ありがとうが爆発する夜
矢沢永吉バースデー記念
スペシャルイベントまでの日々。

第14回
矢沢永吉49歳・糸井重里50歳
ありがとうが爆発する対談



10曲目(最終回)
「俺たちモテるって!」
糸井: 50歳になってもやる、って言ってた頃には、
「まさか」って気持ちちょっとあったでしょ?
若いときそういうことばっかり言ってたじゃない。
「オレは白髪になってもハゲてもやる!」って。
矢沢: だからぁ、そんなもんねぇ、
言葉に酔う時期もあるじゃない。
「いやぁ俺は50歳になってもやるよ!
ハゲになってもやるんだぁー!
どうだい? 根性あるだろ?」って言ってやってきたよ。
ところが、50歳が来ちゃったんだよ(笑)。

どうしようかなぁ、まずいなぁ、って思ったときに、
まあ歳も歳だし、今思うことは、
人間はなんで生きられるんだろうなぁ、
ってことを素直な気持ちで、考えたりするわけだよ。
そうすると、やっぱり、
やり甲斐があるものを持ってるか持ってないか、
手に職を持ってて、俺にはやるべきものがあるかどうか、
そうじゃないと生きられないじゃない。
みんなそうなんだよね。

どこでボーダーをつけるかと言ったら、
やるもの持ってるヤツと、
さまよってるヤツに分かれるんだよね、歳とってくると。
だから、なにしていいかわからない人は、
もう死んじゃうんだよ、心が。
そんな苦しいことないよ。
だから、俺、たまに思うときあるよ、
俺がもし矢沢永吉じゃなくて、やるものがなかったら、
俺このまま老けていっちゃうのかなぁって。
それ怖いなぁーと思ったときに、
今やってることが幸せなことなんだなと思えるよね。
糸井: 50歳ってホントになっちゃうんだよねぇ。
若いときに、50歳になるときが来るって話聞くじゃない。
「へー、いつかそういう日がくるんだろうなぁ」って
漠然としか思わないじゃない。
それで、50歳、60歳のことを
勝手にもっと老けさせて考えてなかった?
だけど、同じじゃん。
35歳と今のちがいってないでしょ?
矢沢: でも、逆にね、ちがうんだよ。
なんか妙に、今週……、今週って言い方おかしいな。
今回、いろんな取材を受けていくなかで、
なんか新たな気持ち? またちょっとちがうんだよ。
なにかちょっと抜けたんだよね。いい感じなんだよ。
もう50歳を堂々と受け入れちゃおうっていう
スタンバイができたみたい。

で、オッサンの道があるんだよ。
オッサンゆえに、またおもしろいことができるオッサン。
その幕開けをバーンとやろうと思えば、
できないことないな、と。
めっけもんの50代に入れるかなぁ、というスタンバイが
できちゃったんだね。
糸井: オレもその気分。
矢沢: だから今、気分いいんだよ。
あなた今50歳なの?
糸井: 去年なったんだよぉ。
矢沢: イトイ50歳に見えないよねぇ。
糸井: 気持ちいいよぉ、50歳が。
40歳もよかったけど。
矢沢: そうか。
いや、俺たちモテるよ。
糸井: オレはモテないねぇ。
矢沢: またぁ〜(笑)。
50代入ってね、バリバリケツ振るヤツはもっとモテるよ。
イトイ、俺たちモテるって。
もうなんでも来いよ、みたいな感じ?
女はそういう開き直ってる男が好きなんだもの。
糸井: 業界違いですから(笑)。
矢沢: そんなことないっスよぉ、
ライターもいいじゃないっスかぁ〜(笑)。
糸井: なんかもう、こんなことで励まされて寂しいなぁ(笑)。
矢沢: いいからイトイ、女遊びしに行こうよぉ〜。
警察問題がおきる一歩手前でやめるっていうの、どお?
やろうよぉ、カミさんに隠れて(笑)。
まあ、そういうことも元気にやろう!
イトイ飲まない? また今度。
糸井: いいよ。うん。
俺いちばん楽なのは、メールで連絡もらうことなのよ。
矢沢: オッケー!
糸井: 急に思いついたらメールくれればいいから。
矢沢: わかった、メール入れるよ。
糸井: エーちゃんさぁ、60歳になったらさぁ、
エーちゃん学校ってやらない? 私立の。
よくほら、野山の教室とかあるじゃないよ、
あれ、ダメよ。だってそこ無菌状態なんだもの。
今は都会がジャングルじゃん。
エーちゃん学校って発想どうよ?
矢沢: 60歳になったら?
……エーちゃん(笑)。
学校法人エーちゃん。
糸井: それ創ってエーちゃん自分で遊べばいいじゃん。
「ようこそ校長でーす、ヨロシク!」って。
矢沢: 教頭はだれ?
糸井: 俺、なんかやるよ(笑)。
矢沢: じゃ、教頭だ(笑)。
糸井: で、いろんなことやりたいヤツが集まる寮があって、
ちがう種類の人がいっしょに遊ぶのよ。
校長先生がたまに来て、ごきげんでさ、
給食食ってるのよ、どお?
矢沢: (笑)イトイだったらやりかねないね。
糸井: 俺ね、エーちゃんがほしい、その場合は。
矢沢: イトイ学校創ったらいいじゃん、マジに。
糸井: そうだね、どっちになってもいいよ、その気分。
で、ホントはいろんなこと大丈夫なんだよ、って
教えてあげたいんだよ。子供に。
矢沢: なんか、今日のイトイの話は、
ぜんぜんタッチがちがう、おもしろいよこれ。
糸井: 俺ら、前向きだからね。
矢沢: あと、9月15日の横浜は、
“ありがとうが爆発する夜”これにつきるよ。
なんかうれしいんだよ、今が。
で、50代に入れば2つに分かれるよね。
そのままただのオッサンになっていく道と、
オッサンならではの色気の道。
それだけのことよ。
そういう意味じゃ、うれしいことよ。
ありがとうが爆発する夜、だよ。
糸井: エーちゃんの「ありがとう」と、
お客さんからの「ありがとう」がバーンと、
花火みたいにさ。
矢沢: そっから行くんですよ、また。
50歳の色気ってあるのかなぁ?
っていうドアを俺は開けるのよ。
糸井: またなにか壊すんだろうね。
矢沢: それでいいのよ。
50代の色気はぜったいありますからね。
糸井: まだモテたい?
矢沢: モテたいね。
それは男女のモテたいじゃなくて、
やっぱりそれくらいの根性もって生きたいよね。
ひとつ大事なことじゃない、モテたいってのは。
結局、モテたいって感覚があるかないか、って
おーきなちがいよ。
それがあるから新しいドアを
ばかばか開けるってことだよ。
じゃ、イトイ、そういうことで。
ありがとうございました!
仕事ぬきで、また会おう!
(終わり)

ガバッとソファーから立ち上がると、
矢沢永吉はドアを開けてスイートルームから出ていった。
そういった立ち居ふるまいまでいちいちパワフル。
まるで、竜巻か雷雲が去ったような……。
しかし、どーでした、この対談。
10回の連載でしたけど。
えー、もう終わっちゃうのぉ〜? だよね。
でも、いいのさ、9月15日に会えるんだから。
“ありがとうが爆発する夜”まで、あと26日。

1999-08-19-THU

YAZAWA
戻る