山田玲司が語る、永田照喜治。 〜植物の声をひたすら聞く男〜
(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中

その5 虫みたいに見えてんだろうな。

山田 聞くところによると、
男の人は畑仕事が
最も向いているそうなんですよ。
女の人は体の循環がよくてリセットできるけど、
男の人はそれがうまくできないから、
体を動かしていくしかない、と聞きました。
からだと頭を、同時に、
やや頭を動かさないくらいの加減で、動かす。
それがいちばん合っていて、
長生きするらしいです。
ほぼ日 頭を動かすより
体を動かすほうが、人間に向いている。
山田 頭や心なんか、バカにすればいいんです。
だってさ、腹が減ったというだけで
怒ったりするんだよ。
そんな心を信じてどーすんの?
ということなんです。
ほぼ日 あてにならないですね。
山田 ちょっと甘いもん食っただけで
機嫌がよくなったりする
そんないいかげんな心みたいなもんを
信じてもしょうがねぇ。
だったら、体だろう、と。
それはけっこういろんな人から
くり返し教えていただきました。

女の人って、すごいですよ。
理屈を通り越す、すごさがあると思う。
ほぼ日 私なんかはときに、
理屈がない場合もありますので。
山田 だから、本来は、そうなんですよ。
理屈なんてものは、未熟な人類が、
ちょっとサルから進歩して
ああだこうだえらそうに
言い出しただけのものなんです。

幼稚園の男の子が
「先生、さっきこう言ったじゃーん」なんて
小さな理屈を言うでしょう。
あの程度の知恵なんですよ。
それに比べると、
「今日は桜がきれいだから帰る」って
席を立っちゃう女の子が
いちばんレベルが高いんじゃないかな。
それこそが、この世界の、
何かしら大きなものと連動している、
自然な流れなんです。

漫画でも書いたんだけど、玄侑宗久さんに
「山田さん、渡り鳥は会議してから旅立ちますか」
って言われたもん。
ほぼ日 でも、男性でも女性でも、
その理屈の嵐の中を
歩ききった人、というのが
いらっしゃいますね。
山田 ああ、いますね。
理屈で考えることは、
おろかな人間の宿命ですから、
おろかな宿命をやりきって、
ゲームセット!となったときに、
やっと女の人みたいになれるんですよ。
ほぼ日 それはすごいなぁ!
山田 そこに行った人たちは、立派ですよ。
永田照喜治さんがおっしゃったことで、
とても心に残っているのは、
ぼくが畑で
「こんなに土は浅くていいんですね」
と聞いたときに
「深く掘るのはバカなんです」
とおっしゃったことなんです。
あれはすごい。
どこまで掘ったの、あなたは?
どこまで掘ったら、
そんなことをサラッと言えるの、あなたは!!!
浅くしか掘ってない人の
セリフじゃないですよ、あれは。
ほぼ日 聞きたいですね、どこまで掘ったのか。
山田 うん、ぼくもその話を聞きながら
「ちょっと待ってくださいよ、
 それはどういうことで?」
と思ったんだけど、
野暮すぎて、聞けませんでした。


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ほぼ日 聞きたくなるんですけどね‥‥、
つい、聞いちゃうんですけどね。
山田 聞いちゃったりするよね!
ほぼ日 でも、すごい妖怪のような方々というのは、
そういうことを聞かれるのを、
すっごく、嫌いますよね!!
山田 それは、あほに見えるんだろうね!
ほぼ日 あほに見えるでしょうね!
山田 ハハハハ。
永田先生やすごい人たちからは
オレなんかホントに
虫みたいに見えてるんだろうな、と思いますよ。
それでもみんな、
ちゃんと話をしてくれたりする。
「まあ、わかるんだったら持って帰ってもいいよ」
というような口ぶりで(笑)。
ほぼ日 でも、そうやって山田さんの世代が
受け取られることがあって、
また、それをちがう世代が読み取って、
ということが重なっていく、
ということなんでしょう。
山田 そう。自分がこのタイミングでこの人に会えて、
こういうところを感じることができた、
ということが大切なんです。
こういう微妙な年になって、
いよいよまわりが見えてきてるからこそ
そういうチャンスがもらえてるんだと思う。

よくサッカー選手が
「夢はワールドカップ優勝ですか?」
なんていう質問に、
「いや、一試合一試合。
 というか、毎分毎分。
 ひとつひとつのプレーを」
と答えるでしょう? あれですよ。
とにかく、目の前のことを、
ひたすらやってくしかない。
とにかく永田照喜治という試合に
出ることができたんだったら、
全力でいくしかないんです。
ほぼ日 それしかないですね。
山田 若い奴が発言をしている裏には
こういう気持ちがある、ということは、
もうぼくたちにだって、
わかってきてるんです。
「こいつ、おもしろいから
 ケガするまで泳がしておこう」
とか、思うこと、あるでしょ?
ほぼ日 うーん、そうですね、そうですね。
山田 ということは、ですよ?
いままで、バレていた、ということなんですよ。
バレてて、
言わせてもらっていたんですよ。
ほぼ日 ‥‥そうですね。
山田 思い直すと、えらい人ほど
あまりモノを言ってくれない(笑)。
ほぼ日 永田先生のような人の前では、
もう、じたばたするしかないですね。
山田 言ってみれば、永田さんには
オレがトマトにされた、と
こういうことですね。
ほぼ日 どういうことですか?
山田 水もらえない、
情報もらえない。
ほぼ日 はははは‥‥そうか。


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  (つづきます!)

2006-04-05-WED