みんなの好奇心で、ふくらむ地球儀。 みんなの好奇心で、ふくらむ地球儀。
ほぼ日のアースボールのためのコンテンツを
共同開発してくださっている
首都大学東京の渡邉英徳准教授と
研究室のみなさんをお迎えし、お話しました。
この、かるくてやわらかい空気のボールが、
どんなふうにおもしろくて、
どんなふうに「ふくらんで」いきそうか、
わくわくしながら話しました。
舞台は地球、コンテンツは無限大の可能性。
でも、無責任な夢物語じゃなくって、
実現していく「手足」のついた、
とても具体的な「企画会議」にもなりました。
ほぼ日のアースボールって
わたしたちの好奇心があるかぎり、
どんどん、ふくらんでいく地球儀なんです!

渡邉英徳(わたなべ・ひでのり)

首都大学東京大学院システムデザイン研究科准教授。
情報デザイン、ネットワークデザインを研究。
ハーバード大学
エドウィン・O・ライシャワー日本研究所客員研究員、
京都大学地域研究統合情報センター客員准教授、
早稲田大学文学学術院非常勤講師などを歴任。
東京理科大学理工学部建築学科卒業(卒業設計賞受賞)、
筑波大学大学院
システム情報工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。

これまでに
「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」
「東日本大震災アーカイブ」
「沖縄戦デジタルアーカイブ~戦世からぬ伝言~」
「忘れない:震災犠牲者の行動記録」などを制作。

講談社現代新書『データを紡いで社会につなぐ』
などを執筆。
「日本賞」、グッドデザイン賞、アルスエレクトロニカ、
文化庁メディア芸術祭などで受賞・入選。
岩手日報社との共同研究成果は日本新聞協会賞を受賞。

首都大学東京 渡邊研究室のみなさん

渡邉英徳准教授、高田百合奈さん(特任助教)、

田村賢哉さん(リサーチアシスタント・博士後期課程3年)、

山浦徹也さん(博士前期課程1年)、

福井裕晋さん(博士前期課程1年)、渡邉康太さん(学部4年)

第8回
もうひとつの地球の可能性。
ほぼ日
はじめて地球が丸いことに気づいたのは、
2500年以上前の
ギリシアの哲学者、科学者ですけど、
実際に、人類が「地球は丸い」ことを
自分たちの目で確かめたのは、
とても最近‥‥つまり、
人類が宇宙に飛んでいったときで‥‥。
糸井
「ほんとだ!」(笑)
ほぼ日
そこで「丸かった!」とわかったわけで、
コロンブスの船でも、
海の端っこは滝になっていて危ないから
乗組員が、これ以上進むなと
暴動を起こしそうになったって話があって、
そのリアリティを考えると、
ギリシア時代の哲学者って凄いですよね。
糸井
本当だよね。
ほぼ日
ほんのすこし海が丸く歪んで見えたとか、
月に地球の影が映ったみたいなことから、
「地球は平らじゃない、丸い!」
ということに、気づいたわけですものね。
糸井
1日や2日で考えたわけじゃないからね。
その感覚は、おもしろいよね。

今の時代、何でもかんでも
1日や2日で解決しようとするじゃない。
渡邉
そんなにさっさとわからなくても、ってこと、
たくさん、ありますよね‥‥。

ぼく自身も、学生にメッセージを送って、
1時間くらい返信ないと、
なんだか、イライラしはじめたり‥‥(笑)。
糸井
すぐにコツを聞きたがる風潮もありますよね。
渡邉
そう、どうすればうまくいきますか、って。

そういう意味でも、ゾウさんは、いいですよ。
すぐにパッと答えを示さずに、
いちおう地球儀上を探さなきゃいけないので。
糸井
そうですね、「どこだ、どこだ‥‥あ、いた」
みたいな楽しみがありますよね。
渡邉
その「手間」が、愛おしいなあと思います。

地球の裏側のようすは、
実際に裏側に回ってみないとわかりません、
ということが、当たり前に示されていて。
早野
今は検索したらすぐに出るのが当然だけど。
糸井
それだとちょっと、おもしろくないんです。
早野
あの、ひとつ、渡邉先生の肩書には
「情報アーキテクト」と書かれてますけど、
アーキテクトって、建築家ですよね。

渡邉先生と建築のあいだには、
どういった関係性が、あるんですか?
渡邉
はい、わりとシンプルに説明できるんですが、
入試科目に
物理学とデッサン両方あるのが建築学科で、
つまり、建築という分野は、
地震が起きても
崩れない建物にしなきゃいけない部分と、
表現として人々の心に届ける部分、
その両面をカバーしていると言いますか。
早野
なるほど、だから建築学科なんですね。
渡邉
ええ、じつはぼく、
建築学科で卒業設計賞を獲ったりしていて、
去年、亡くなった恩師にも
「どうしておまえは、
 建築家にならなかったんだ」って(笑)。
早野
で、どうしてならなかったんですか?(笑)
渡邉
はい、学生時代、
じょじょに「仮想空間」が現れてきたんですが、
そこにも、
建築家という職能が求められる時代が来ると、
考えたんです。

大学院のときに
「プレイステーション」の3D空間で
「建築デザインできる人求む」
といったような求人が出ていたのを見て、
まわりが建築事務所に就職する中、
「俺、ソニーに行くわ」
と言って、ひょいと入っちゃったところから
戻ってこれなくなった感じです(笑)。
糸井
なるほど(笑)。
渡邉
そう考えていただくと「ヒロシマ・アーカイブ」や
アースボールのコンテンツを、
なぜテレビゲームっぽい感覚でつくっているのかが、
わかると思うんですが、
その裏側にあるのは、あくまで「建築」なんです。
早野
それで、頭に「情報」をつけて、情報アーキテクト。
糸井
今、渡邉先生が主にやってることっていうのは、
ジャンルで言うと、どういう‥‥。
渡邉
そうですね、たとえば一般的な建築家が
実際の住宅で
新たな住まい方を世に問いかけているようなことを、
情報空間でやっていると
思っていただけると、うれしいなと思います。
糸井
じゃ、渡邉先生みたいな「アーキテクト」って、
誰の影響を受けやすいですか。
渡邉
SF作家ですね。
糸井
はぁー‥‥!
渡邉
小松左京さん、大好きですし。
早野
おもしろい(笑)。
渡邉
ぼくがSF作家が好きなのは、
いわゆる「テクノロジーの用語」を使って、
あり得たかもしれない
「もうひとつの世界」を描いてくれるところ。

その世界が、今の世界を照らし返してくれる。
すぐれた建築も、きっとそうなんです。
糸井
なるほど。
渡邉
今回「ほぼ日のアースボール」のために
開発した
「でこぼこした地球」や、
「昼と夜の移り変わり」のコンテンツは、
そんなふうに説明できますし。
糸井
うん、うん。
渡邉
だから「Google Earth」が登場したときに
「あ、これ最高!」と思ったのも
同じような理由で、「まるでSFやん」と。
糸井
ああ、そうでしたよね。
渡邉
で、このアースボールが
早野先生のお導きで目の前に現れたときにも、
「やった! またちがうのが来た!」
早野
そうですか(笑)。
糸井
そう言ってもらえるのは、誇りです。
渡邉
うれしかったですね。

だって、
まったく新しい地球を描けるフィールドが、
突然、目の前にあらわれたわけですから。
(つづきます)
2018-03-15-THU