このBASE6を作るプロジェクトには、 ぼくはそんなに関与しませんでした。 立ちあげに関わったメンバーと、最初のところで 「どんなふうにしようか?」という話だけをしました。 ヤフーのような会社は、 インターネットを使って、 仕事のやりとりがどんどんできつつあります。 「もう、家でもできるじゃん」 「会社になんて、行かなくていいじゃん」 という感覚は、けっこうあります。 そんなふうに、行くところまで行っちゃうと、 ぼくらは、どうやったら社員の人がよろこんで 会社に来てくれるだろうかと考えます。 会社に来る理由を考えると‥‥まさにその、 「毛」なんですよ。 人がふらっと来て、毛を感じて、去っていく(笑)。 そういうものが会社の中にないとダメなんです。 BASE6を立ち上げる初期の打ち合せでも、 毛という言葉は使いませんでしたが(笑)、 「有機的な場にしてほしい」と伝えました。 |
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とてもいいことですね。 そういう場所がないと、会社は 深刻な問題をかかえるような気がします。 実は学校が、とっくにそうなってるんじゃないかな。 つまり、「休んでもいいじゃん」というふうに すぐになります。 |
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なりますよね。 授業だって、よその予備校に行けばいいわけだから。 |
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効率よく何かを学ぶだけだったら、 インターネットですぐにでも 有名な大学教授の講義が受けられるわけです。 そうすると、学校に行く理由は よくわからなくなります。 |
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そうですよね。 |
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ぼくには、とてもできのいい娘がひとりいまして。 勉強がまったくできないのに、 学校を休みたくない子だったんです。 その理由はおもに、給食だったりします。 熱がある日に 「休めばいいじゃないか」 と声をかけても 「今日は焼きそばが出る」 と言って登校していました。 |
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それはきっと、いい学校ですね。 |
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はい、いい学校です。 会社もおなじ。そういう要素があります。 みえみえの「役に立つやつ」じゃないところから 出てくるものが ものすごく重要だったりしますし。 |
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それはほんとうにそう思います。 漫画の『SLAM DUNK』でも メガネのプレイヤーが出てくるんですが、 バスケットの選手としてはたいしたことなくても 「彼がいてこそのチームだ」という描き方をします。 ああいう人は、ひとたび能力評価をすれば、 辛い点数がついたりします。 でもみんなが 「いないとまとまんねぇな」と思う人だったら、 ぜったいにその組織には大事な存在です。 ぼくとしては、そういう人の居場所を 作りたいと思っています。 |
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これまで何度か書いたことがある話なんですけども、 スチャダラパーが、もうずいぶん前に発表した 「彼方からの手紙」という曲があります。 その歌が描いているのは、 みんなで旅に出て、川をたどって 源泉はどこにあるんだろう、なんて言って、 歩きまわっているシチュエーションです。 こういうのはとってもいいね、だけど、 ああ、ここにおまえがいたらな、って思う。 そんなふうに 「ここにおまえがいたらいいな」と思われる人同士が 人と人との組み合わせとして いいなと思います。 |
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たぶん、「なんとなく一緒にいたい」とか、 そういうことなんですよね。 ただ仕事をやるために 会社に来るというのとは、ちょっと違う。 ネットが充実して 「家でもできる」ということになると、 なぜ六本木まで満員電車に揺られて 会社に来なければいけないのか、わかりません。 1時間かけて電車で来ると、 夏だとヘトヘトになるわけです。 |
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そうでしょうね。 |
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朝10時に出社して、汗が引くのに30分くらいかかる。 メールをチェックして、返信して、 もうヘトヘトです、みたいな感じがある。 会社がもしも、つるつるした場所だったら 仕事は家でもできるかもしれません。 どうして会社に来るのかといえば、 やっぱり毛のある、 いっしょにいたい仲間がいるからです。 または、会社じたいに毛が生えているからでしょう。 |
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もう、会社は毛がないとダメだな(笑)。 この社員食堂は地下だから、 「地下にある毛」ですね。 だってまず、社員食堂に起伏があるのがおもしろい。 目を閉じて歩いたら、つまずくし、転びます。 一瞬むだとも思えるべき場所に階段があるし、 山みたいになってて、 全体的に平らなところや直線が少ない。 壁面も、これは毛ですね。緑の毛だ(笑)。 |
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起伏や曲線というのは、 会社はもちろん、都会にも少ない線です。 田舎や、自然の中に行くとあります。 だから、曲線を見るために ぼくらはわざわざ休暇を取ったりするわけですね。 |
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自然が持っている偶然性のような情報に、 もともと人間はさらされていたわけです。 ところがこうして 整理された空間にいつもいることになった。 やっぱり、どこかが 退化していくような気がします。 |
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そういう意味もあって、ぼくらはいま 会社をオフィス(OFFICE)とベース(BASE)に 分ける実験をやろうとしています。 オフィスは、糸井さんのおっしゃる 「つるつる」の場。 それはそれで大切な場だと思います。 そことは別にベースを作ります。 |
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自宅だと、それぞれが自分の感覚に合わせて 「毛」の場所を作ってるはずなんです。 だとしたら、会社もそのほうがいいですよね。 ぴかぴかのエレベーターから ぴかぴかの受付を通って、というのだと、 息がつまります。 昭和の時代だと、ちょっと違ったぜいたくさに みんなの気分が傾いていたような気がするんですけど、 いまは時代がよくなったのかな? |
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そうかもしれませんね。 全体がフラットになったし、 カジュアルな人間関係が圧倒的に多い。 スペースについても、 カジュアルな空間のほうが居心地がいい感じがします。 |
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2014-03-26-WED |