名前、性別、年齢もわからない2匹のねことの、出会いから別れまでの5月間をつづった連載「2匹のねこがやってきて、去ってった。 〜牛と海苔の思い出〜」から、半年。去ってった2匹は、ほんとうの飼い主さんと暮らしている。その後、あらたに別のねこがやってきた。さらに、ひょんなことから、牛がすぐに帰ってきた。2匹との生活が、またはじまった。いつまでここにいるんだろう。だれにも、わからない。期間限定、毎日更新で「文と写真・ゆーないと」でお届けします。
第0回

わたしは2011年、ふしぎな縁で、
名前も知らない、性別も年齢もよくわからない、
わかっているのは出身地のみ。
という2匹のねこを、預かっていた。
動物愛護団体のお手伝いで、
「預かりボランティア」というもの。
2匹が来るすこし前まで、
わたしは別のねこを預かっていた。
はじめていっしょに生活した、
へんなねこ「へんちゃん」。
わたしに、ねこのおもしろさを教えてくれた、ねこ。
里親が見つかるまでの期間、
預かってお世話をするのが、わたしの役目。
ボランティアというか、ただただ、たのしんでいた。

いろんなひとに、へんちゃんのことを自慢していると、
ひとり、完全に恋に落ちてしまったひとがいた。
へんちゃんを飼うために家を探し出した、友人。
「里親が見つかった」というよろこびと、
自分のもとからいなくなってしまうという、さみしさ。
とても複雑な気持ちだった。
それが預かりボランティアの宿命なのだ。
わたしにとっては、
へんちゃんがしあわせになることが、一番の願い。

ちゃんと、へんちゃんはしあわせになった。
ねこを飼ったことがない彼は、
本などを見て、ねこについて、日々勉強していた。

そして、彼が里親になってから、11か月目のその日。
へんちゃんは、お空にいった。
かなしいけれど、
そのまま、保健所で人生を終えるかもしれなかった
1匹のねこが、
とってもしあわせな、第二の猫生を送ることができた。

最後の顔は、ほんとうに眠っているみたいに安らかで、
その顔を見て、わたしはうれしくなった。
冷たくなったへんちゃんを見て、
うれしくなるのも、おかしいけれど、うれしかった。
動物愛護の活動は、そういう、
かなしみと、よろこびが
つねにとなりあわせで、命の仕事なんだと、肌で感じた。
しあわせになって、よかったね、へんちゃん。

その日は、東京に雪が積もった。一晩中、降り続けた。



(つづく)

2012-04-28-SAT
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2匹のねこがやってきて、去ってった。牛と海苔の思い出〜

名前、性別、年齢もわからない2匹のねことの、
出会いから別れまでの5か月間をつづった連載です。

『犬と猫と人間のはなし。』
『ランコントレ・ミグノン』 『ARK(アニマルフュージ関西)』 『ぼーっとしたミーハー通信』
ほぼ日が取り組んでいる、犬と猫関連のコンテンツです。 ペットサロンのお店をしながら、動物愛護活動をしているミグノンさんのサイトです。
わたしたちの「親分」。
牛と海苔も、ミグノンさんから預かったものです。
「ほぼ日手帳2011」でコラボレーションした、ペットグッズショップのジョージを通して、売上の一部を寄付させていただきました。 ゆーないとが「ほぼ日」創刊からいちども休まずに毎週連載している連載。
牛と海苔はもちろん、いままで預かった猫のことや、なんでもない日常のことを週に1回書いています。

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