- ──
- 今、こちらには何名くらいの‥‥。
- スタッフの方
- 全体で90名弱でしょうか。
この部屋の人たちは、
おもに絵を描いているんですけど、
ここへ来て、はじめて
ペンを握った人がほとんどで。
- ──
- えっ、絵のうまい人たちが、
集まってきたんじゃないんですか。
- スタッフの方
- 美術の専門教育を受けている方は、
ほとんどいません。
スタッフの中にも、美術を学んだ人や、
アートが好きだった人はいないんです。
- ──
- そうなんですか。
- スタッフの方
- こちらの竹口和(やわら)さんも、
敷地内にあるカフェで、
接客をされていたかたなんです。
- ──
- へぇ‥‥。
- スタッフの方
- 和さんが描いているのは
お父さんやお母さんなど大好きな人。
余白というか隙間の部分を、
お花とかドーナッツ、花火なんかで
埋め尽くしておられます。
- ──
- うわ‥‥なんだか、すごい。
宇宙の終わりか、はじまりみたい。
- スタッフの方
- 次のかたは、
KATSUさんとおっしゃいまして。
- ──
- あ、映画で拝見しました。
- スタッフの方
- そうですね、出演されています。
KATSUさんは、絵画と立体作品を
同時にすすめていますが、
絵の場合は、油性ペンを使って、
建物をどんどん描いていくんです。
- ──
- ものすごく細かい‥‥建物だ。
- スタッフの方
- ファッションデザイナーの丸山昌彦さんの
洋服のデザインに使用されていて、
毎年パリで発表されたあと、
世界14か国で販売もされているんです。
- ──
- はー、すごい。
- スタッフの方
- 田村拓也さんは、たいへん几帳面な性格で。
- ──
- ええ。
- スタッフの方
- 毎日毎日、
同じ時間、同じ場所、同じリズムで、
このような絵を描かれています。
- ──
- おおー‥‥。
- スタッフの方
- そして、お次が、井上優さんです。
今年8月で76歳になられます。
じつは、井上さんも、70歳まで
カフェでお仕事をしておられまして、
そろそろ立ち仕事もしんどいし、
体に無理なく、
ゆっくり過ごされたらどうだろうと。
- ──
- ええ。
- スタッフの方
- そしたらまわりの影響を受けたのか、
いつの間にか絵を描くように。
- ──
- じゃ、絵をはじめてまだ6年?
- スタッフの方
- そうですね。
- ──
- 70歳からはじめたんですか‥‥。
- スタッフの方
- 6年間で井上さん、いま何枚め?
- 井上
- 117枚め。
- ──
- ものすごく濃い‥‥鉛筆ですか?
- スタッフの方
- はい、10Bの鉛筆をお使いです。
- ──
- 紙のサイズも大きいですけど、
どれくらいで描き上がるんですか?
- スタッフの方
- はい、絵の細かさにもよりますが、
だいたい1枚につき
午前中1時間、午後2時間取り組まれて、
10日間ほどでしょうか。
10本くらいの鉛筆を使い切ります。
- ──
- 10日で、10Bの鉛筆、10本を。
- スタッフの方
- 続きまして、川邊紘子さんです。
難聴のため、以前から
「自分の気持ちを伝える方法」として、
言葉でなく、
絵で表現して伝えていたんだそうです。
- ──
- おなか痛いよとか、そういうことを?
- スタッフの方
- そうですね、そのような訴えを、
ご家族や、
まわりの人たちに絵で伝えていました。
最近では
人の身体しか描かない時期があったり、
足しか描かない時期があったり、
川邊さんのなかでもブームがあって、
たとえば、このような作品を。
- ──
- みなさん、本当に十人十色ですね。
誰も、誰にも似てないです。
- スタッフの方
- あちらにいらっしゃる三井啓吾さんが、
やまなみ工房で創作がはじまる、
そのきっかけをつくってくれたんです。
三井さんの作品は、
3000枚を超えていると言われてます。
- ──
- 3000!
- スタッフの方
- クレヨンや絵の具を
いちどにぜんぶ使い切ってしまうほど
塗り込むので、
1枚1枚の作品がすごく重たいんです。
- ──
- 3000枚って‥‥、
描きはじめて、どれくらいなんですか。
- スタッフの方
- 30年くらいでしょうか。
- ──
- 30年で、3000枚。
- スタッフの方
- 寝るのも食べるのも忘れて
描くことに没頭されるときもあれば、
2年間くらい、
何も描かなくなった時期もありました。
- ──
- 2年も、1枚も? へええ。
- スタッフの方
- そして、こちらが山際正己さん。
- ──
- ああ、あの、お地蔵さんのかた。
映画で見ました!
- スタッフの方
- はい、そうです。こちらが正己地蔵。
このお部屋、
みなさん給食を食べに食堂へ行くと、
誰もいなくなるんですけど、
毎日、そのわずかな時間のあいだに、
ひとりでお部屋にやってきて、
制作されているんです。
- ──
- つくるのはその時間だけなんですか。
- スタッフの方
- はい、誰もいなくなった静寂の中で、
大きな声で自分を褒めたり、
ひとりで、鼻歌を歌ったりしながら。
- ──
- ものすごい数があるみたいですけど、
いったい、何体くらい‥‥。
- スタッフの方
- 施設長の山下が言うには、
およそ30年で、
5万体はつくってると。
- ──
- 1日数十分だけの時間で、
5万体もつくっているんですか?
