4曲目
「ハッピーにならなきゃいけないんだよ」 |
矢沢: |
人間がハッピーに暮らすってことが
どこで完結するかって考えたときに、
レールを信じて頑張ってきたはずなんだけど、
もうひとつ、“気”が必要なんだよ。
“気”があって、
フィーリングがあってハッピーなんだよ。
それで初めて人間は幸せになれるんですよ。
迷わないんですよ。
納得して死んでいけるんですよ。
ここんとこずっと、その“気”を忘れてきた。
その“気”はなにかって言ったら、なに?
「なにになりたいの?」
「どうしたら気持ちいいんだ?」
「僕は○○になりたい!」っていう
子供の頃にやってた会話が
実はとんでもなく大事な
意味を秘めていたってことが
はっきりするんだね、これでね。 |
糸井: |
今みたいに、親とか周りの人が
自分がどうなりたいのかわかってないときには、
子供だってわからないよね。 |
矢沢: |
そうだよね。
だから、なんていうのかな、教育のなかで
自然にそういうことが意見交換できるような環境を
つくらなきゃいけないってことなんですよ。
わかります? |
糸井: |
青臭い話ができる環境がほしいんだよね。 |
矢沢: |
たとえば、これも言ったんだよ。
モーツァルトだ、シューベルトだ、って教えてて、
音楽の時間どうだよ、みんな寝てるよな。
わかるわけねぇじゃんそんなの。
モーツァルト? シューベルト? だからどうしたよ!
だけど、キャンバィミィーラーヴ! ってやってくれて、
「あれはCマイナーと転調でFコードだよ」
ってやったら、そのほうがよっぽど入るよ。
というようなね。
だから僕思うけども、そういう環境づくり?
今、そういう環境ないわけじゃない。
だって、ウチは特別講座を
受けてでも次の受験には勝つ
っていうやり方をずーっとやってきたんでしょ。
大学が絶対じゃないんだよ、
大企業が絶対じゃないんだよ、
っていう前提で、それでもキミが大企業に
絶対行きたいんだったら、それが答えだよ。
そしたら、大企業に入るように全力でやれよ。
青臭い話をすることは恥でもなんでもないんだよ。
もっと子供の心ひらいてあげて、
子供の気持ちを聞く。
子供がサッカーしたいなら、
サッカーのサークルにぼんぼん入れりゃいいんだ。
「さて、塾の時間とサークルの時間があるけれど、
うーん、ま、塾はいいわ、サークル行け!」
みたいな。
「まあ大学でもいろいろ種類あるけど、
まあ、いいじゃん、サッカー行く?」
みたいな環境がもし日本にあったら……。 |
糸井: |
どっちでなにを学ぶかわかってれば、選べるんだよなぁ。 |
矢沢: |
必要なのは、そういう環境があるかないかじゃん。
もしあったら、将来いろんなヤツが出てくるよね。
だけど、もちろん最低限の教育はぜったい必要だよね。
それをね、今日感じたの、俺。 |
|
糸井: |
仕事で日本とアメリカを行き来してるのが、
すごく影響してるでしょ? |
矢沢: |
すごく影響してるね。 |
糸井: |
何日か前にNHKでハリウッドの歴史をやってたのよ。
その番組観てたら、今トップクラスの人が
元郵便配達係だったりするんですよ。
会社のなかで郵便物配る人いるじゃない。
ああいう人がトップクラスになってるんだよね。 |
矢沢: |
アメリカに発明家がなぜ出るか?
改良は日本でやるけど、発明はアメリカで、
パテントはほとんど握られてるよね、
携帯電話でもなんでもそうだけど。
アメリカにはそういう環境があるんだろうな。
理にかなってんだと思うな。
俺、日本大好き、だって自分の国じゃん。
でも、理にかなわないことが日本は多すぎるんだね、今。 |
糸井: |
エーちゃんの理ってのが、
今までの日本の理じゃなかったんだよ。 |
矢沢: |
そうだよ。
だから、今考えたら「成りあがり」の本ってあれすごいよ。
あれはすごいこと言ってるんだ。
今考えるとあらためてそうなんだな。 |
糸井: |
あのときに、相談して、ああいう本にするかどうかって
ちょっと悩んだじゃん、みんなで。
だけど、あそこで選択したことが、
今の時代にぜんぶつながってるんだよね。 |
矢沢: |
つながってる。
だから、人間ってのは本当はシンプルでいいのよ。 |
糸井: |
その人の生き方なんだよねぇ。 |
矢沢: |
そうなのよ。
それを勇気をもって社会とかメディアとか周りの人が
「大学行かないことは恥でもなんでもない。
むしろ目的をもたせることのほうが
もっと大事なテーマなんじゃないの」
って言える環境ができることのほうが、
本当は正しいんだと思うよ。
勇気いるけどね。
人間ってのはどうならなきゃいけねぇかって言ったら、
幸せにならなきゃいけないんだよ。
ハッピーにならなきゃいけないんだよ。
だから、悩んで、うだうだしてたら
こんなつまんないことはないよね。
まあちょっとこう七面倒くさい話になってるけど、
今日、俺は感激してるのよ! |
糸井: |
わかっちゃったんだね。 |
矢沢: |
こないだまでわからなかったなぁ。 |
糸井: |
え、そうなの? わかってやってたじゃない。 |
矢沢: |
いや、そうでもないんだよ。 |
糸井: |
エーちゃん、身体が先にわかるんだよね。 |
矢沢: |
結局ねぇ、一流大学出て一流企業入って
ホワイトカラーやることがいいんだというのはね、
これはね、トリックだよ。
ある種のトリックだよ。
まあ、面倒くさいから、まとめちゃったんじゃないの。
ああだこうだって言い分をぜんぶ立てると、
いろんな言い分があるから、
「こういうラインが、まあ手堅いんじゃないの」
っていうことで、やったことが、
いつのまにか絶対になっちゃったんだよ。 |
糸井: |
そういうことだね。
いつのまにか「みんな同じにやれよ」になっちゃった。
そこから外れたときの冒険とか勇気とか
いろんな苦労がくっついてくるじゃない。
で、それを乗り越える前にだいたい倒れちゃうから、
まとめられたところに戻っちゃう、
っていうことの繰り返しですよね。 |
(つづく) |