ありがとうが爆発する夜
矢沢永吉バースデー記念
スペシャルイベントまでの日々。

TONIGHT THE NIGHT!
バースデー記念スペシャルイベント
“ありがとうが爆発する夜”まで、
あと日!


あと1週間ですねぇ。
全国ツアー、今日は神戸国際会館です。
宇都宮、郡山で公演したら、いよいよ横浜ですよ。
スタッフのみなさんもがんばってくださーい。

先日、日本テレビの24時間テレビに
darlingが出演したときのことです。
古くからの矢沢ファンである徳光アナウンサーに
ほぼ日読者のために矢沢さんについて語ってください、
とお願いしたところ、快くオッケーしてくださいました。
ほんとーに、ありがとうございます。
9月15日の“ありがとうが爆発する夜”には
もちろん徳光さんもいらっしゃるそうですよ。

インタビューの場所は、徳光さんの事務所。
忙しい仕事の合間に、時間をさいていただきました。
スーツ姿の徳光さんは、ソファーにゆったりと腰掛け、
おまんじゅうと、お茶でリラックスムード。
テレビのときとはちがって、語り口調は、
あぜ道をゆっくりゆっくり散歩するような感じでしたよ。
まずは、矢沢さんとの出会いから聞かせてください。
徳光さん、よろしくお願いします。




えー、矢沢さんとの出会いはキャロルの時代です。
番組に出てもらったことがあったんですね。
番組といっても毎日夕方やってる5分間くらいの番組で、
当時のテレビシーンとしては人が観ない時間帯で、
おもに新人の曲を紹介していた番組だったんですけど、
たった5分間の番組であるにもかかわらず、
キャロルが出てくれるってことになったんです。
曲は「ファンキーモンキーベイビー('73発売)」でした。

当時キャロルはだいぶ知れ渡ってましたし、
しかもあまりテレビに出るタイプの人たちでは
なかったんでしょうかね。その後もあまりテレビでは
拝見したことはないんですが……。
メンバーはリーゼントで、黒い服で、
スタジオ内も異様な雰囲気だったというか、
みんな腫れ物に触るような感じで
キャロルを迎えたんですよ。

で、キャロルが曲を歌い終わったときにですね、
わずか5分間の番組であるにもかかわらず、
「ありがとうございました、今後よろしくお願いします」
という彼らのひとことに、僕はですね、
「こんな心のこもった人たちはいないな」と
本当に心から思ったんです。

矢沢さんにしても、ほかのメンバーの方にしても、
すごく怖いイメージだったんですけど、
カメラの人にも頭を下げて、スタッフにもお礼を言ってて、
一介の若いアナウンサーだった私にもお礼を言ってくれた。
しかも、これは感覚的なことなんだけど、
「この人たちは心でお礼をしてくれているな」
ってのを感じたんですよね。

そういう出来事がけっこう心に残ったのと、
収録時の「ファンキーモンキーベイビー」の演奏が、
日本のロックをなんとか築こうとしているんだな、
という熱みたいなものを感じさせてくれたんですよねぇ。

腫れ物に触るようにおそるおそるね、
早く通り過ぎて行ってくれればいいな、
って感じで接していた人たちがね、極めて礼儀正しかった。
歌にも、歌い終わった後の挨拶にも心があるってことを、
いちばん感じさせてくれた歌い手さんですね。
その後いないですね、そういう人はね。

「歌は心で歌う」ってことを、
歌手の方はみなさん知ってらっしゃいますよ。
それで、やっぱりベテランになればなるほど、
テクニックで聴かせどころを補ってると思うんですよ。
永ちゃんはね、いまだにステージ観てましてもね、
永ちゃんは自分で言わないけども、心で歌ってますねぇ。
だから心にしみいるんですよねぇ。
僕がなぜ永ちゃんを好きかって言うとね、
永ちゃんと、長嶋さんだけなんですけどね、
好きな理由がないんですよ。説明できない。

たとえば、僕の場合スターへの憧れってのはね、
いちばん基礎は「歌がうまいから」とか、
「声がいいから」なんですよ。
その上は「なんかどこか感じるものがある」
というようなことなんですよ。

そのさらに上にいきますとですね“無条件”ですね。
どこがいいのか自分には説明できない。
矢沢さんと長嶋さんは、僕にとって無条件にいいんですよ。
だから、永ちゃんのコンサートに行くと、
なんていうのかなぁ……、
コンサートが終わったあとの満足感っていうのは、
うーん、どう表現したらいいのかなぁ……。
糸井さんならうまく表現できるんだろうなぁ……。