- スタッフの方
- 30年、されてますので。
でもこの正己地蔵、大人気でして、
ほとんど在庫がないんです。
- ──
- 売れてるってことですか。
- スタッフの方
- 売れてます。各地の展覧会などに
出展させていただく機会も多くて。
- ──
- こういうタイプも、いるんですね。
- スタッフの方
- ああ、この手を上に挙げているのは、
正己さんが
「人形いっぱいできた、
バンザーイ、バンザーイ」
って言ってつくるバンザイ人形です。
- ──
- たしかに、バンザイしてる。
- スタッフの方
- 京都動物園に行った次の日につくった
ゴリラだそうです、こちら。
- ──
- 目がつぶら!
- スタッフの方
- こんなゴリラはいなかったんですけど、
正己さんにはこう見えてるんだって。
- ──
- めっちゃかわいいです。
- スタッフの方
- 映画でもインタビューを受けていた
森雅樹さんは、美術がお好きで、
若いころに専門学校に通い、
専門知識を学んでおられたそうです。
音楽にも造詣が深くて、
毎日、音楽を聴きながら得た
インスピレーションによって、
創作されています。
- ──
- おお、たしかに、
どこかリズムや旋律を感じる絵です。
たとえば、どんな音楽ですか。
- 森
- 個人的に好きなのは、
ポストモダン、現代音楽が多いです。
サイケデリックロックとか。
具体的には灰野敬二さんや、
裸のラリーズなんかを聴いています。
- ──
- 海外の展覧会にも出展されてますね。
- スタッフの方
- はい。
フランスのアル・サン・ピエール美術館や
スイスのアールブリュットコレクションに
展示されていた作品が、
間もなく日本に帰ってくる予定です。
- ──
- すごーい。
- スタッフの方
- そして、こちらが鎌江一美さんの作品。
彼女は施設長の山下のことが大好きで
作品のタイトルには、
必ず、山下の名前である
「完和(まさと)さん」がついてます。
- ──
- たとえば‥‥。
- スタッフの方
- 遊園地に行っているまさとさん、とか。
- ──
- ちっちゃなツブツブを、
たくさん表面に並べる作風なんですね。
- スタッフの方
- はい、今から10年くらい前、
山下のことを好きになられたときに、
山下の髪を表現するために、
ツブツブをつけはじめたみたいです。
- ──
- 施設長、モテモテじゃないですか。
- スタッフの方
- 最後にこちらが「目、目、鼻、口」の
吉川秀昭さんです。
秀さん、こんにちは。いま何してます?
- 吉川
- 目、目、鼻、口。
- ──
- はい、吉川さんも映画で拝見しました。
このもよう‥‥というか無数の点々が、
「目、目、鼻、口」なんですよね。
- スタッフの方
- はい、つまり「人の顔」なんですね。
まずは、ピアノ線で
粘土の塊を削いで形をつくって、
そこに割り箸で
「右目、左目、鼻、口」‥‥と、
何人もの人の顔を描いていかれます。
- ──
- この柱状のオブジェの表面の、
こまかい線のようにも見える点々が、
何百人もの人の顔‥‥ですか。
- スタッフの方
- 吉川さんも、これをやり続けて30年。
紙に描いた作品もあるんです。
- ──
- うわー‥‥これまた細かいです。
何百人いるんだろう‥‥何千人?
- 吉川
- 目、目、鼻、口‥‥。
<つづきます>
2019-07-11-THU
やまなみ工房のアーティストの作品を、
TOBICHI2に展示します!
山下完和(まさと)施設長はじめ
やまなみ工房のみなさんが、
滋賀から車で運んできてくださいます。
やまなみ工房まで行かずとも、
直に作品を鑑賞できる貴重な機会です。
また会期中は連日、
19時30分~20時30分のスケジュールで
『地蔵とリビドー』を上映します。
会場はTOBICHI2で、料金は1000円。
料金の中に山際正己さんの作品
「正己地蔵」代が含まれていますので、
当日ご観覧くださったかたは、
お好きな「正己地蔵」をお持ち帰りいただけます!
今後、東京近郊での上映は未定なので、
どうぞ、おみのがしなく。
ぜひ、展示作品を鑑賞したあとに、
ドキュメンタリーを観て帰ってください。
初日18日(木)の上映終了後には
山下施設長と
映画を撮った笠谷圭見さんの
アフタートークを開催(30分の予定)。
詳しいことは、
こちらの特設ページでご確認ください。
- 会期
- 7月18日(木)~28日(日)
- 時間
- 11時~19時 ※会期中無休
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 無料
- 会期
- 7月18日(木)~28日(日)
- 時間
- 19時30分~20時30分 ※1日1回上映
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 1000円(正己地蔵1体つき)
参加方法など詳しくは、こちらの特設ページで。
協力:RISSI INC
8月24日(土)~8月30日(金)
「地蔵とリビドー」上映
@京都シネマ:20時20分~
※初日のみ、笠谷監督・山下施設長の舞台挨拶あり
〒600-8411
京都府京都市下京区水銀屋町620
COCON KARASUMA3F
https://www.kyotocinema.jp
8月24日(金)25日(土)
DISTORTION3 2020SS
@しまだいギャラリー:11:00~19:00
〒604-0844
京都府京都市中京区 仲保利町191
http://shimadai-gallery.com
8月16日(金)~8月26日(月)
「いのちといのちーやまなみ工房のいとなみ」
川内倫子写真展
@アンテルーム京都:11時~21時
※17日(土)17時より18時30分まで
川内倫子と施設長・山下完和のトークショーあり
〒601-8044
京都府京都市南区東九条明田町7
https://hotel-anteroom.com/