前回載せましたが、もう一回載せます。
男子、こう変わりました。変わっちゃいました。
★廣瀬
★武井
★西本
★田路
なにこの自信にあふれた感じ。
それぞれが試着室から出てくると拍手がおき
(すみません、うるさかったですね)、
「ズボン、インにしてみなよ!」
「ネクタイも合わせてみたら」
「ベルトもほしくなっちゃうよね」
など、男子にはあるまじき「きゃきゃあ」状態。
ちなみにこれ、
すべて伊勢丹新宿店メンズ館の1階での出来事です。
じつはぼくら、
「全フロアの白いシャツを見て、
いっぱい着て、選ぼう!」
と意気込んでいたのですよ。
しょうじき1Fはビジネスっぽいし、
ぼくらふだんカジュアルだし、
「ほぼ日」でとりあげるのもビジネスシャツというより
カジュアルでも着られるものがいいだろうしと、
さらっと済ませて、
2階から上の階でゆっくり探すんだろうな、
くらいに思っていました。
だから1階はノーマークだったのです。
ところが、バイヤーの佐藤巧さんが
「まずは、こちらで」と、1階で、
それぞれに選んでくれたシャツが、
いきなり「ぴったり」だったのです。
そもそも、紳士物のシャツというのは、
もとは「フルオーダー」の世界です。
生地とサイズだけでなく、
襟、袖、こまかい部分を「お好みで」指定して、
つくりあげていく世界。
もちろんいまでもオーダーシャツの世界は
きちんとあるわけですけれど、
ぼくら「白シャツ初心者」にはちょっと敷居が高い。
このあとじつはオーダーのフロアも
見せてもらったのですが、生地の種類、
襟のかたちだけでものすごくいっぱいあって、
クラクラしちゃいました。
佐藤さんによれば、「パターンオーダー」といって、
あるていどのパターンのなかから選び、
組み合わせることで自分ごのみの一着をつくる、
そんな方法もあるといいます。
さらに、基本的に完成品のシャツを
襟まわりの大きさと袖の長さで選び、
微調整(お直し、ですね)をする方法もあります。
もちろん「直さずにそのまま着る」こともできます。
ぼくらが選んだのは、最後の
「完成品のシャツを直してもらう」という方法です。
それがいいと思った理由は、ただひとつ。
「詳しくないから」。
そりゃそうです。いきなりフルオーダーや
パターンオーダーは失敗しそう。
失敗しないまでも、それを今後「ほぼ日」で
商品化していくのはかなりむずかしいことです。
それに、佐藤さんによれば、
この「完成品」も、ただ買い付けてきたわけではなく、
生地、縫製、サイズ、デザインを徹底的に考えて、
日本のお客さん向けに調整をしているとのこと。
つまり「しっかり考えられている」ところに、
ぼくらは乗っからせてもらおうと考えたのでした。
佐藤さんに訊きました。
たとえば襟の形にもトレンドというか、
「いまはこれ」というものがあるんですか、と。
「ありますね。いまはカッタウェイ、
cut awayといって、ワイドカラーのなかでも
ぐっと横に開かれたものが主流です。
なぜかというと、いま、みなさんのように
ネクタイを締めないかたがふえているんです。
すると、襟先の羽が横に開いているカッタウェイは、
鎖骨のところでうまく留まってくれるものですから、
襟の開きがひじょうに美しく見えるんです」
おお!うつくしい。という言葉を、
紳士物のフロアで耳にするのはとても新鮮です。
ちなみにこの日、佐藤さんが着ていたのも
カッタウェイです。
かっこいいなあ、そんなふうになるんだ。
「こういう説明をしますと、みなさん、
じゃあノータイの時の襟なんですね、
なんておっしゃるんですが、
もちろんネクタイを締めても格好いいですよ」
じゃあ「ちゃんとした場」でもOKですね。
「最近は、こういったシャツを、
私服の延長線上で身に着けるケースが
多いものでして。
もちろん正統派のビジネススタイルを守るのも
私どもの役割なんですけれども、
比較的そういうカジュアルに振れた新しいシャツを
今、作ろうとしている、という流れですね。
ですからちょっとクシュッと、
わざと洗いをかけたようなものもあったりするんです」
