ほぼ日 |
さて、先生は「ファックス入稿」という
稀に見る入稿スタイルでも有名です。 |
ラヂヲ |
いや、ファックスで入稿してるのは
もう『ファミ通』だけですけど。 |
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カタダ |
四コマの『徐々にポイマン』ですね。 |
ラヂヲ |
あとはもう、メールでデータ入稿してますから。 |
ほぼ日 |
いや‥‥先生、
『ファミ通』ではまだファックス入稿している
ということ自体、すごいと思うのですが。 |
ラヂヲ |
いや、以前『ファミ通』にも
データで入稿したことがあるんですけど、
読者が離れそうになって。 |
ほぼ日 |
へぇ! なんかちがうぞと? |
ラヂヲ |
なんか前のほうが良かったぞと。
その声を受けまして、
ファックス入稿に戻したという
経緯があります。編集長判断で。 |
ほぼ日 |
よくわかりましたねぇ、その人‥‥。 |
ラヂヲ |
何かがちがったんでしょうね。 |
ほぼ日 |
そもそも、
なぜ「ファックス入稿」という手段を? |
ラヂヲ |
まだ駆け出しのころ、
『rockin' on』で仕事をもらったんだけど、
ファックスで
ちょっと、やりとりをしたんですよ。
そのとき、当時の増井(修)編集長が
「ファックスでも
本物の原稿でも変わんないな」と。
「ファックスでいいや」と。 |
ほぼ日 |
またしても「編集長判断」ですか‥‥。 |
ラヂヲ |
はい。 |
ほぼ日 |
それだけの決断だとも言えますね(笑)。 |
ラヂヲ |
でもさ、たしかにファックスでも
そんなに変わんないんですよ。 |
ほぼ日 |
ははー‥‥。締切に間に合わなくて
やむを得ずとった非常手段が常態化したのではと
勝手に予想していたのですが‥‥。 |
ラヂヲ |
ちがうんです。 |
ほぼ日 |
それじゃ、入稿のナゾが明らかになったところで、
こんどは先生の「作品」について、
じょじょに、お伺いさせていただきたいのですが。 |
ラヂヲ |
ようやくマンガの話や。 |
ほぼ日 |
今日は、個人的にいちばん好きな
『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』の1・2巻を
持ってきたんです。 |
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ラヂヲ |
ああ、はいはい、あったねぇ。 |
ほぼ日 |
先生独特のシュールなタッチのマンガと
オチの部分で
尾崎放哉の「咳をしても一人」で有名な
「自由律俳句」を組み合わせた、
日本ギャグ漫画界の大傑作ではないかと。 |
ラヂヲ |
少し大げさじゃないか。 |
ほぼ日 |
この作品のおもしろいところは、
ラヂヲ先生ご本人の句だけじゃなくて、
読者投稿の句や、
尾崎放哉作の自由律俳句も
作品化しているところだと思うんです。 |
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■入れものがない 両手で受ける ‥‥放哉
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p30より |
カタダ |
放哉の句には意欲的に取り組んでますよね。
この本では。 |
ほぼ日 |
そのせいもあるのか、次の作品なんかは、
「咳をしても一人」に
かなり、通ずるものがあると思うんです。 |
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■今日中にハワイ ‥‥ラヂヲ
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p68より |
カタダ |
ああ、流れるものは、似ていますね。
「咳をしても一人」と
「今日中にハワイ」は。 |
ラヂヲ |
そ、そうかな。 |
ほぼ日 |
次の2作品をあわせて味わってみると、
放哉の
「咳をしても一人」
「墓地からもどつて来ても一人」の2句が
思い出されるほどです。 |
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■バイトを辞めた ‥‥ラヂヲ
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p133より
■三日で辞めた ‥‥ラヂヲ
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p126より |
ほぼ日 |
あと、個人的にすごく好きなのが‥‥。 |
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■とても気持ちの良い取り引きができました
(サイズもぴったりです) ‥‥ラヂヲ
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p61より |
カタダ |
いくら「自由律」とはいえ‥‥。 |
ほぼ日 |
特に「サイズもぴったりです」の部分とか
もはや俳句と言っていいのか(笑)。 |
ラヂヲ |
ネットオークションの決まり文句だよね。
俳句じゃなくて。 |
ほぼ日 |
あはははは、まさにそうです(笑)。 |
ラヂヲ |
でもこれ、今もう1回描き直したら
おもしろいかもしれないなぁ。 |
ほぼ日 |
絵を描き直す? |
ラヂヲ |
もうちょっとシュールに。 |
ほぼ日 |
もうちょっとシュールに? |
ラヂヲ |
うん。 |
ほぼ日 |
このタッチですと、
先生的にはシュールじゃないんですか? |
ラヂヲ |
これはシュールじゃないね。 |
ほぼ日 |
じゃあ、何ですか? |
ラヂヲ |
これは‥‥。 |
ほぼ日 |
すこーし劇画っぽいんですかね‥‥?
