矢野×糸井
第2回 香りと音楽は、近いかも。
糸井 アッコちゃんの名前、筆記体で書くと
ジャノアキコって見えるね。
矢野 やのだよー。
糸井 (笑)。
矢野 やな顕子でもいいよ。
「あのやきこ」って糸井さんが
一番最初につけたんだよ。
糸井 いや、アッコちゃんが最初にやったんじゃない?
自分で。手紙にひらがなで
「あのやきこ」って書いてあったよ。
矢野 書いてあった? そうだっけ。
糸井 YMOが所属していた会社が
「ヨロシタミュージック」っていう
名前だったりね、
あの時代、ああいうのが。
矢野 全然高尚なものじゃなくて、
高校生ののりだよね。
糸井 おならプーみたいに出てきた時代があったの。
矢野 うん。
糸井 ケーキ‥‥つきあいで、と称して、
ちょっとくらい食べようかな。
矢野 じゃあさ、食べるよ。わたし。
いただきまーす。
糸井 僕は、その薔薇の花みたいなやつを
食べてみようかな。
でもこれほんものの薔薇じゃないな。
ローズの香りっていうのは
ほんものだったらものすごく高いから、
使ってないと思うんだ。たぶん。
── ローズは高いんですか。
糸井 高いよ。ローズの香料は一番高いです。
── へえ! よくご存知(笑)!
糸井 俺はね!
── はい!
糸井 ローズが好きなの(笑)!
一同 (笑)!
── どういうことですか(笑)?
糸井 いや、あんまり言いたくないんだけど、
実は、ローズの香りがものすごい好きなの。
── ええ〜!
知らなかった!
糸井 恥ずかしいから、黙ってたんだけど(笑)。
ああー、言ってしまった。
一同 (笑)。
糸井 たまーに偽物でもかまわない時があって、
かみさんがローズのシャンプーとか、
「あんたが好きそうだから買っといたよ!」
── そんな言い方はしないでしょう(笑)。
糸井 いや、ちょっとそれに近いような。
「買っといたよ! わたしはいらないけど、
 そんなものは」って言う時がね(笑)。
俺はそれ、ちゃんと喜ぶの。
矢野 あのね、コム デ ギャルソンの、
いろんなシリーズで、ローズの香りの
ルームスプレーとかキャンドルとか出して、
結局全然売れなかったんだって。
糸井 はあ、はあ。
矢野 で、わたしの好きな「KYOTO」っていう
キャンドルだけ延々買い続けてるんですけど、
もう在庫なくなっちゃいそうなんだけど。
ある日、衝動買いでローズ、
赤い瓶のやつ買ったの。オーデコロン。
ローズ、嫌いじゃないんだけど、
やっぱりつけると、
相当キャラクターの強い匂いなんで。
糸井 そうなのよ(笑)。
矢野 すごい思い切りが必要だった。
糸井 なんか、大きな踊り踊ってるようなさ、
ローズって(笑)。
── 糸井さんからローズの香りしたことないですよ。
糸井 や、そんなことするわけないじゃない!
俺は受け取る側として好きなんで。
自分がローズの匂い発散したらおかしいじゃない。
── でも、好きだったら、ちょっと。
糸井 ローズが好きだからって
ローズの香りがする社長? いやだなあ。
── ちょっと嫌です。
糸井 よした方がいいんじゃないか?
今アッコちゃんが言った通り、大仰なんだよ。
香りが。だって、ある種香りって、
大きくとらえれば媚薬じゃないですか。
矢野 うん。
糸井 で、「いらっしゃーい」って、
俺は“言われたい”タイプなのよ。
だから、ちょっといいローズ系の香りが
枕とかにポトっと落としてあると、
ちょっといやらしい夢を見そうな。
矢野 うん。
糸井 そういうつもりじゃなかったのに、
柔らかい優しい気持ちになりたくてやったことが、
それ以上になってしまう、みたいな。
── 強いんですね。
糸井 うん。だから、しないですよ。
あんまりそういうことは。
コロンもものすごい持ってたよ。
一時。30種類くらい。悪かったな!
── 逆ギレしないでください。
糸井 ものすごい買ってたんですよ、一時。
で、ゲイのともだちができてから、学んだの。
よそうと、そういうことは。
矢野 男性から薔薇の香りがしたら
どっちかって言うとゲイかなって思っちゃう。
糸井 疑問を感じちゃうよね。
矢野 わたしが今すごく好きなのは、
セルジュ・ルタンスっていう、
フランスの調香師の。
(空間にむけてシュッシュッ!)
‥‥これどぅお?
糸井 失礼します(嗅ぐ)。
‥‥もう、好き!
これはね、昔からあるやつですよ。
矢野 好きでしょーう。クラシックな匂いなんだけど、
じつは新しいものなのよ。
わたし大好きなの。今。
セルジュ・ルタンスが作った中で、
もう、一目ぼれして、一嗅ぎぼれして、
原初的な匂いがね、ちゃんとベースに入ってて、
実にすばらしいと思うんですよね、これ!
糸井 や、わかる、わかる。
調香って、作曲に近いよね。
あのさ、いいハチミツに出会った時もさ、
おまえ、よくやったなって思うじゃない。
こいつちょっとあるね、それが。
矢野 そうなんですよ。
糸井 それは、どうやって出会うの?
お買い物に行って?
矢野 春とか秋には新しい香水っていっぱい出るでしょ?
そうする時に、大抵バーニーズとかから
カタログが来て、それでそれ見て、
なんとなく、勘で。
糸井 ジャケ買いだね。
矢野 そうそう。で、必ず行って、
この前カタログに載ってたあれ、
嗅がしてって言ってね。
  2006-11-27-MON

(明日に、つづきます!)
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