳代さんの写真集に、
ときどき出てくるあの「白い犬」が
一冊の写真集になりました。
タイトルもズバリの『白い犬』です。
梅佳代さんにとっては、
一緒に暮らしたことのない実家の犬のこと。
最初は怖くて触れなかったけど、
いつしか友だちになっていた、白い犬のこと。
梅佳代さんが、いつものように、
ユーモアたっぷりに、話してくれました。
担当は「ほぼ日」奥野です。


第5回
梅家はあらゆる人の実家である。

──:
今回の写真集って、
今までの写真集には出していない作品が
多いわけですよね?
梅:
ぜんぶ、出てないのだけだよ。

わたし、これまで出した写真のベスト版でも
いいかなと思っててんけど、
装幀してくれた祖父江(慎)さんが、
「いや、他にもいい写真がたくさんあるから、
新しいのだけでいこう」って。
──:
おお。
梅:
あ、でもね、ひとつ残念があって、この写真。
──:
あ、かわいい。
梅:
でしょでしょ?
リョウがクルマに座って前見とるところ。

これ、わたし、すごい好きな写真なんだけど、
本の流れに入れにくいってことで、
落ちたんで、「ほぼ日」に載っけてもらおう。
──:
どうですか、出来上がった本を見て。
梅:
これは『じいちゃんさま』以来で思ったけど、
「この本、誰要るん」って。
──:
読者が待ってるじゃないですか。
梅:
だってだって、うちの犬の本だよ?

新潮社なんていう
立派な会社の人たちがつくってくれたけど、
これ誰か要るんかな、と思ってしまってる。
──:
そんなことないです(笑)。
梅:
うちのじいちゃんの本をつくったときには、
もっと思ったけどね。

表参道という大都会の真ん中で、
うちのじいちゃんの展覧会って意味わかる?
──:
ああ、犬のほうが理解はしやすいですね。
人間のおじいちゃんより(笑)。

ただ「梅佳代さんちの」とついた時点で、
ただのじいちゃんではなくて、
「ああ、あのじいちゃんの」となるから。
梅:
そうか。

あの本のこと好きって言ってくれる人は
けっこう多くて、
「『じいちゃんさま』好きです」とか、
よく言われて、すごい嬉しいけど。
──:
ええ。
梅:
「え? でも、そのおじいちゃんて、
知らんおじいちゃんやん?
知らんじいちゃんの写った本が好きって、
あんた、どういうことや」
って、どうしても思っちゃうの。
──:
まあ、まったく同じ意味で、
この『白い犬』という写真集の主役だって、
ファンにしてみたら
「あの、梅佳代さんちの」なわけですし。
梅:
うん、そうだよね。
いつも見てくれてる人なら、わかるね。
──:
「あー、あの道端でウ◯コしてた」と。
梅:
たぶん『男子』以外には、
ぜんぶの写真集に出てくるしね。リョウ。
──:
その「超プライベートな感じ」が、
大きな魅力なんでしょうね、梅佳代さんの。
梅:
リョウが写っとるのは、
ほとんど実家から200メートル圏内だから。
──:
だって、犬の写真集をつくろうと思ったら、
ふつうは、
こういう写真は選ばれないじゃないですか。
梅:
あー、そうやろね。

梅佳代『白い犬』(新潮社刊)より

──:
こういう作品が
当たりまえのように混じってくるところが、
素晴らしいところだと思います。
梅:
しかも、たぶんこの写真、
もしうちのばあちゃんとかが生きとったら、
「いい刺身やぞ、これ」とか言うと思う。
──:
見てるところが、そっち(笑)。
梅:
だって『じいちゃんさま』のときだって、
50歳以上の人たちは、
実家の家のつくりとか床柱のこととか、
「あれ1枚の板で何たらかんたら」
って、めっちゃ言ってて、
大人って見てるとこすごいなって思った。
──:
目のつけどころが。
梅:
ちがう、ちがう。

若い人よりいろんなものを見てきたから、
「今どきあんな仏壇はない」とか。
──:
でも、ぼくも、
梅佳代さんちに行ったことはないけど、
庭に石、たくさんありますよね?
梅:
あるある(笑)。
──:
そのこと、写真集を見て知ってるんです。