写実、でもないですしね。 |
ラヂヲ |
これは‥‥ちょっと「乱暴」ですね。 |
ほぼ日 |
わはははは、「乱暴」ですか!
タッチの種別じゃないし(笑)。 |
ラヂヲ |
トーンも使ってないしな。乱暴や。 |
ほぼ日 |
なるほど、わかりました(笑)。
あと、この本には、もうひとつ疑問があって、
トビラに出てくるこの人。 |
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和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』
第2巻 扉ページより |
ラヂヲ |
ああ、それ、担当。集英社の。
バーバラっていうんだけど。 |
ほぼ日 |
へぇー‥‥バーバラさん。
この本の担当編集者の人ですか。 |
ラヂヲ |
そう。 |
ほぼ日 |
なんというか、いいお写真ですよね。
背景といい、髪型といい、服装といい‥‥。 |
ラヂヲ |
わざわざパーマあてたんですよ。
この人、この撮影のためだけに。 |
ほぼ日 |
え。 |
ラヂヲ |
人生初パーマだったらしいよね。 |
カタダ |
初パーマがこのパーマですか。 |
ラヂヲ |
新宿あたりの写真館で撮ったらしい。 |
ほぼ日 |
あはははは、写真館(笑)。
凝ってますものね、なにか表現が。 |
ラヂヲ |
こういうテイストの写真って、
最近じゃあんまり撮ることないもんだから、
ノリノリだったらしい。写真館の人。 |
カタダ |
ウデの見せどころが来たと(笑)。 |
ラヂヲ |
そう、キャリアがちがうぞと。 |
ほぼ日 |
でも、何の説明もないから
この人が「和田ラヂヲ」なんじゃないかと
かんちがいする人も
いるんじゃないかと思うんですが。 |
ラヂヲ |
言っとくけど、この表紙の人もオレじゃないから。 |
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和田ラヂヲ『和田ラヂヲの新世界』 |
ほぼ日 |
そうそう! ぼくもはじめ、ラヂヲ先生って
意外に若くて男前なんだなぁって思ってました(笑)。 |
カタダ |
ずいぶん作品のイメージと違うなと(笑)。 |
ラヂヲ |
この本、鈴木成一さんに装丁してもらったんだけど、
「和田君の本にぴったりの写真があった」と。
元々は、写真家・安村崇氏の作品なんだけどね。 |
ほぼ日 |
へぇー‥‥撮り下ろしたわけじゃなくて、
こういう人を
こういうふうに撮った写真があったんですか。 |
ラヂヲ |
そう。 |
ほぼ日 |
たしかに、ぴったりですよね。先生に。
はぁー、さすが鈴木成一さんですね!
さて、今回のまとめに入りますと‥‥。 |
ラヂヲ |
まとめるんですか。こんな話を。 |
ほぼ日 |
なぜ先生は「ファックス入稿」しているのか。
それは作風的に
「ファックスでも支障なかった」だけでなく‥‥。 |
カタダ |
うん、うん。 |
ほぼ日 |
「ファックスのほうが良かった」からでもある、と。 |
ラヂヲ |
そうですね。
少なくとも『ファミ通』の場合には。 |
ほぼ日 |
先生が松山に住んでいるため、
「ああ、遠いから
ファックス入稿なんでしょ?」などと
ヘンな誤解をしてしまいがちですが、
それは、ちがうわけですね。 |
ラヂヲ |
ええ、ちがいます。 |
ほぼ日 |
東京に住んでても、ファックスであると。 |
ラヂヲ |
そうでしょうね。
少なくとも『ファミ通』の場合には。 |
そもそもの質問その3に対するアンサー
作風的に「ファックス入稿でも支障がない」だけでなく、
そっちのほうがいいと言われた。『ファミ通』読者に。 |