えー、たとえはよくないですけどね、
花火が打ち上げられますよね、ドカーンと上がって、
みんなが“たーまやー”“かーぎやー”って叫びますよね。
花火大会が終わったあとに、ふと足もとを見たら、
尺玉のでっかい殻が落ちてたりする。
その殻を拾ったときに、うんと得した気分になれる。
「これが今爆発した花火なんだ!」というね。

こういうね、少年のころに感じたような
不可思議な余韻がのこるっていうのが、
永ちゃんのコンサートだから……あの……、
家に帰れないんですね、そのままでは。
ちょっと矢沢になりたくなるんですよ、どんな人も(笑)。
永ちゃんになっちゃうんですよ。
会場の近くの街で飲んだりすると、
お客さんがみんな永ちゃんになってる。
しゃべり方も、注文のしかたも(笑)。
あの、女性はどうかわかりませんけどねぇ。

僕は女房と永ちゃんのコンサート行くんですけど、
カミさんは造詣が深くはないんですけど、
クラシックが好きなんですよ。
で、朝、ピアノの曲とかかけてるんですよ、家で。
朝はああいうのがふさわしいってことなんでしょうか?
ま、そういうカミさんなんですけど、あるとき、
永ちゃんのコンサートに強引に連れていったんですよ。
“とりこ”ですね。

でね、ちょっとクルマで遠出するときは
カミさが永ちゃんのCDをクルマに積んでます。
カミさんはひとりで出かけるときも聴いてるしね。
矢沢さんと、ビリー・ジョエルと、エルトン・ジョン、
カミさんにとっては、その3人が
無条件で心にしみる音楽みたいですよ。

とくに矢沢さんの場合は、CD聴きながら、
自分が行った武道館とか東京ドームであるとか、
現実に体験したシーンを思い浮かべるらしいんですよ。
矢沢永吉というアーティストと演出家によって、
コンサートでは僕たち観客もステージの演出のなかに
組み込まれてるように感じるんですよね。
2時間、3時間のコンサートでね。

こないだあるバンドのコンサートに行ったんですが、
その人たちも音楽性がすばらしいと思いました。
えー、理工科系のスタッフがつくりあげた
ステージなんでしょうかねぇ、
照明の使い方、PAの具合、レーザー光線の使い方、
すばらしいもので、感動させてくれた。

で、とってもいいなと思ったんだけど、
ふと考えると無条件じゃないんですね。
自分なりに分析して説明できてるわけですよ。
永ちゃんのは分析できない。

2時間なり3時間のステージで、
永ちゃんは常に爆発してるように思われますけど、
爆発してない瞬間があるわけですよ。
僕は特に矢沢さんのバラードが好きなんですけど、
……たまらなくいいですね。
「たまらなくいいですね」って表現は、
言葉で仕事をしてる私としましては、
きわめて稚拙な表現なんですけれども、
ほかに言葉を探せない(笑)。

あと、どんどん新しいファンが増えてるでしょう。
きっと口コミで伝わったり……。
それはね、こういう考えが当たってるかどうか
わかりませんけど、あえて僕が語ろうとすれば、
永ちゃんのコンサートって親子連れが多いんですよ。
それは、昔っから永ちゃん一途っていうファンが、
今は家庭をもち、奥さんと一緒になんとかして
チケットをとって、子供を連れてくるわけですよ。

で、おそらくその夫は若いころは、リーゼントにして
永ちゃんの格好してコンサートに行ってたと思うんですよ。
今でもたくさんいるわけですよね、
素肌に紫とか白のスーツ着て、
1日だけ矢沢永吉になるって人たちがね。
その人たちがですね、カミさんを誘って来る、
そうすると子供を矢沢永吉の格好にしてるんですよ(笑)。

そういう子供たちが、コンサートで
あれだけのエネルギーに触れるとですね、
年齢、男女、国籍をこえてボーダレスに……
矢沢さんのコンサートってボーダレスだなぁ。
ある一部の人だけのものじゃなくて、
世代も男女もボーダレスだし。

そういうのに触れていくうちに、
子供といえどもかえって感じやすいですから、
音楽というと矢沢永吉を聴きながら成長してきて、
そういう子供たちが1日だけ矢沢永吉になれる日を
つくってるのかな、なんて思いますよねぇ。
受け継がれていきますよねぇ。

永ちゃんが50歳になるのに錆びないってのはねぇ、
矢沢永吉という名刀をですね、矢沢永吉がいつでも
磨いてるんじゃないかなって気がしますね。
アイドル歌手とかがマイクを振り回したりして
カッコよくやりますよね。
あれは要するにそれ用のマイクなんですが、
永ちゃんはいまだに普通のマイクで
マイクターンでしたっけ、あれするわけでしょ。
カッコイイ! カッコイイ! って感じなんですよ。

(つづく)

1999-09-08-WED

YAZAWA
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