で、梅佳代さんちに、
自分の実家を見ているような感じもして。
梅:
へえ。
──:
だから、超絶プライベートなんだけど、
同時に懐かしさを感じるんです。

あらゆる人の実家かもしれない、梅家は。
梅:
ええー、そうなんだ。

たしかに、庭に石めっちゃあるんだよ。
じいちゃんが集めてきたやつ。
──:
あ、あれはじいちゃんさまの置き土産。
梅:
うん。
──:
あと、梅佳代さんちを見てると、
『ちびまる子ちゃん』一家のことも、
ちょっと、思い出すんですよね。
梅:
あー。家族構成、似とるしね。
──:
これまでの梅佳代さんの写真集には、
おなじみのキャラが
何人も登場してくるじゃないですか。
梅:
うん。
──:
ハンサムなバーニング・パパがいて、
すごいゲップのママがいて、
じいちゃんさまがいて、
リョウに噛まれたばあちゃんがいて、
妹さんがいて、
ガタイのいい野球部の弟さんもいて。

で、リョウもいて。
梅:
うちのパパは、
「柳田村の郷ひろみ」っていう設定で、
ずっと生きてきたらしいよ。
──:
梅佳代さんちって、わたしの実家であり、
あなたの実家でもあり、
同時に
ちびまる子ちゃんちでもあったのか‥‥。
梅:
いま、なぜか、すっごい思い出した。
我が家の「ティモテ事件」。
──:
また、ものすごい折りかたしますね。
サバ折り。話の腰を。
梅:
子どものころさ、テレビのコマーシャルで、
ティモテのやつ流行ったでしょ。

♪ティモテ、ティモテ‥‥っていう。
──:
長いブロンドの髪の外国人女性が、
草原みたいなところで
「ティモテ」というシャンプーを使って
髪の毛を洗ってるCMですね。
梅:
あれ、お風呂のたびにやってて、
それを妹のハルカも憧れてたんやけど、
わたし6個も上だから、
妹にとって最大のカリスマやったから、
「ハルカはダメ!」って。
──:
ティモテ禁止?
梅:
あと、いったん洋服のなかに
髪の毛を入れておいて、
両手でファサーっとやって出すやつ、
あれも「ハルカはダメ!」って禁止したら、
わたしの見てないとき、
鏡の前でコッソリやっとったらしい。
──:
もう、あらゆる人の実家の話っぽい(笑)。
梅:
あとあと、じいちゃんを
ハルカとふたりで面倒みる日があって。
もう、死にかけのときに。
──:
ええ。
梅:
じいちゃんが、トイレに行きたいってなって、
妹とふたりで連れてって、
どっちがズボンおろすかでモメとって、
結局、妹がズボンおろした瞬間に
「じいちゃんのタクワンやー!」って言って、
ふたりで大爆笑したの憶えてる。
──:
このようにして、ぼくたち読者は、
梅佳代さん一家にまつわるいろいろについて、
詳しくなっていくんですね。
梅:
もう、さいあくやろ?
──:
なんだか、永遠に続くホームドラマを
見ているような気分になります。
梅:
うんうん。その感じはあるね。
──:
みんなが主人公で、
同時にみんなが、いい脇役っていうか。

リョウもふくめて。
梅:
うん。でも、もう、おらんくなったけどね。
じいちゃんも、ばあちゃんも‥‥リョウも。
──:
はい。リョウがいなくなったのは‥‥。
梅:
おととしの、2015年の暮れです。
ある朝にいなくなって、それっきりです。

<つづきます>

2017-01-26-THU
取材協力:ダンデライオンチョコレート

写真集『白い犬』、発売中。
写真展「白い犬」も開催中。

梅佳代ファンならきっとご存知、
これまでの梅佳代さんの写真集のなかに
ちょくちょく登場する
梅家の愛犬・リョウが本になりました!

タイトルはズバリの『白い犬』です。
表紙からして、もう「いい!」です。
すでに全国書店等で絶賛発売中です。

Amazonでのお求めは、こちらからどうぞ。

で、この本の発売を記念して、
現在、南青山の「TOBICHI②」では
写真展を開催しています。
会期は、2月5日(日)までです。
梅佳代さんの過去の著作をズラリならべる
特設ショップもオープンしてます。
ぜひぜひ、みんなで見に来てくださいね!

開催概要

梅佳代さん写真展@TOBICHI② 白い犬。

会期:
2017年1月20日(金)~2月5日(日)
時間:
11時~19時 ※会期中無休、1月22日(日)は17時クローズ
会場:
南青山 TOBICHI②
住所:
東京都港区南青山4­28­26
MAP:
https://www.1101.com/tobichi/access.html
入場料:
無料

関連コンテンツ

ほぼ日刊イトイ新聞をフォローする