アシスタントの方々が
一緒に暮らしてるっていう生活は、
結構長く続いてたんですか?
はい。月に6日間ぐらいなんですけれども、
いつでも誰が入ってもいいように
しておくっていうのって結構‥‥。
大変なことですよね。
恥ずかしいものは見られたくないし。
結局、空間にいる、いないっていうのは、
やっぱり心の写しだから、
「どうぞ」って言った分だけは、
入ってきますよね。
で、それ許してますよね。
私、実家が人をまったく呼ばない家だったので、
人を呼ぶ流儀がまずわからなくて。
最初アシさんに慣らしてもらったんだと思うんです。
否応無しにみんな来るので。
なるほど、なるほど。
で、結構平気なものだなって思って。
それでもう今は、
「みんな来ればいい」ってできるようになった。
でも、みんなをいっぱい呼んだ日に限って
お料理を失敗するんです、私。
自己流だから(笑)?
はい。お正月、メインを失敗しまして、今年。
メインはなんですか?
豚の角煮だったんです。
おお。
今まで20回ぐらい作って
全部失敗してきたのに、
なんで今年もやろうとしたんだろう。
今年こそ! と思ったら、やっぱりまた。
----- 3巻、3巻です。
そうだ。『LIFE』の3巻、
角煮が載ってます。
あ、ありますか?
あります。
ネットで検索したら、
お鍋じゃ無理だっていうことが
書かれていたんです。
そんなことはないよね。
無理じゃないです。
ずっと豚を煮てたはずなのに、
できあがったのがビーフジャーキーで。
えっ(笑)。
途中で、いつ豚から
牛に変わってたんだろうって。
何か錬金術が。
魔法をかけちゃって。
まぁ違うおいしさじゃないですか?
はい、一応違うおいしさですよ。
ビールのおつまみに
噛んでるのはいいかなみたいな。
でもなんかこう夢見る
トロッとしたっていうのにならなくて。
私、情けない話、お正月が終わった後、
どうして失敗しちゃうんだろうと思って、
泣いてたんです、ずっと。
今年もみんなを招いたのに、
メインがなくなって。
そうしたら、哀れに思った友達が
圧力鍋持って遊びにきてくれて。
「お肉買いに行こう。
 これでやれば失敗しないから」って。
で、「料理の本のとおり作ろう」って言われて、
「あ、そういえば糸井さんも
 『LIFE』でおっしゃってた」って。
あはは(笑)。
それで、圧力鍋の本見ながら友達と2人で
同じに作ったら、
25分間でちゃんと柔らかいのができた。
おかしいなぁって思って。
おかしいですよねぇ。何が違うんですかね。
圧力鍋は使ったことなかったんです。
面倒くさくはないですか、圧力鍋って?
怖かったんです。
シューシューいうしね。
ご家庭に圧力があるなんて! っていう。
でも友達が、シューシューいってるうちは
大丈夫だよって言ってくれて。
安全弁があるからね。
なぜか、ぼくは、
何度も圧力鍋を買ってるんだけど‥‥
何度も?
使うに至ったことないんですよ。
私も買ったんですけど、
その後、使ってないです(笑)。
圧力鍋の人はみんな、
「圧力鍋にすれば簡単」って言いますよね。
言います。
その圧力に負けて買うんですよね(笑)。
そんな圧力鍋だったんですね(笑)。
一度だけ買っただけですか?
一度です、私まだ。
ぼくは何度も買ってるんですよ。
それどこへ行っちゃったんですか?
お家? あげちゃう?
たぶん妻が
ブラックホールを持ってるんですよ。
かみさんのブラックホールっていうのは
もう得体の知れないもので。
じゃあ、どこかに?
いろんなものが通路を伝わって、
サーッと暗い川の向こうに
行ってるんだと思うんです。
(つづきます)
2011-04-05-TUE





美大を舞台にした『ハチミツとクローバー』でデビュー。
高校生棋士を主人公にした長編第2作
『3月のライオン』で「マンガ大賞2011」を受賞。
同作は現在も白泉社「ヤングアニマル」誌で連載中。