そんな説明をうけているうちに、この「カッタウェイ」が
着てみたくなりました。
「カッタウェイですと、
ちょっとカジュアルにという傾向で着るときは、
少し素材もスポーティな印象がいいんですね。
そうした時に、ツイルとかヘリンボーンって、
けっこうフォーマルな印象になりますから、
オックスフォードでしたり、
ロイヤルオックスフォードと言われる、
ちょっと平織りの粗い感じの素材のほうが
カジュアルな印象を受けます。
組織の凹凸感があるので、肌にまとわりつかず、
夏にも快適に着ていただけるかなと。
パッと見で受ける印象は、白無地でしかないんですが」
いや、ちがいって、あんがい、わかるものです。
たしかにツイルやヘリンボーンなどの
つるりとした印象のものは、ビジネス寄り。
ぼくらにはちょっと合わないかもしれません。
そんななか、これはいいなあというシャツがありました。
これ、どちらのものですか。
フロアの女性スタイリストさんが
説明をしてくれました。
「これはイタリアのナポリにあります
バルバというブランドで、
イタリアではひじょうに昔からの名門で知られています。
他のものに比べて、細身のお作りになっております。
シルエットはひじょうにきれいに映ります」
そのかたち、肌触りに
ぽーっとしてしまったのが西本でした。
「ぼ、僕、悩みがありまして!手が短いんです。
だから、なんだかアンバランスになっちゃうんです。
そんなぼくでも似合いますか?」
ああ、もう着る気だ。ていうか買う気だ。
「もちろんですよ。袖はもともと長めのお作りに
なっているんですね。調節できますよ」
「そうですか!あの、基本的なことを訊きますが、
これはパンツにインするものなんですか」
そうでした。ぼくら、社風でもありませんが、
「シャツの裾は外に出す」ことが多いです。
なんででしょうね、すっかりそういうふうになじんでいる。
でもこの「バルバ」をはじめ、
見ているシャツは裾が長めで、外に出したらちょっと
妙なバランスになりそうです。
「そうですね、ドレスシャツのお作りなので、
インするようになっています。
ボレッリやフィナモレというシャツもありますが、
お客さまにはバルバのほうが
サイズ感的にはいいと思います。
このバルバ、ボレッリ、フィナモレというのが
1階でひじょうに人気がある三大ブランドです。
着心地を試していただくと、また全然違いますよ。
お客様によっては、バルバを着ていたかたが、
少しふっくらなさったのでボレッリに切り替えるとか、
そういう形で皆さんたのしまれているんです」
そうそう、サイズ感!
じつは佐藤さんに事前に聞いていたのです。
身体にフィットするシャツが、格好いいですよ、と。
イタリアの、一般的なおじさんって、
でっぷり太っているのに、ぴったりしたシャツを
着ている、という印象がありませんか。
ぼくらの感覚からすると(ぼくもそうですが)
太った人って、「たっぷり」のシャツを着たがる。
身体のラインが出るのがはずかしいんですね。
でもイタリア人やフランス人の着方って、
太っててぴったりでも、格好いいんです。
「それは、身体に合った裁断、
縫製がなされているからなんですよ。
だから動きに無理がなく、
とても自然に見えるんです」
「着ます!着させてください!」
そう言って西本が試着室に消え、
すぐに出てきました。
「これ、すげえ!
なにがすごいって、
おれの腕が短く見えません!」
おおー!たしかに!
そして、フィットしているけどぴちぴちじゃない。
同行の女性たちも驚いています。
「すごいちゃんとした人に見える!」
「シャツ一枚でこんなに印象って変わるの?」
もういちど載せましょう、着用前・着用後の写真です。
★西本
「これください!袖は直してください。
あと、合うネクタイもみつくろってください!」
え、ネクタイまで?
ちなみに佐藤さんの見立てで、とてもシンプルだけれど
ひじょうにうつくしい紺色のネクタイを、
西本は買いました。
あの、佐藤さん、西本くんの「腕の長さ」と同様、
ぼくには「なで肩」という悩みがあるんですが、
それ、どうにかなるものでしょうか‥‥。