そもそもの質問 その3
なぜファックスで入稿しているのか。
ほぼ日 さて、先生は「ファックス入稿」という
稀に見る入稿スタイルでも有名です。
ラヂヲ いや、ファックスで入稿してるのは
もう『ファミ通』だけですけど。
 
カタダ 四コマの『徐々にポイマン』ですね。
ラヂヲ あとはもう、メールでデータ入稿してますから。
ほぼ日 いや‥‥先生、
『ファミ通』ではまだファックス入稿している
ということ自体、すごいと思うのですが。
ラヂヲ いや、以前『ファミ通』にも
データで入稿したことがあるんですけど、
読者が離れそうになって。
ほぼ日 へぇ! なんかちがうぞと?
ラヂヲ なんか前のほうが良かったぞと。

その声を受けまして、
ファックス入稿に戻したという
経緯があります。編集長判断で。
ほぼ日 よくわかりましたねぇ、その人‥‥。
ラヂヲ 何かがちがったんでしょうね。
ほぼ日 そもそも、
なぜ「ファックス入稿」という手段を?
ラヂヲ まだ駆け出しのころ、
『rockin' on』で仕事をもらったんだけど、
ファックスで
ちょっと、やりとりをしたんですよ。

そのとき、当時の増井(修)編集長が
「ファックスでも
 本物の原稿でも変わんないな」
と。
「ファックスでいいや」と。
ほぼ日 またしても「編集長判断」ですか‥‥。
ラヂヲ はい。
ほぼ日 それだけの決断だとも言えますね(笑)。
ラヂヲ でもさ、たしかにファックスでも
そんなに変わんないんですよ。
ほぼ日 ははー‥‥。締切に間に合わなくて
やむを得ずとった非常手段が常態化したのではと
勝手に予想していたのですが‥‥。
ラヂヲ ちがうんです。
ほぼ日 それじゃ、入稿のナゾが明らかになったところで、
こんどは先生の「作品」について、
じょじょに、お伺いさせていただきたいのですが。
ラヂヲ ようやくマンガの話や。
ほぼ日 今日は、個人的にいちばん好きな
『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』の1・2巻を
持ってきたんです。
 
ラヂヲ ああ、はいはい、あったねぇ。
ほぼ日 先生独特のシュールなタッチのマンガと
オチの部分で
尾崎放哉「咳をしても一人」で有名な
「自由律俳句」を組み合わせた、
日本ギャグ漫画界の大傑作ではないかと。
ラヂヲ 少し大げさじゃないか。
ほぼ日 この作品のおもしろいところは、
ラヂヲ先生ご本人の句だけじゃなくて、
読者投稿の句や、
尾崎放哉作の自由律俳句も
作品化しているところだと思うんです。
  ■入れものがない 両手で受ける ‥‥放哉


和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p30より
カタダ 放哉の句には意欲的に取り組んでますよね。
この本では。
ほぼ日 そのせいもあるのか、次の作品なんかは、
「咳をしても一人」に
かなり、通ずるものがあると思うんです。
  ■今日中にハワイ ‥‥ラヂヲ


和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p68より
カタダ ああ、流れるものは、似ていますね。

「咳をしても一人」と
「今日中にハワイ」は。
ラヂヲ そ、そうかな。
ほぼ日 次の2作品をあわせて味わってみると、
放哉の
「咳をしても一人」
「墓地からもどつて来ても一人」の2句が
思い出されるほどです。
  ■バイトを辞めた ‥‥ラヂヲ


和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p133より

■三日で辞めた ‥‥ラヂヲ


和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p126より
ほぼ日 あと、個人的にすごく好きなのが‥‥。
  ■とても気持ちの良い取り引きができました
 (サイズもぴったりです) ‥‥ラヂヲ


和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』第2巻 p61より
カタダ いくら「自由律」とはいえ‥‥。
ほぼ日 特に「サイズもぴったりです」の部分とか
もはや俳句と言っていいのか(笑)。
ラヂヲ ネットオークションの決まり文句だよね。
俳句じゃなくて。
ほぼ日 あはははは、まさにそうです(笑)。
ラヂヲ でもこれ、今もう1回描き直したら
おもしろいかもしれないなぁ。
ほぼ日 絵を描き直す?
ラヂヲ もうちょっとシュールに。
ほぼ日 もうちょっとシュールに?
ラヂヲ うん。
ほぼ日 このタッチですと、
先生的にはシュールじゃないんですか?
ラヂヲ これはシュールじゃないね。
ほぼ日 じゃあ、何ですか?
ラヂヲ これは‥‥。
ほぼ日 すこーし劇画っぽいんですかね‥‥?
写実、でもないですしね。
ラヂヲ これは‥‥ちょっと「乱暴」ですね。
ほぼ日 わはははは、「乱暴」ですか!
タッチの種別じゃないし(笑)。
ラヂヲ トーンも使ってないしな。乱暴や。
ほぼ日 なるほど、わかりました(笑)。

