2匹のねこがやってきて、去ってった。〜ミッツと牛との日々〜
第10回

ミッツのことは何も気にせずに、
牛はいたってマイペースにしていた。
病気は、よくなったり、悪くなったりしていたけれど、
最近は、わりと問題もなく、過ごしているように見える。

注目を浴びたいときに、浴びて。


好きなときに、好きなだけ毛づくろいをして。

▲へんな格好。

そういえば、牛は、
ほんとうの飼い主・Hさんが飼う前は、
野良ねこだった、と聞いていた。
さぞ人間になついて、
エサをもらって暮らしていたのだろう。

ほんとうの飼い主・Hさんにもう一度聞いてみたところ、
なんとちがった。
「あ、牛はね、玄関に置いてあったのよー。やぁねー」
Hさんは、近所でも有名なねこおばさんだった。
近所のひとたちが、勝手に来て、
勝手にねこを置いていくことが、たびたびあった。
牛も、そんなふうに、生まれたてとかではなく、
大人になってから、捨てられたということだ。
知らなかった。

それを聞くとまた、牛の見え方が変わってくる。

ちょっと色っぽいポーズをとってみたり。


人間のじゃまをしたり。


きみも、いろいろあったんだね。
いまは、ここ東京にいるし。
猫生、なにがあるか、わからない。
とにかく、牛が元気で、しあわせでいてくれることが、
わたしはいちばん、うれしいな。

(つづく)

2012-05-08-TUE
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