山田玲司が語る、永田照喜治。 〜植物の声をひたすら聞く男〜
(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中

その4 何度も死んでる、死なない人たち。

山田 じつはぼくは、いま、
永田農法の野菜を通販で注文して食べてます。
お米もね。
「この野菜に慣れちゃうのはどうかな?」
なんて思いながらも(笑)。
そうやって、少しでも需要が伸びれば、
ほかの農家の人たちだって
「じゃ、オレんとこもやるか!」と
思ってくれるかもしれない。
こういうことって、けっこう大事でしょ。
ほぼ日 買うことで支えるんですね。
山田 需要があればみんな、やるんじゃないかな。
風で、変われるんじゃないかな、きっと。
ほぼ日 永田先生が長生きしていらっしゃる間に、
風が吹けばいいんですが。
山田 いやあ〜あの人ねぇ、
けっこう長生きすると思いますよ。
まぁだ、まぁだ。
ほぼ日 どうしてわかるんですか?
山田 わかりますよ。
あの人の脳みそは40代か、
50代くらいじゃないですか?
フランス映画の話とか、してましたからね。
ほぼ日 フランス?
山田 あの人、フランス映画と
フランス文学が好きなんですよ。
そっちの勉強をしていた人なんですよ。
ほぼ日 なんとも、こじゃれた‥‥
山田 ハハハハ、あの時代にね!
完全に、はいからさんですよ。
それで、戦争に行かれて、
いろいろなことを考えたんだろうなと思います。
「いいことで闘いたかったな」と
「もっと世の中全体をよくすることに
 命をはりたかった」
という思いが、
そのときにもできたんじゃないかな、と
ぼくは思います。
永田さんは、いったん死んでんですよね、
戦争のときに。
そういう人って、強いです。


(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中
ほぼ日 すごい方って、そういう人が、
多いですね。
山田 うん、ぼくなんか
会う人会う人、みんな一回死んでる(笑)。
「妖怪」です。

あのね、ぼくは、
過去って前世みたいなものだと思うんです。
だって、子どものころのことって
前世のような感じがしない?
過去の自分が、自分に思えなかったりするもん。
あのときの自分のことを言われても
オレじゃねえよな、という気がする。
ほぼ日 そういえば‥‥。
人は意外と
長い時間を生きるもんなんですね。
山田 20歳くらいの自分に会ったとしても、
「そんなこと、言うなよオレ!」
と言いたくなるくらい、
人間って変わるものだし、
ちがうものになっていくんです。
細胞も、6年くらいだったかな?、で
全部入れ替わる、なんて言われているわけです。
だったら、6年前のオレはもういないわけで。
ほぼ日 そ、そんな。
山田 永田さんなんかは、
ほんとに何度も死んでいて、
もはや前世になってるんですよ。
また、最近生まれた
ばっかりなんじゃ
ないかな?
ほぼ日 ‥‥そういう気がしてきました。
山田 でしょ?
耳は遠いとか、
そういうフリはするかもしれないけど!
ほぼ日 ハハハ。
山田 人間っておもしろいもんで、
きっと年をとると、
省エネで生きてくコツを
つかむんでしょうね。
若いころって、むだなことが多いでしょ。
女の子とか、
ピョンピョン跳ねてんじゃん、
跳ねなくていいのに。
ほぼ日 はい(笑)。
山田 それが、ゆくゆくは歌舞伎鑑賞で
「すてきよねぇぇ」と言えるようになっていく。
ああやって、人間って、
おなじ「感激」という分野ひとつでも、
省エネになって
生きていけるようになるんじゃないかな。
永田さんは省エネモードで
いろんなことに対処してらっしゃるけど(笑)、
あれは省エネモードで生きているだけで、
中身は、ぜんっぜん! まだまだ!
ほぼ日 そうか、あれは省エネモードだったんですね。
  (つづきます!)

2006-04-03-MON