あと、この本には、もうひとつ疑問があって、
トビラに出てくるこの人。
 
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの嫁に来ないか?』
第2巻 扉ページより
ラヂヲ ああ、それ、担当。集英社の。
バーバラっていうんだけど。
ほぼ日 へぇー‥‥バーバラさん。
この本の担当編集者の人ですか。
ラヂヲ そう。
ほぼ日 なんというか、いいお写真ですよね。
背景といい、髪型といい、服装といい‥‥。
ラヂヲ わざわざパーマあてたんですよ。
この人、この撮影のためだけに。
ほぼ日 え。
ラヂヲ 人生初パーマだったらしいよね。
カタダ 初パーマがこのパーマですか。
ラヂヲ 新宿あたりの写真館で撮ったらしい。
ほぼ日 あはははは、写真館(笑)。
凝ってますものね、なにか表現が。
ラヂヲ こういうテイストの写真って、
最近じゃあんまり撮ることないもんだから、
ノリノリだったらしい。写真館の人。
カタダ ウデの見せどころが来たと(笑)。
ラヂヲ そう、キャリアがちがうぞと。
ほぼ日 でも、何の説明もないから
この人が「和田ラヂヲ」なんじゃないかと
かんちがいする人も
いるんじゃないかと思うんですが。
ラヂヲ 言っとくけど、この表紙の人もオレじゃないから。
 
和田ラヂヲ『和田ラヂヲの新世界』
ほぼ日 そうそう! ぼくもはじめ、ラヂヲ先生って
意外に若くて男前なんだなぁって思ってました(笑)。
カタダ ずいぶん作品のイメージと違うなと(笑)。
ラヂヲ この本、鈴木成一さんに装丁してもらったんだけど、
「和田君の本にぴったりの写真があった」と。

元々は、写真家・安村崇氏の作品なんだけどね。
ほぼ日 へぇー‥‥撮り下ろしたわけじゃなくて、
こういう人を
こういうふうに撮った写真があったんですか。
ラヂヲ そう。
ほぼ日 たしかに、ぴったりですよね。先生に。
はぁー、さすが鈴木成一さんですね!

さて、今回のまとめに入りますと‥‥。
ラヂヲ まとめるんですか。こんな話を。
ほぼ日 なぜ先生は「ファックス入稿」しているのか。
それは作風的に
「ファックスでも支障なかった」だけでなく‥‥。
カタダ うん、うん。
ほぼ日 「ファックスのほうが良かった」からでもある、と。
ラヂヲ そうですね。
少なくとも『ファミ通』の場合には。
ほぼ日 先生が松山に住んでいるため、
「ああ、遠いから
 ファックス入稿なんでしょ?」などと
ヘンな誤解をしてしまいがちですが、
それは、ちがうわけですね。
ラヂヲ ええ、ちがいます。
ほぼ日 東京に住んでても、ファックスであると。
ラヂヲ そうでしょうね。
少なくとも『ファミ通』の場合には。
そもそもの質問その3に対するアンサー
作風的に「ファックス入稿でも支障がない」だけでなく、
そっちのほうがいいと言われた。『ファミ通』読者に。




坊っちゃん列車
 
車掌 間もなく発車いたしまーす。
ほぼ日 これが、明治時代に松山市民の足として活躍し、
2001年に復元した「坊っちゃん列車」ですか。
ラヂヲ そうです。
 
ほぼ日 手もとの資料によると、煙突から出る「煙」まで
「蒸気」を用いて再現しているとか‥‥。
ラヂヲ そのとおりです。
ほぼ日 たまたま出発するところだったんで
飛び乗ってしまいましたが‥‥ワクワクしますね!
車掌 しゅっぱぁつ、しんこーう。
カタダ お、出発ですな。
車掌 本日は坊っちゃん列車にご乗車くださいまして、
まことにありがとうございます。

わたくしども伊予鉄道は‥‥。
ほぼ日 坊っちゃん列車について、説明してくれるんですね。
カタダ 松山の街並を見物しながら。
 
車掌 ‥‥この「坊っちゃん列車」の愛称は
夏目漱石の小説『坊っちゃん』のなかで、
乗車した感想を、
「乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ、
 ゴロゴロと5分ばかり動いたと思ったら
 もう降りなければならない」
と紹介されたことから
坊っちゃん列車と呼ばれるようになりました‥‥。
ほぼ日 へぇ〜‥‥、そうなんだ。
カタダ へぇ〜‥‥あ。カニ道楽。
 
ラヂヲ 動かないけどね。カニが。
カタダ ホントだ。
大阪のとちがって、動きませんね。
ラヂヲ うん。エコだから。エコガニ
ほぼ日 あはははは、エコなカニ道楽ですか(笑)。
ラヂヲ エコガニ
カタダ 2回言った(笑)。
車掌 ‥‥それでは、
本日は、短い時間ではございますが、
明治時代にタイムスリップした気分を
味わってください。失礼しまーす。
カタダ あ、またシュールな看板があるなぁ。
 
ラヂヲ タイムスリップした気分になるよね。
ほぼ日 なんの‥‥テニスの風景ですかね?
何かの広告にしても、何も書いてない。
ラヂヲ むかしからあるんだけど、
何を伝えたいのか。むやみにデカイし。
カタダ 先生のお仕事ですか?
ラヂヲ カタダくん。
カタダ はい。
ラヂヲ そんなわけないだろう。
車掌 次は終点、道後温泉に到着いたしまーす。
ほぼ日 あ、着いた。
ラヂヲ 着いたね。道後温泉。
坊っちゃん列車



運賃 大人300円 小人200円(1乗車)
   ※道後温泉・大街道・松山市駅・JR松山駅前・古町の
    各電停から乗車可能 
   http://www.iyotetsu.co.jp/botchan/index.html

2009-03-19-THU