糸井 |
近ごろは歌う歌がなくなっちゃったかも、
ということが、
このところのぼくのテーマとして、あります。
歌は好きなのに、なにを歌っても、
昔の歌ばっかりになっちゃって。
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前川 |
ええ、なりますね。
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糸井 |
新しい歌もいいんです。だけど、
「歌いたいな」と思うんじゃなくて、
聴くほうになっちゃう。
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前川 |
はい、はいはいはい。
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糸井 |
昔は、難しくても、わかんなくても、
我慢してでも、英語の歌でも
歌ってたのに、
知らないうちに
耳で追っかけるのがやっと、みたいな
歌ばかりになっちゃった。
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前川 |
‥‥そうですよねぇ。
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糸井 |
ひとりになったときに、
洗いものしながらふと歌うとか、
風呂入りながら歌う。
あれ、みんなは、やってるんだろうか。
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前川 |
うーん‥‥。
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糸井 |
そう考えると、なんとなく、ですが、
若い子は、やってなさそうに思えるんですよ。
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前川 |
やってないでしょうね、たぶん。
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糸井 |
そんなことを考えつつ、
ぼくは自分のiPodに、
いっぱい歌を入れて聴いてました。
次から次、いろんな歌が流れるんですが、
突然「クール・ファイブ」が、
耳に響いて響いて
しょうがなくなったんです。
こんなによかったのか、改めてそう思いました。
例えば、旅行のとき、新幹線の中で
イヤフォンで聴いたりするわけですけど、
なんだか、どこかへ連れてかれちゃうような
思いがしました。
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前川 |
はぁあー、そうですか。
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糸井 |
ふと、
「長い間会ってないけど、
前川さん、どうしてるのかなぁ」
と思ってね。
もちろん、テレビでお姿は拝見してましたが、
どんな気持ちで、どんなふうに
生きてるんだろう、
ということが気になりはじめました。
それから、まわりのみんなに
「前川さんの歌、聞いてみて」
とすすめました。そしたら、
「いいですね」とか、
「演歌というくくりで考えてたけど、
演歌とは言えないかもしれないですね」
とか言うやつが意外に多かったんです。
いろんなふうに、いろんなことを
みんなが言う。
「そんな話してたら歌いたくなっちゃった」
と言い出す。
もっとたくさんの人が
そんなことを思ったりする時代が
もういちど来ないかねぇ、
という話をしてたんです。
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前川 |
なるほど。
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糸井 |
それで、前川さんのことを調べて
コンサートがあることがわかり、
自分でチケット申し込んで
ファミリーマートに取りに行って、
1月15日、中野サンプラザに行きました。
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前川 |
それで、中野サンプラザに
いらっしゃったんですか。
チケット、ひとこと言っていただければ‥‥
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一同 |
(笑)
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前川 |
いや、だけどあのとき、
びっくりしましたよ。
糸井さん突然来るから。
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糸井 |
こっそり行ってこっそり帰ろうと思ってたら、
「前川がちょっと」
と、呼び止められました。
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前川 |
いやいや、そんな。
糸井さんが来られてるって聞いて、
「なんで? なんで糸井さん来たの?」
と、ぼくはすっごいうれしくなって感激して、
うちの事務所のスタッフも
「まさか」って言ってました。
だいたい、歌い手同士というのは
お互いああいったショーには、
あんまり行き来しないんですよ。
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糸井 |
そうなんですか。
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前川 |
ぼくも、例えば「何十周年」とかで
人を呼んだりするの、嫌いなんです。
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糸井 |
へぇえ(笑)。
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前川 |
というのは、ぼくが誘われたとき
行くのが嫌なんですよ。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
めんどくさいんですね。
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前川 |
「いやぁ、おめでとう」
って言いながらも、
心の中では「休みたかったなぁ」(笑)。
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一同 |
(笑)
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前川 |
逆に考えると、
「ぼくの場合も
そう思われるんじゃないかな」
と思います。
だから、そういったものはもう、
ほんとうにナシでいいんじゃないかと
ぼくは思っちゃうんです。
だけど糸井さんは
自分でチケット買って来てくれた。
ほんとにうれしくて、
久しぶりに、これは
自分のよろこびでした。
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糸井 |
数十年ぶり、でしたよね。
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前川 |
数十年ぶりです。 |
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(つづきます) |