第11回
テレビドラマで役がついたきっかけ。
テレビドラマで役がついたきっかけ。
糸井 |
石坂さんが、 大学時代の最後の年に出演した 『太閤記(一九六五年のNHK大河ドラマ)』は、 石田三成の役だったと思うけど、 それ、急な展開ですね。 |
石坂 |
テレビに出るようになった元々はというと…… まずは『黒蜥蜴』という 劇の通行人をやったんです。 学生演劇に衣装を借りたお礼として その演劇に、出ることになった。 そこに出演していたのが、 芥川比呂志さん、水谷八重子さん、 田宮二郎さん、大空真弓さん…… ぼくはそこでピストルを構えている 刑事役をやったんです。 とにかく遠くであんまり見えない役だから、 ただ揃って立っていれば いいだけの役だったんですけど……。 そこにプロデューサーの石井ふく子さんが 大空真弓さんのところに、 毎日のように通いに来ていたんです。 「あの芝居はこういうふうにしたほうがいいよ」 というようなことを言いにきていた。 ぼくがうろうろしていたら、 石井さんと話す機会がありまして。 「あなた、劇研だったら、 ちゃんとテレビなんか出たくないの?」 もうすでにテレビで 通行人やってたんですけど、それは言わずに、 「出たいですよ、それは!」 「セリフのある役、やってみたくないの?」 「やってみたいですよ、それは!」 そういう軽い話をした後、電話がかかってきた。 「ちょっと、TBSに来ない?」と。 「実は『七人の刑事』の中に出てくる役で、 母親が犯人なんだけど 息子がずっと疑われて 追っかけられているという…… その息子を探してんだ。自信ある?」 ディレクターに、そう言われれば、 それは「はい、自信あります」と言うよね(笑)。 最初から最後まで、 画面に出っ放しで追いかけられる役を、 そこではじめてすることになったんです。 台本ができた時に呼ばれてね。 ディレクターからは みんなが集まって稽古をやる前に ふたりきりで 「違う! もうちょっと、こう言えないか?」 なんてダメ出しを受けて…… すごい熱心さですよね。 今はそういうディレクターは、 なかなかいないから。 |
糸井 |
しかも、まだ、生意気盛りの石坂さんですよね? |
石坂 |
うん。 こっちはもう 演技がうまいと思ってやってるからね。 向こうはそう見えないらしくて(笑)。 食い違いがあるわけだ。 だから練習を先にやってくれたんです。 |
糸井 |
それはディレクターの すごい優しさというか、 新しい血を入れるための 投資みたいなものなんですね。 |
石坂 |
うん、みんな、 最初はそうだったんだろうと思います。 放送後「よかったよ!」と言われて、 すぐに次の仕事をTBSからもらえまして。 それから三本、四本と出て…… それからいよいよ「石坂浩二」という 芸名がつくことになるのが、『潮騒』でした。 |
糸井 |
焚火を飛びこえる? |
石坂 |
あれも生放送でした。 いろんな人がやっているドラマだけど、 『潮騒』を生放送でやった人なんていうのは、 私しかいませんよ。 泳ぐところはフィルムで、 その間に急いで着替えていまして。 |
2015-05-05-TUE
タイトル
テレビという神の幼年期。
対談者名 石坂浩二、糸井重里
対談収録日 2004年12月
テレビという神の幼年期。
対談者名 石坂浩二、糸井重里
対談収録日 2004年12月
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