矢野×糸井
第7回 あら? それわたしの歌よ?
糸井 たまーに、何曲かは
アッコちゃんの曲が先にあって
それに歌詞をつけたっていうやつがあるんだよ。
「ただいま」っていう曲と
「春咲小紅」っていう曲は、曲先なんだよね。
どっちも「春咲小紅」になる可能性があったの。
確か。2つ曲があって、
矢野 そうだっけ。
糸井 うん。どっちかを
「春咲小紅」にするんだけど、
こっちですんじゃったんで、
もう一個余っちゃったんだよ。
それが「ただいま」のネタなのよ。
矢野 ふうーん。そう。
糸井 それがなくなっちゃったんで、
まったく違う詞をはめればもう一曲できる。
‥‥無駄にしないですよね(笑)。
── 詞が先行の時は、字数をそろえたりとか
そういうことはちゃんとしてるんですか。
糸井 してない。アッコちゃんが作るっていう
前提だから、してないなりに、
アッコちゃんは大丈夫っていう風には書いてる。
それでもダメだったら、
「ここ3文字足すね」
「どうぞ!」っていう。
矢野 そう。それ、全然オッケーなんですよ。
そうなると、できあがってからは、
誰がどこを書いたのかまったくわからない、
みたいな。
糸井 足すね、も、引くね、も、オッケー。
── あ、そうなんですか。へえ。
矢野 そういうのに慣れちゃうと、
ずいぶん前ですけど、
友部正人が詞を書いて、
それにわたしが曲をつけてっていう
試みがあったのよ。ライブでやるっていう。
糸井 うんうん。
矢野 でさ、詩人だからさ、長いんだ、とにかく!
ばーっと書いてくるのがさ。
糸井 (笑)。
矢野 できるところと、できないところがあって、
自分がほら、100%共感できない部分とかって
やっぱりこう、後回しにしたくなるじゃない?
糸井 うん。
矢野 とかしてるうちに、やっぱりここいらないかとか、
この語尾は、ちょっとなあとか、
どうしても余っちゃうなあとか。
でも、詩人にそういうこと
しちゃいけないっていうのが‥‥。
糸井 うん。
矢野 「ここの語尾と、この一行が
 入んなかったんですけど」って言ったら、
「うーん。でも、入れてもらえるかな」って。
糸井 ああー。
矢野 あ、そういうことしちゃいけないんだー、
って思って。
糸井 そりゃあ、両方難しいとこだよねぇ!
俺とアッコちゃんは、
二人のものとして最初から作れる
ケースなんですよ。
俺のものとして渡してるんじゃなくて、
二人のものとして作るから。
最初から譲る気満々で出してますから。
「出陣!」なんつって負け戦に行くみたいな。
それけっこう気持ちいいことですからね。
で、全然違うよ、なんてことがありえたら、
それはちょっと、へえ?
って思うじゃないですか。
たまに舞台で歌詞をね、間違う時があって、
それは違うだろって(笑)。
一同 (笑)。
糸井 慣れて歌ってるから、
ここのところでもう弾むように
明るくっていうところが、
悲しそうに歌われるケースだってあるんですよ。
それは、歌詞を間違えると
そうなっちゃうってところがあるんですよ。
けど、それは、もうその場のものだから(笑)。
矢野 そ。
糸井 2度とないから。
矢野 そ。もういいじゃない、過ぎたことはと(笑)。
糸井 サルだから(笑)。
── 覚えてないし、みたいな(笑)。
矢野 そう(笑)。
糸井 朝令暮改みたいな(笑)。
矢野 ひどいですよねぇ〜。でも、ね?
「ニットキャップマン」みたいなのだと、
順番まで勝手に変えるけどね。
糸井 ははははは!
矢野 いいじゃん、わたしはこうなんだから。
わたしの中ではこうだ!
糸井 (笑)!
── ムーンライダーズは、
あの曲はアッコちゃんに
もってかれちゃったねって(笑)。
糸井 おかしいよね〜。いや、慶一くんは、
自分でアッコちゃんを入れたんだよ。
レコーディングのときに
コーラスでアッコちゃんが来てくれるって
喜んでたんだよ(笑)。
それで、コーラス先に入れてもらったら、
全部連れ去られていた。
一同 (笑)!
矢野 あーら、ごめんなさいとか言ってね(笑)。
糸井 お手伝いさんが、
家を持ってっちゃったみたいな(笑)。
矢野 ね(笑)。
糸井 俺はそれ、両方おもしろいから。
ああいうケースは、やっぱり愉快だねぇ。
でも、みんな「ニットキャップマン」て
アッコちゃんの歌だと思ってるよね。
矢野 そう。
糸井 絶対思ってると思う(笑)。
── オリジナルはムーンライダーズです。
糸井 そういうのいっぱいあるよー(笑)。
矢野 んふふふ。
── 矢野さんが歌ってしまうと、その後、
元の歌歌えなくなるんですよ(笑)。
リズムとか言い回しとかが、
もう矢野節になっちゃって、
元どんな歌だっけ? みたいな(笑)。
矢野 そうなんだよねー。あるよねー。
糸井 「塀の上で」(はちみつぱい)とかね。
矢野 「中央線」(THE BOOM)とかね。
ごめん! って(笑)。
── 「すばらしい日々」(ユニコーン)。
矢野 それは、実によくあることで、
今もエルレガーデンていうね、
パンクのバンドの曲歌ってるんですけど、
初めて聞いた人が、すごくいい曲なんで、
オリジナルを探して聞いたら、
椅子から転げ落ちたって(笑)。
一同 (笑)。
2006-12-04-MON

(明日に、つづきます!)
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