矢野×糸井
第11回 もぎたてのキュウリは、
     うめぇぞ〜!
矢野 残念なのは、音楽を聴くのに、
製品としてあらかじめ作られたものが
最高のものだと思って満足してる人たちが
多いってこと。すごくすごく残念。
糸井 うん。
矢野 で、ほんとはそうじゃなくて、
ちゃんとおいしいもん食べればね、
例えばもぎたてのキュウリをね、
ほら食べてごらんって言って食べた時に、
「うわ、うっめー! これキュウリ?」
っていう人は、実は潜在的に
たっくさんいるわけじゃない?
糸井 うんうん。
矢野 そのキュウリがその人たちに届けられてない、
ってことが残念。たぶん、日本はけっこう、
キュウリの部分ではけっこう進んでるでしょ。
糸井 日本は、チャンスはいっぱいあるよ。
狭いからだと思うんだけどね。
つまり、会おうと思えば会える場所に
みんながいるでしょ。
だから、キュウリとわたしの間でも
会おうと思えば会えるじゃないですか。
この狭さっていうのは、
日本の文化を作ってる、と思いますよね。
矢野 あと、お取り寄せ文化っての。
糸井 あれ、道路網のおかげなんだよ。
山奥まで車が入れるようになったからなんですよ。
矢野 そうかー。ふうん。なるほど。
糸井 そうじゃなければ、
どっかに集荷しなきゃならなかったから。
全然話飛びすぎるけど、日本列島改造論の時に、
「こんなところに高速道路を作って」
って言ったのが、今生きてるんだよ。
矢野 よかったんだー。
糸井 アメリカ、本当に遠いとこに町作っていったから、
物理的に遠いんですよね(笑)。
あれのおかげで違う形態ですよね。
この狭さはね、なんかいいこともあると思う。
矢野 そうだねえー。
糸井 あの、改心した時に、
すぐに違う人生歩めると思うよ。
「今まで僕は、商品として完成してるものを
 ずっと食べてきましたけど、
 このキュウリがうまいってことがわかったんで、
 今日からこれにします!」
って言ったら生きられるもん。それで。
矢野 そうだね。
糸井 それすごいと思うなあ。
つくづくうまいとかさ、
つくづくかっこいいとかさ、
そのつくづく感みたいなのっていうのを、
どう味わってもらうかだろうね。
アッコちゃん、今度あれ行ったじゃないですか。
フジロック。ああいうのはいいと思うよ。
「えっ? 俺、嫌いだな」
って言う奴がいても。
矢野 この夏、3つの野外フェスティバルに
出たんですけど、
ほとんどの人は矢野顕子が初めて。
名前は「あきこ」って読むらしい、
っていうのはわかるくらいの人たちが
いっぱいいて、そういう人たちが見て、
すごく反応よかったのよ。
今回のフェスティバル、
どこでもそういう反応だったんですけども、
自然の状況とかね、それも相まって、
フジロックがすごくよかった。
糸井 そう!
矢野 フェスティバルに出ることを
いちばーん薦めてくれてたのがね、
くるりの岸田くんなんですよ。
「とにかくね、矢野さんをね、
 キッズに見せたい!」
それで、わたしは、最初トリオでね、
がんがん爆音でやりたいと思ってたんだけど、
「いや、絶対一人がいいです」って。
「一人でやれ!」ってすごい言われたんで、
じゃ、やろうかしらぁ? みたいにして。
糸井 それはよかったねー。いや、たぶん俺ね、
そういうようなことだと思うの。
矢野 うん。
糸井 つまり、山の民とね、海の民が、
それぞれの産物をね、持って(笑)、
矢野 そうそう(笑)。
糸井 きつねと一緒に出会うのよ。
そうすると、海彦山彦で、
「お、こういうものがあったですか〜」
これはじゃあ、海に持ってって、
海藻とあえて食べましょうみたいな(笑)?
矢野 フジロックの場合はね、
来る人がみんな犠牲をみんな、
喜んで払って来るわけ。そのために貯金し、
それでテントしょって。
わたし来年ね、自分が出演しなくても、
テントしょって行きたいとほんと思った。
糸井 俺も来年フジロック行こうかなって。
矢野 あ。よし! 行こう! 決まった、決まった!
そう! 行きましょう。絶対いいよ。絶対いい。
糸井 娘が今年行って、おかしいんだよ。
撮ってある写真がくだらないんだよ。
川で遊んでる人とかね。
このくだらなさなら行くわって思った。
矢野 うん!
糸井 あと、テントはってるのが坂の場所らしいね。
大変なんだって。転んで(笑)。
寝てる間にころころいっちゃうんで、
テントは眠れねー! って話なんだよ。
矢野 あれ、早く行かないと
いい場所ないんだよね(笑)。
糸井 らしいね(笑)。
そういう話が全部おもしろいのよ。
矢野 そうそうそう。
雨降ってても、いいんだよ。
その場にいることの方が全然大切っていうかね。
で、やる側も違うの。
人ひとりひとりに対する愛情っていうかね。
糸井 そうかー。
アッコちゃんは岸田くんに誘われて、
「出たい!」って言ったの? まず。
矢野 出るまでに2年くらいかかってるね。
やっぱり、競争激しいんでしょう?
出たい人の。
糸井 あなた出ないでね、っていうことがあるわけだ。
矢野 うん。出さしてもらえない。
今回出るまでは、ほんとに出ていただけると
思わなかった(笑)って。
生ピアノなので、雨が降ったら
どうなるかわからないですし、
本気で出たいって確認をしてその話にいくまでは、
スタッフはどこまで本気なの?
っていうのが(笑)、あったはず。
本気だっつーの!
糸井 天童よしみが出たいって言ったみたいに
聞えちゃったんだね。
一同 (笑)。
糸井 いや、でも、その「本気ですか?」って
気持ちもわかるよね。
矢野 うん。
糸井 つまり、そういう文脈じゃないところで
育ってたからね。
矢野 そうそうそうそう。
糸井 いいことですよね。すごく。
矢野 いいの。そうそう。
糸井 海の幸、山の幸、ですよね。
矢野 それはね、大切ね。
  2006-12-08-FRI

(来週月曜日につづきます! 次回が最終回です!)
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