ほぼ日 |
第4条に行くまえに、ひとつ質問があります。
永田農法で使う「液体肥料」というのは、
「化学肥料」であって、
「有機肥料」じゃないんですよね。
なんだか、「化学肥料」というのは、
あんまりよいイメージがないんですけど。 |
諏訪 |
ああ、わかりますよ。
「化学肥料=悪」という
漠然としたイメージがあるんですよね。
でも、液体肥料って
人間でいうなら
「点滴」みたいなものですよ。
詳しく説明をしていきましょうか |
ほぼ日 |
ぜひ、お願いします。 |
諏訪 |
まず、植物が成長するには
10以上の元素が必要です。
代表的なのは、窒素、リン酸、カリ。
これらは、植物の3大要素と呼ばれているほど、
植物にとって大事な元素なんです。
3大要素のほかには、
カルシウム、マグネシウム、イオウといった
いくつかの微量元素がありますが、
それらはもともと土に入っていることが多いので、
基本的には窒素、リン酸、カリを
与えてあげれば大丈夫なんです。 |
ほぼ日 |
なるほど。
その重要な3大要素を含むのが
「液体肥料」なんですね。 |
諏訪 |
そうです。
DVDの中でおすすめしてるのは、
「葉もの用」と「実もの用」とで
成分の配合をかえた
「住友液肥」という肥料です。
たとえば、「葉もの用」の液体肥料は、
含まれる窒素の量が多いんです。
これは葉っぱを増やしたり、
茎を茂らせたりするのに
窒素が使われるからです。
逆に、「実もの用」の液体肥料は
窒素の割合を抑えて、
実がつくために大事な
リンの割合を多くしてあります。
これはゴボウ、大根といった根菜類にも使います。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
諏訪 |
といったことを前提として、
「有機肥料」と「化学肥料」の話に移りますが、
液体肥料に含まれる窒素とリン酸とカリは、
どれも特別な成分じゃないんですよ。
ご存じのように窒素は空気中の
78%を占めるものですし、
リン酸もカリも
リン鉱石、カリ鉱石という天然資源、
つまり石からとれるものですからね。
どれも天然由来の成分を固定して
水に溶かしただけなんですよ。
そして、有機肥料にしても化学肥料にしても
けっきょく、野菜が吸収するのは
窒素、リン酸、カリがイオン化して
水に溶けた状態のものですから、
土に入れるときの形状は違っても、
植物が吸収する時点では同じなんです。 |
ほぼ日 |
え? ということはつまり、
有機肥料であろうが
化学肥料であろうが
野菜に吸収されるときは同じ? |
諏訪 |
そういうことなんですよ。
だから化学肥料がだめで、
有機肥料がいいんだと
こだわる必要はないんです。
実は、有機肥料、オーガニックが
体にいいとかおいしいということは
科学的には証明されてないんですよ。
たとえば、イギリスでは
有機肥料やオーガニックを
「体にいい」「健康にいい」「おいしい」と
結びつけてコマーシャルすることが
禁止されてるんです。 |
ほぼ日 |
はーー。知りませんでした。 |
諏訪 |
もちろん、体にいいということが
科学的に証明されてないというだけで、
有機肥料が体に悪いとか、
有機肥料よりも化学肥料のほうが
体にいいと言っているわけではありませんよ。
植物に吸収されることを考えると、
両者はそれほど差がないんだということです。 |
ほぼ日 |
なるほど。
「有機肥料=体にいい」
「化学肥料=体に悪い」というのは
あくまでもイメージなんですね。 |
諏訪 |
そうです。
ぼくも、いまは偉そうに
こんなことを言ってますが、
永田先生に学ぶまえは、
汗だくになりながら
堆肥をつくっていたわけですから。
有機であれば、有機であるほど、
体によく、おいしくなるような気がして。 |
ほぼ日 |
はい、そういうイメージがあります。 |
諏訪 |
でも、それっておかしいんですよね。
あの、たとえば薬を飲むときに、
錠剤やカプセルの形をした
西洋医薬の薬を摂取する場合、
みんな規定量を守って飲むんです。
ところが、ウコンとかの漢方薬を飲む場合は
それほど規定量を気にしない。
それどころか、
「多いほうが効くんじゃないか?」
とさえ思ってしまう。 |
ほぼ日 |
あーー、たしかにそうですね。
ウコンを飲むときに、
「今日はお酒をたくさん飲むから、
ウコンも2倍飲んでおこう!」みたいな。 |
諏訪 |
そうそう(笑)。
もっというと、多く飲んだとしても
「それほど害にならないんじゃないか」
と、思いがちです。 |
ほぼ日 |
たしかに、たしかに。 |
諏訪 |
それと、肥料の話はよく似ていて、
化学肥料は規定量を守るけど、
有機肥料の場合は、
多く入れれば入れるほど
いいんじゃないかと思ってる方が、
プロの農家でもけっこういらっしゃるんです。
ぼくも家庭菜園を始めたころは
牛糞の上にそのまま種をまいて野菜を育てたら
すごいおいしくなるんじゃないか、
なんて思ってましたから(笑)。 |
ほぼ日 |
どちらがいいとか悪いとかではなく、
「野菜にとって適量であるかどうか」が
まず、重要なんですね。 |
諏訪 |
そうです。
そして、「吸収されるための栄養」という意味では
どちらの肥料も変わりません。
有機肥料も、牛糞や鶏糞が水に溶けたものを
植物が吸収するわけではなくて、
牛糞や鶏糞が
土の中のバクテリアによって分解されて、
その成分を植物は吸収するわけですから。 |
ほぼ日 |
なるほど、なるほど。
ということは、土の中で
液体肥料を作ってることになるんだ。 |
諏訪 |
そうなんです。
だから一般農法では固形肥料を分解するために、
土の中に多くの微生物が
必要になってくるわけです。
一般農法でのフカフカの肥えた土は
微生物が固形肥料を分解するために
必要なんですよ。
永田農法の場合は固形肥料じゃないので、
分解の過程がほとんど要らない。
カチカチの石だらけの土に液体をまくので
表面の上に4~5センチのところに
根が張っていれば、十分肥料は吸収できます。
永田先生は、よく、
「永田農法は地表5センチで勝負する農法です」
とおっしゃるんです。
一般農法では、深さ30センチくらいの
ところまで耕すんですけど、
永田農法はそれほど耕さなくていい。
なぜなら、肥料を分解する必要がないし、
深く根を張らせる必要もないからです。
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(つづきます) |