ありがとうが爆発する夜
矢沢永吉バースデー記念
スペシャルイベントまでの日々。

第6回
矢沢永吉49歳・糸井重里50歳
ありがとうが爆発する対談



2曲目
「固定観念をぶっとばせ!」
糸井: で、今まで誰かに頼ったことないんだよね。
エーちゃんね。
矢沢: 頼らないね。
糸井: 「経営は俺は専門じゃないから」とか言って、
「それはアイツに任せてる」ってしてないよね。
ライブの構成も人任せにしてないよね。
「それは、なに?」って思うんだよ、今頃になって。
矢沢: それは、形こそちがうけれど、
矢沢もやっぱりずーっと、いろいろ考えるのよ。
「なんかねぇのかな、なんかねぇのかな」って。
表から見たら矢沢のイメージってのは
「いいからどかんかい!」
「カンケーねぇよ、気分、気分!」って言ってるように
映ったわけよ。それがかえってよかったからね。
今頃は、もうみんな気づきはじめたね。
「あの人は、ああいうイメージだけど、
ホントは、コチョコチョいつでも考えてるよ」って。
僕はまた構成とか演出に興味があったからね。
糸井: 考えてるのがおもしろいんだ?
矢沢: おもしろい。考えてるよぉ。
だから、かなり早くからステージの演出を
しはじめたでしょ。
ライティングがどうした、こうしたと。
ピン当てるタイミングまでも指示するじゃない。
こうやれ、って。
好きなんだね、プロデュース的なことが。
だから、イトイのそういう部分がすごくわかるのよ。
埋蔵金ってのはおもしろいだろうな、って思うのよ。
イトイは存在として日本に必要だから、
「おーい、一気に掘ってくれ!」と、言いたい。
だから俺、バス釣り行こうって誘われたとき、
「行こう、行こう!」ってホントに行ったじゃん。
やっぱり、そういうことをしてみたいと思ったし。
だから矢沢のイメージってのは、
世間が見てるイメージじゃなくて、
ホントは、矢沢って、神経質で、細かくて、わかる?
ホントは几帳面なんだよ。
糸井: ある意味では、弱気とさえ言えるかもね。
矢沢: そうかもわかんない。
糸井: こわいから、やる、とかねぇ。
矢沢: だって俺、近くなった人によく言われるもの。
「矢沢さんって繊細ですねぇ……」ってみんな言うよ。
それがおもしろいのはさ、
「矢沢さんって繊細ですねぇ」って言われるってことは、
繊細ではないと決めてかかってたからだよな、みんなが。
ステージで、ウォーッてやって、ロックンロールイェー!
ってリーゼントしてるヤツは繊細じゃないのよ。
だから今、そのへんの戸惑いが
世の中におきてきてるわけだ。
わかる?
あれ、あるじゃん、
矢沢の大ファンがやってるレストラン。
西麻布の……。
今、バカッ流行りしてるじゃん、若者に。
知らないの?
もうテレビはバンバン出るわで、
若者、ギャルの間で大人気のレストラン。
糸井: ……?
矢沢: そこに“YAZAWA”って部屋がある。
「矢沢さんに来てもらうのが夢でした」って、
部屋つくっちゃったんだよ。
で、メディアもマスコミもバンバンとりあげてる。
その部屋に、EIKICHI YAZAWAってバーンって入ってる。
糸井: エーちゃんの部屋なわけ?
矢沢: うん。その部屋、なんで作ったかっていうと、
自分はサクセスしたから矢沢さんに来てもらいたい、
そのために部屋をつくりたい、ってつくっちゃったんだよ。
今度、アイツ新宿にもビル建てて店出すって言って、
矢沢の部屋つくって、大阪にも店があって、
「大阪にも矢沢永吉の部屋つくりましたから」って。

それでね、彼、元暴走族なのよ。
暴走族で、昔「成りあがり」読んで泣いて泣いて、
狂って狂って狂いまくって、リーゼント、バンバンして。
そういうヤツは何も考えてないって固定観念あるだろ?
それが今じゃ従業員500人だ、何店舗もやって、
今度ニューヨークにも店出すって、バカ当たりしてるわけ。
それで社員500人全員に「成りあがり」読ませるんだって。
読んで、ちゃんとマスターしろと。
それ朝礼みたいよ、「成りあがり」読めってのが。

もともとはリーゼント、そういう人間が500人雇って、
店舗展開して、ニューヨークに進出して、年商いくらで、
ということを、やると思ってないというか、
「やらないでしょ」っていう固定観念なんだよな。
だからたとえば、
矢沢が演出をぜんぶやってるとかなんとかって言うと、
「え! なんで?」ってことになるわけじゃない。
そういう固定観念から脱却しなきゃいけないんだよ。

それが今、日本人はこういうレールで行きましょう
っていうフォーマットがぜんぶ崩れてきてるから、
リストラがあったりなんだかんだって、
今みんなパニックおこしてるんだな。
「だって私、このレールに乗って受験して、
いい大学入って、大企業入ったらいいって言ってたのが、
なんでこうなっちゃうの?」ってことで、
パニくっちゃってんだな。
わかる?

やっぱり、今までは、こうだからこうでしょっていう
フォーマットどおりやってこれたんだけど、
それが一気に崩れてきてるからなんだよね。
だから、イトイみたいな人がやっぱり必要なんですよ。
世の中を斜めから見られるような人。
“社会の糸井重里”みたいなプロデューサーがいないと
ダメだよね。この後、文部省かどっか入ったら?
糸井: (笑)人のことだと思って勝手にしないで。
でも、それはすごく感じるよね。
つまり、なにがヒントになるかなっていうのを
みんなが一生懸命探してるけど、
周りの友だちのなかにはないってわかったんだね。
(つづく)

1999-08-10-TUE

YAZAWA
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