山田 |
永田照喜治さんが話してくれたなかで
いちばん度肝を抜かれたのが
ロボットで農業をやろうとしていること。 |
ほぼ日 |
ロボット! |
山田 |
そもそも永田さんは、有機栽培という考えから
離れたところで
農業をやろうとしています。
植物には、
「チッソ」「カリウム」「リン」
その3つを与えればいいんだ、と言っている。 |
ほぼ日 |
永田先生は、自分で積み上げた結果に基づいて、
ほかのものに左右されずに
やろうとしますね。 |
山田 |
それは、永田さんが、
「ここで倒れている人がいたら
どうやれば救えるんだろうな」
というところで暮らしてきた人だ、
ということが大きいと思うんです。
人を売らなくてはならないような状況や、
地べたのギリギリで生きる人を見てきた。
そんな時代に、ミカンをつくって、
「肥え」の入った桶を担いで
畑を毎日往復していたんです。
コブの跡が、肩にいまだに残ってるって、
笑ってるでしょう。
戦争でもかなり辛い目に遭ったということを
聞いています。
あれはね、あれはね、あれはね‥‥、 |
ほぼ日 |
はい、 |
山田 |
(ひそひそ) タダモノじゃ
ないんですよ! |
ほぼ日 |
はああ。 |
山田 |
永田さんの、あの目!
実にクールです。
やわらかそうな人に見えるんだけど、
話をしていると
「そこはちがう」
「そこは、こう」
とビシッと突っ込んでくるところがあるでしょう。
浮ついたことが大嫌いだし、
尖ってますよ、とにかく!
永田研究所のまわりには、
きれいな家がたくさん建っています。
なのに、あそこだけ、
崩れそうな平屋ですよ?
あれが彼の哲学であり美学であると思う。
(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中
それに、あの人は人災で
いくつかの計画をだめにしている。
意図的に失敗「させられた」経験があるんです。
ですからやっぱり、
いまの風に安易に吹かれるようなことを
信じていないし、
「それはそれ」として置いてしまっています。
周りの人たちが
「この人は何を言っているんだか」
と思っていることを、永田さんは
よ〜〜〜〜く、
よ〜〜〜〜く、知っているんです。
だけど、根底にあるのが
「飢えさせないように」
「具体的に救う」
だ・か・ら!
ゆるがないんですよ。 |
ほぼ日 |
あああ、なるほど。 |
山田 |
故郷の天草にいらした時代に、
永田さんのことを
サポートした人たちのことを
ぼくは調べたんですけど、
そりゃもう、農業の、すっげぇ権威
ばかりなんです。
松井とかイチローが
草野球には居られないようなかんじで、
あの人はたぶん、天草に存在していたんですよ。
永田さんは、メジャーリーガーなんです。
そりゃあ、まわりが放っておかないでしょう。
「石川県にすごい奴が居るんだよ」
「石川県にィィ?」
と行ってみたら松井だった。
そんな感じだと思います。 |
ほぼ日 |
気づかずにいられないような
光り方だったんですね。 |
山田 |
それが、ほかの人にとっては
わけがわかんないことだったんでしょう。
だってさ、荒れ地をわざと買ったり。 |
ほぼ日 |
親から受け継いだ畑を売り払って、
岩山を買ったんでしたね。
そのほうがおいしいミカンが採れたから、と。 |
山田 |
「おかしいんじゃないか、あいつは!」と
言われてたらしいですね。
でも、永田さんには、わかってた。
「うむ、このバッティングだ」って。 |
ほぼ日 |
イチローの、あの、
力の抜けたように見えるフォームのように。 |
山田 |
「いやいや、これで打てるんだって」
とわかってたんだね、自分だけで。
とっくに見つけちゃってたんですね。
永田さんは、人に伝えることが好きじゃないし、
どうでもいいと思っている。
一方、糸井さんは、空気をつくり、
風を起こす人です。
「それじゃ、いけない」って思うにちがいない。
あそこで、トマトを食わされたら、
糸井さんはだまっちゃいない、だまっちゃいない。 |
ほぼ日 |
だまっちゃいないですね! |
山田 |
だまっちゃいない!
あの人は、いろんなところにすっ飛んでって
こうやって、何年間もかけて、
いろんな人に伝えようとしているんです。 |
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(つづきます!) |