諏訪
続いては、苗の植え替えに関することです。
これは野菜づくりに詳しい人であればあるほど
驚くことなんですけど、
ええと、第5条になりますね。
「苗の根を洗う」
ということです。
続けて第6条も言ったほうがいいですね。
「苗の根を切る」
ことです。
ほぼ日
野菜づくりの経験がある人にとっては
ものすごく驚くようなことなんですね。
諏訪
ええ。そのとおりです。
普通、野菜の苗を植え替えるときは、
苗をビニールポットから
土ごと、そーっと外すんですけど、
そのとき、土が乾いていると、
ボロボロ崩れてしまうので、
わざわざ1回ポットに水をあげて、
ちょっと土を落ち着かせるんです。
そうして20~30分置くと
しっかり土が固まるので、
そこでようやくそーっと出して移し替える、
というのが基本なんですね。
つまり、根を崩さずに植え替える、
というのがセオリーなんです。
私もずっとそうしてました。
ほぼ日
それくらい根というのは大事なんですね。
諏訪
そうなんですよ。
「根はいじるな!」というのは
園芸の世界では鉄則でした。
ところが、永田先生は、
ポットから苗を抜いたら、
用意してたバケツの水にドバッと浸けて、
ジャバジャバジャバジャバジャバと
土を洗い出したんですね。
はじめてそれを見たときは
「えっ! 先生、なんてことするんですか!」
って感じで、衝撃的でした。
ほぼ日
苗を洗う理由を教えてください。
諏訪
その理由も、いままでにお話ししてきた
永田野菜の基本にすべて通じるんです。
つまり、苗も植え替えまでは
一般農法で育てられてますから、
ポットの土にはすでに
肥料がいっぱい入っているんです。
そういう土を持ち込むと、
あまり肥料のないところで
最低限の肥料で育てるという原則が崩れちゃう。
ほぼ日
そのまま植え替えをすると
ポットの土にある栄養で育ってしまうんですね。
だから、根を洗って、いったんリセットする。
根を切ってしまう理由はなんですか?
諏訪
ポットで育った苗の根というのは、
繁茂してグルグル巻きに
なっていることが多いんです。
ところが、永田農法における根というのは、
液体肥料を吸わせるために
土の表面に広く細かい根を
ワーッと這わせるのが理想なんです。
でも、グルグル巻きのままだと
横に這いにくくなる。
そこで、根を切るわけです。
ほぼ日
ハサミで、根を3分の1ぐらい、
ものによっては半分ぐらい
チョッキンチョキン切っちゃうんですよね。
諏訪
そうです。
細い根を土の表面に広く這わせて、
液体肥料の吸収をよくさせたい。
だから、まっすぐ下に伸びている
直根と呼ばれる太い根は切ってしまう。
ちょっと古くなった根も
切ってあげることによって
新しい発根をうながします。
ほぼ日
そうはいっても、根を切るのは
ちょっと勇気が要るかもしれませんね。
どれくらい根を切るかなんてことは
実際にDVDでもみることができますよね。
諏訪
DVDには、根をどんなふうに、
どのくらい切るかということも収録されてますから
ぜひ、参考にしてもらいたいですね。
私も、この「根を洗う、根を切る」ことに関しては
永田先生の話を聞いても、半信半疑だったんです。
やっぱり自分も10年以上野菜を作ってきましたし、
本を読んだり先輩に教えてもらったり
してきたわけですから。
とくにトウモロコシの根なんかは非常に弱いので
本当にデリケートに扱うことが常識だったんですよ。
たとえば、トウモロコシって、
種を畑に直まきしたあと、
複数出た芽を間引いていくんですが、
そのときに、芽をピッと引っこ抜くと、
残す芽の根を傷つけちゃうかもしれない。
だから、芽を間引くときは、
抜くのではなくハサミで切りましょう、と、
そういうことが本には書いてあるんです。
それなのに、永田先生は、
根を洗うわ、切っちゃうわ、
石ころだらけの畑に植えちゃうわで。
これはもう1週間後、10日後に来たときには
枯れてるか、枯れてなくても
最終的には実はならないだろうと確信してました。
ほぼ日
ところが‥‥できちゃった。
諏訪
できちゃうんですよ。
小泉今日子さんが畑にやって来て
収穫祭をやりましたけど
トウモロコシは、とったその場で皮をむいて
生でかじって、
「甘いミルクを食べてるみたい」
と感動されてましたよね。
それは僕もそう思った(笑)。
目の前で根を洗い、切ったトウモロコシが
そのように育ったことが
なによりの証明だったんですよ。
(つづきます)
2008-04-25-FRI