山田玲司が語る、永田照喜治。 〜植物の声をひたすら聞く男〜
(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中

その8 いい先輩がいるから怖くない。

ほぼ日 山田さんは、
40歳になられたばかりですが。
山田 はい、
不惑ワクワク、です。
40代はとにかく、全力疾走ですよ。
ほぼ日 ひえええ、そうなんですか。
山田

そうです。
ぼくはゆくゆくは、
マチスになりたいんですけれどもね。

ほぼ日 マチスに。
でも、この40代の10年は、ちがうんですね。
まだ「妖怪」になるには早いんですね(笑)。
山田 この10年は、もう、しょうがないから
神棚に上がるのはやめて(笑)、
俗悪な人間としてやっていこうと
決めているんです。
ホントはもうオレは、
漫画は描かないのかなぁ、なんて
思ってたんだけどね。
そんなわけにはいかないね。
これからやろうとしていることは、
もう、決まっているんですよ。
ほぼ日 40歳の時間の感覚って、
どんな感じですか?
山田 植物だらけですよ。
ストレスたまるたんびに
ひと鉢ずつ増えていく(笑)。
ほぼ日 ハハハハ。
山田 40歳はね、ジョン・レノンが死んだ歳なんです。
去年は、ジョンの歳まであと1年だな、
と思ってすごしてきました。

そして、オノ・ヨーコさんとお会いしたりして、
ありがたいことに、
ジョンに関するお仕事も
いくつかやらせていただいたりしました。

とりあえず生き残っちゃったし、
この先は、
ジョンができなかったことをやらないとな、
というふうにも思います。
だってジョンは、
「Starting Over」で死んでいるから。
「いろいろあったけど、さ、いこっかー!」
というところで殺されちゃったから。

ほぼ日 老いゆくことについては、どうでしょう。
山田 昔は、20代半ばぐらいで
歳がとまったらいいな、なんて
思っていたんですよ。
とんでもないっすね!!
あんなヒヨコみたいな、ヒャハハハハ。
ほぼ日 はははは。
山田 あんなところでとまったら
タイヘンでしたよ!
よかったなぁ。

10代はまだ殻のなかにいる状態です。
わけわかんない20代がすぎて、
30代は実戦がはじまる。
現実につぎつぎと戦わなくてはいけない。
そして、戦ってきた経験があっての40代が来る。
こぉぉぉ〜れは、おもしろいことになるぞ。
「いよいよいいものいっぱいできるぞ状態」に
なってきた、と思います。

ほぼ日 40歳は「さてこれからだ」
という心境になるらしいですね、
ジョンのように。
山田 うん。それに、いろんなことが
怖くなくなってくるんです。
たとえば、食えなくなったらどうしようと
いうことについても、
不安がなくなってくる。

ぼくたちの上には、
すごい人たちがいっぱいいます。
あの人たちの後輩でいられるんだ、
という安定感を
しみじみと感じるようになってきたんです。
「あ、そっか、ぜんぜん平気じゃん」と。

永田照喜治さんは年をとっていない、と
さっきも言いましたが、
肉体的なことは云々あるけれども、
ほんとうに人間が見ているものって
光と影じゃないんだろうな、というのは
わかってきたんです。
「あれ? ちょっと待って、
 もう、老いることとかは、もう、
 ぜんぜん、怖くないわ!」
と思うようになりました。

そういうことがだんだんわかってきて、
どうなるかというとね。

ほぼ日 どうなるんですか?
山田 お仕事が生まれるんですよ、
これが、また。
ほぼ日 はあああ。
これでまた、歯止めが利かなくなる。
山田 これだけたくさんの人に支えられて
いい状況にあるんだから、わかってるよね?
ということなんだと思います。
「おごるなよ、仕事はあるよ。
 それまでは妖怪にならずに、人間でいて、
 せいぜい肉とか食って、車とか乗りな」
って、言われているような気がする。


(C)山田玲司/「週刊ヤングサンデー」連載中

ほぼ日 山田玲司さんとは、私は
2年ぶりにお会いするのですが、
なんだか健康的になられたように
思うのですが。
山田 いや、十二指腸潰瘍に
なりかけているみたいなんだけど(笑)。
でも、気持ち的には、問題がないです、
びっくりするくらい。
これからも、やってくぞって、思ってます。

テレビとかを見ていると、ある限られた人と
それに文句をつける人しか
世の中に存在しないのか!と思いがちですけど、
人知れずやっている人たちが
いっぱいいるんです、
永田さんのように。
いい先輩たちを見て、行きたいなぁ。

ほぼ日 みんなのまわりにも、
きっといっぱいいるんでしょうね。
山田玲司さんとのお話は、
いつまでたっても、尽きません。
また、これからも、折りにふれて
いろんなお話をうかがいたいと思いました。
ありがとうございました。
 
(おわりです)

2006-04-13-THU